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気候変動対策は開示しないと伝わらない!脱炭素時代の発信とは?

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近年、企業による気候変動対策は生活者、社会、そして投資家からの要請を受けて加速しています。経営課題の中でも優先度が高い気候変動対策について、目標や取り組みの進捗を自社内に留めるのではなく、情報開示を行うことが求められています。

このような世界的な潮流を踏まえて、本コラムでは日本国内の脱炭素の動きと、日本企業の情報開示の変化についてまとめました。

日本国内で増加する気候変動対策の要請

2020年10月の演説で菅首相が2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出量ゼロ)実現を宣言しました。これを受けて、経団連からもカーボンニュートラルを前提とする、「。新成長戦略」の提言が公表されるなど、経済面から見ても温室効果ガス排出量の削減が求められていることがわかります。

また、2021年4月には金融庁からコーポレート・ガバナンスコード改訂に向けた提言書(※1)が公開されました。この提言書では、投資家側からの評価の際に企業による気候変動対策についての情報開示を求めると書かれています。具体的には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)(※2)か、それと同等のリスク・現状分析や具体的な目標設定をオープンにすることが期待されています。

つまり、気候変動問題を認識するだけではなく、さまざまなリスクの分析から自社が置かれている状況を把握し、温室効果ガス排出量削減に対しての数値的な目標を設定する必要があります。

日本企業の情報開示の変化

環境省が公開する資料(※3)によると、日本企業は世界各国の中でもかなり積極的に情報開示を行っていることがわかります。

TCFD、SBT、RE100に取り組んでいる企業(2021年5月17日時点)

画像:環境省「企業の脱炭素経営への取り組み状況」より抜粋

TCFDだけでなく、より広範囲に温室効果ガスの削減目標の設定を行うSBT(Science Based Targets)(※4)、使用するエネルギーを100%再生可能由来とすることを目指すRE100に関しても、他国に比べても多くの日本企業が採用しています。

では、情報開示に対する日本企業の取り組みはどのように変化しているのでしょうか?
今回は、株価時価総額上位50位の企業をもとに、気候変動対策に関する情報開示の変化を可視化しました。(対象年:2018~2021年 計測日:4月末 JPX 統計情報 ※5)

まず、TCFDが求める情報開示を行い、賛同する企業については、2019年から2020年の間で大きく社数が増え、増加が続いています。

TCFDへの賛同社数 増加

また、SBTを採用している企業は2020年から2021年で4倍に増加しました。

※SBT認定受領企業、コミットメントを宣言している企業、どちらも含む

企業が情報開示に使用する媒体としては、投資家向けの統合報告書、サステナビリティレポートが一般的です。一方で、ウェブサイトも、企業の情報開示には欠かせない媒体となっています。TCFDへの賛同やSBTの認定を受けていない企業でも、自社の現状を分析し、具体的な削減目標をウェブサイト上に掲載しています。

今回調査対象とした50社についてもほとんどの企業はウェブサイト上での情報発信を行っていました。気候変動対策や環境保全活動に触れるだけでなく、温室効果ガスの削減目標や進捗共有など、詳細を掲載する企業は50社中39社に昇りました。

ウェブサイト上への情報掲載状況

開示の対象は投資家だけでなく、幅広いステークホルダーへ

さらに、先進的な企業では、投資家に限らず、幅広いステークホルダーに自社の取り組みを知ってもらうためのコンテンツを発信しています。さまざまなメディアを通して生活者や従業員が気候変動と自然災害の関連性に触れる機会は増えており、投資家に限らずあらゆるステークホルダーの危機意識が強くなっています

これらの意識に対して、どのような姿勢で気候変動に取り組むのかをわかりやすく発信することで、生活者や従業員を含めたステークホルダーからの信頼を企業は勝ち取ることができます。

このような発信を成功させている代表的な例はAppleです。

Appleは2021年4月に公式サイトの「環境」に関するページを大規模にリニューアルしました。環境配慮やリサイクルという訴求ではなく、気候変動に対する具体的な対策として、2030年という具体的な年までにカーボンニュートラル(※6)を達成すると記載しています。カーボンニュートラル達成に必要な取り組みを細分化して、それぞれの内容やなぜAppleが取り組むのかという理由をはっきりと伝えています。

apple 環境コンテンツの変化

画像:Apple 環境(2021年4月22日 左:リニューアル前 右:リニューアル後)

日本企業に目を向けると、ホンダでは取り組みを紹介するだけでなく、循環型社会の構築という目標を掲げ、環境や気候変動問題に取り組む方針を発信しています。また、ウェブページならではのインタラクションを活用して、ホンダがなぜ気候変動を含む環境問題に取り組むのか、その意義を伝えるコンテンツが特徴的です。

ホンダ_環境ページ

画像:ホンダ 環境への取り組みより作成

このように、自社がどのような意志を持って気候変動対策に取り組むのかを発信することは、企業のリスクや対応を見る投資家だけでなく、従業員や顧客といったステークホルダーに対するブランディングにも繋がると考えられます。

 
※1 出典:スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第24回) 提言書

※2 出典:気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)概要
※3 出典:
Science Based Targets パンフレット

※4 出典:環境省 企業の脱炭素経営への取り組み状況(2021年5月10日時点)

※5 出典:日本取引所グループ 統計情報 株式時価総額 時価額順位表

※6:カーボンニュートラルは、二酸化炭素排出量と吸収量が同じ量であることを示す概念

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コラム執筆

國村 友貴子(くにむら ゆきこ)

2020年4月入社。CSRコンサルティング会社での業務を経験し、入社後はCSVマーケティングの推進、ワークショップ設計・運用を担当。地球温暖化問題、気候変動に危機感を持ち、社内外で積極的に活動を行う。

カテゴリ: CSV
2021年05月27日