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【事例03】循環経済のイネイブラー、綿花細胞栽培で 地球を救うGalyに注目/サーキュラーエコノミーの実践的すすめ

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このコラムは、ケンブリッジ大学経営大学院の「循環経済プログラム」を修了した当社のシニアプロデューサーである数藤によるシリーズ企画です。企業がサーキュラーエコノミー(循環経済)を実践していくうえで、必要な知識やツール、参考になる事例を紹介していきます。

循環型経済を実施するには、プロダクト、ビジネスモデル、エコシステムの階層でイノベーションをもたらす必要があります。このシリーズでは、上位概念であるビジネスモデル層とエコシステム層に主眼を置き、有益な事例を紹介していきます。

今回は、イネイブラーの紹介です。

循環経済への取組みでもっとも大きな障害は、思い込み=バイアス なのかもしれません。
思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因は過去の経験や知識によって構成されています。一方、時代は大きく変化、最新のテクノロジーにより不可能だったものが可能になってきています。デジタルテクノロジーのみならず、バイオテクノロジー・ナノテクノロジーなどの分野でも日進月歩。
循環経済を検討する上でアイデアを具現化できるイネイブラーの存在は重要です。

 

概要

マサチューセッツ州ボストンのスタートアップ企業Galy社は、農薬、肥料、大量の水を使用する従来の綿花栽培とは異なり、(種子からではなく)細胞を綿繊維に直接増殖させることに成功。
このプロセスは大規模な農場で綿花を栽培するよりも10倍速く、綿花栽培に必要な水と土地の使用量を80%削減。また、ラボベースであるため、土壌や気象条件に依存せず、地球を枯渇させることなく、どこでも綿花を栽培できる技術を開発しました。

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サスティナビリティへの貢献

綿は産業革命と大きく関連があります。
英国植民地インドで栽培された綿花を英国に持ち帰り、紡績(繊維を糸の状態にすること)し、織物工業が発展していきます。この綿織物工業の発展が産業革命の始まりとされています。産業革命は、Take-Make-Wasteのリニア経済を生みます。 綿花(コットン)にはそんな過去があるのです。

コットンと聞くと、その原料が植物由来の製品であることから、環境に優しいイメージがあります。ところが、その原料である綿花の生産過程では、大きな環境負荷が生じています。

特に問題となっているのは、綿花の栽培に必要となる大量の水資源。綿花はインド、新疆ウイグル自治区や中央アジアなど、もともと水資源が乏しく貴重とされている国や地域で盛んに栽培されています。過剰な水の利用により、川や湖沼の水位が下がり、地域の野生生物や人の暮らしが、大きな被害を受けることになります。人がつくるさまざまな農産物の中で、こうした「水リスク」の高いエリアで作られる割合が最も高いのが、実はコットンなのです。

綿花が栽培される地域の多くでは、多量の農薬の使用や、児童労働、債務労働といった問題も発生。WWF独自データによれば、世界の耕作地面積の約2.5%を占めるに過ぎない綿花の栽培面積で、世界の殺虫剤の放出が16%されています。これは、他のどの単一作物よりも多く、殺虫剤による土壌汚染や健康への影響にも懸念されています。

そんな綿花を、種子からではなく細胞レベルで栽培。これにより、
・栽培速度が10倍速くすることの成功
・綿花栽培に必要な水と土地の使用量を80%削減
・ラボベースであるため、地理的環境、土壌環境、気象条件から分離
・従来の綿栽培が持つ多くの課題解決の道筋
地球を枯渇させることないサスティナビリティな方法です。

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循環型ビジネスモデル

地球規模レベルの循環モデルを考える上で重要なパーツとなる技術です。

このGlay社の技術をビジネスモデルで考えてみると
・海外輸入に頼らず地産地消できる
・多品種小ロットの栽培が可能=多品種のテキスタイル生産が可能
・栽培工場(栽培ビル)の自動化

綿花のグローバル規模のサプライチェーンを、極小化&効率化することができることになります。これに加えて、買取・下取り制度の導入などの静脈系ビジネスモデルを組み合わせるとより強固な循環サイクルが完成しますね。

参考文献:
https://galy.co/?p=fundamentals
https://hmfoundation.com/gca/winners/galy/
https://www.greenqueen.com.hk/galy-lab-grown-cotton-fashion-for-good-sustainability/
https://www.forbes.com/sites/jeffkart/2020/04/14/galy-grows-greener-cotton-in-a-lab-10-times-faster-than-the-farm-variety/?sh=28149e7228be
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4580.html

 

循環経済の実践的すすめ方:

循環経済を推進する上で、アイデア創造とイネイブラーの発見はとても重要な要素です。
せっかく生まれたアイデアを具現化できるイネイブラーは、従来のビジネスではまったく縁遠い業種業界だったりする場合も多いです。
自社にはない強みを持つこのようなイネイブラーを見つけ、提携することも循環経済を実現する上で極めて重要であり、かつ実現までのスピードに差がでますね。
他にも・・・海藻から繊維を開発したり、キノコの根の構造から材料を作成したり、廃棄されていた魚皮の有効利用など注目すべき技術を持つベンチャー企業は数多くあります。昨年までできなかったことが今年はできるようになっている・・・そんな時代です。

 

これまでの“サーキュラーエコノミーの実践的すすめ”シリーズは、こちらよりご覧ください。

 


 

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コラム執筆

デジタルトレンドラボロゴマーク数藤 雅紀

数藤 雅紀(すとうまさのり)

シニアプロデューサー兼戦略プランナー、デジタルトレンドラボ所長
循環経済戦略プランナー(英国ケンブリッジ大学の経営大学院 Circular Economy & Sustainability Strategies修了)

 

 

大手證券、グローバルIT調査会社を経てメンバーズ入社。新規事業、国策案件、未踏案件など先例の少ない難易度の高い案件にこそ魂を燃やすタイプ。ケンブリッジ大学経営大学院循環経済プログラム修了し全力投球中。阿波踊りとフルマラソンを愛する左利きB型。

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