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SFプロトタイピングとは?〜基礎知識編〜

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「SFプロトタイピング」という言葉を最近見かけることは増えていませんか?
私はUXリサーチャーとして未来を考えることが多いため、以前から気になってました。
とはいうものの、実際の現業での使いどころがわからないためにやろうと思ったり学んだりはしていなかったのですが、経験者と知り合ったりクライアントが興味を持っていたことをきっかけに、自分でできる範囲で試したいと思うようになりました。
こうして「未来予測とは違うのか?」「どう現業に落とし込むか?」を理解して試す機会を持ち、そこで知った情報をまず「基礎知識編」でお伝えしようと思います。

目次
1.SFとは
2.SFプロトタイピングとは
3.なぜSFの力を借りるのか
4.未来予測とはどう違う?
5.アウトプットはどんなものか
6.SFプロトタイピングが向いているクライアントって?
7.SFプロトタイピングの始まり
8.世界的なSFプロトタイピングの盛り上がりの背景
9.SFの影響力

1.SFとは
SF(サイエンス・フィクション)とは、科学に基づいたフィクションの総称です。古くは月への旅行やロボット、最近では人工知能のシンギュラリティやコロナによるパンデミックなどがSFの小説や漫画・映画によって描かれています。
SFで描かれている世界が身近な出来事になることは皆さんも体験済みだと思いますが、SFはその時代の科学技術と社会背景から発想されたフィクションなので、その内容は十分に起こり得る未来だったとも言えると思います。

2.SFプロトタイピングとは
SF的発想をもとにナラティブ(物語)を描き、いろんな形のプロトタイプ(試作品)を作って企業のビジョンやミッションの策定、新規事業の創出などのアイデアに生かしたり議論をする手法です。
かかる期間は様々で、メソッドはこのやり方でやるという決まりはなく、必ずしもSF作品としてのクオリティを求められているわけではないというのが実践者の明かすポイントでした。もちろんSF作家と一緒に考えてもらうという方法がありますが、一番大事なのはクライアントを巻き込んで一緒に未来について考えてもらうということだそうです。そうでないと、「ふうーん、こんなの作ったんですね」と終わってしまいます。

3.なぜSFの力を借りるのか
テクノロジーの進化に社会・人々はとってどう反応し、その良さだけでなくどんな問題が生じ得るのかを、作家の才能で物語で描き出せるというところがSFの魅力です。一般人では考えられないような空想世界の発想と描写は作家の持つ能力であり、一般人である自分たちはそれを見たり読むことで未来への思考を駆け巡らせてゆけます。
未来の世界を描くだけでなく、そこにいる人の心や行動を描くという点では人間中心的だと言えます。

4.未来予測とはどう違う?
書籍や記事などを読む限り、SFプロトタイピングは「バックキャスティング」的な方法と言われています。
未来予測は対義の「フォアキャスティング」的な考えだという記述が見られました。未来予測のように「今考えられる将来の科学技術や社会状況予測からあり得そうな未来を想定してゆく」というやり方とは対をなすものらしいです。
なんとなく理解できたようなできないような・・・この違いは、実際に経験してみないと実感したいと思っています。

5.アウトプットはどんなものか
プロトタイプをどんな形にするのかは様々なようです。最終的には小説のようなストーリーにするだけではなく、ビジュアルイメージや漫画、コンセプトワードや、年表やビジネスプランなど、その時のクライアントのオーダーに応じたいろいろなアウトプットがあるようです。

6.SFプロトタイピングが向いているクライアントって?
SFプロトタイプングが向いているクライアントは、インテルのように新しい製品を作っている先進的な取り組みをやっていく企業です。SFプロトタイプングを手がけている人は「ググっても出てくるようなことを知りたいとは思っていない」と話していて、規定演技の未来や自分の理想を込めた未来像など面白くない、つまり、「誰も想像していない未来をうちは作っていく」そういう気概のある会社がプロに依頼してやることが多い印象です。

7.SFプロトタイピングの始まり
インテルには未来研究所があり、そこに属している未来学者のブライアン・デイビッド・ジョンソンさんが、2011年の著書『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』の中でこの概念を紹介しました。以降、似たようなフレームで行われる取り組みが広くSFプロトタイピングと呼ばれるようになっていったそうです。
SF的発想でいうと、日本では1970年の大阪万博では小松左京さんがビジョンの成立に、パビリオンにも多数のSF作家が関わられていたそうで、今の形になる以前からSFは未来を発想するソースとして使われてきたことがわかります。

8.世界的なSFプロトタイピングの盛り上がりの背景
世界的には中国の小説『三体』がオバマやマーク・ザッカーバーグといった著名人がこぞって絶賛したことを背景に、ビジネスや政治の世界へSF発想が利用できることに気づいていったということがあるそうです。
西海岸では「SFプロトタイピング」を専門とするコンサルティング会社も登場しており、日本でもWIREDが主催しているサイファイプロトタイピング研究所が発足したり、多くの実践者が活躍もされています。
今現在は書籍も多く販売され、非常に注目を集めていると言えます。

9.SFの影響力
SF作品に影響を受けてきたことを公言する著名人・創業者は世界中に非常に多いと言われています。
ハリウッドのSF映画やアメコミがイメージされそうですが、日本では手塚治虫作品やドラえもんなどの漫画やアニメが小さな頃から日常的に親しまれているSFです。つまり国籍や著名かどうかは関係なく、多くの人が小さな頃からSFの影響を受けているのだと言えるはずです。このような私たちが触れてきた小説・映画・漫画こそが、未来の物語を形にした「プロトタイプ」だったのかとも考えられます。

 

ここまでで、SFプロトタイピングの基礎的な紹介を終えます。
なんだか面倒そう、小難しそう、そもそもSF小説なんて書けないからできない・・という印象でしたが、「やってみないと何が難しいのかも分からない。失敗してもいいからまず勉強としてやってみよう」という考え方に切り替え、所属の部署メンバーでトライしてみようと動き出しています。
次は、ぜひ自分たちでやってみた実践編をご紹介してゆきたいと思います。

コラム執筆者
天野 一記(あまの かずき)
第1ビジネスユニットアカウントサービス第4ユニット所属
UXリサーチ、UXデザイン、アートディレクションを軸に日々手を動かしたり考えたりしています。