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DX視点で読み解く:米国NY州金融サービス局公表、金融機関へ気候変動問題取組みを促す画期的な政策

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気候変動に否定的であった前政策から真逆の政策へと舵をきったバイデン大統領。この政策転換を受け、気候変動への取り組みを重視する政策を米国の関連機関は次々と公表しています。

ニューヨーク州金融サービス財務局(DFS)では、気候回復力に関する融資活動をおこなう金融機関には加点評価することを示すガイダンスを公表しました。

これは、とても興味深く注目に値する施策です。
日本の金融監督当局、(特に地方の)金融機関および地方活性化を願う組織・団体にとっても大きなヒントとなる政策といえます。本コラムでは、その内容を吟味し、日本への転用の可能性をDXプランナーの視点で解説してみます。

 

目次:
●概要:米国NY州金融サービス局公表、金融機関へ気候変動問題取組みを促す画期的な政策
●気候問題解決に向けた資金調達の一例
●本政策のポイント
●日本の事情に置き換えて考えてみる
●日本の金融機関に望むもの
●DX時代の2030年から考える

 

●概要:米国NY州金融サービス局公表、金融機関へ気候変動問題取組みを促す画期的な政策

気候変動の影響を免れる人は誰もいません。しかしその影響は不平等で、低所得世帯において過荷重な悪影響を及ぼし、結果として社会的不平等を恒常化する要因になりえます。

LMIコミュニティ(低所得世帯が数多く住む地域)は、世帯収入の割合として、ガス、電気、および暖房用燃料により多くを費やす傾向が強くなります。全米州議会議員会議の報告によると、低所得世帯の住宅が平均的な米国の住宅と同等にエネルギー効率が高くなれば、支払うエネルギーコストは3分の1に減少します。しかし、多くの低所得世帯は、高効率への切り替えに必要な資金が足らないのです。

さらに、LMIコミュニティは、洪水や熱波の影響を受けやすい地域に住むことが多く、気候変動によって悪影響が出やすい場所だといえます。さらに、LMIコミュニティはマイノリティ人口の割合が高い傾向があり、環境問題と社会問題の両方の側面を持っているといえます。

このため、ニューヨーク州金融サービス財務局(NYDFS)は、ニューヨーク地域社会再投資法(「ニューヨークCRA」)の対象となる銀行機関に、LMIコミュニティにおいて、温室効果ガスを削減する金融取引やレジリエンスをサポートする金融取引をおこなう金融機関に対して加点評価することを発表しました。Goldman Sachs, BNY Mellonなど全米を代表する金融機関がその対象となります。

 

●気候問題解決に向けた資金調達の一例

金融機関は、まず自らの支店の場所や営業地域の中から評価対象とする地域を選出します。その地域に対して、下記のような個人・中小企業向けローンを優遇します。

・LMIテナントまたはコミュニティ施設の光熱費を削減するための手頃な価格の住宅のための再生可能エネルギー、エネルギー効率、および節水装置またはプロジェクト。例としては、ソーラーパネル、地中熱ヒートポンプ、バッテリーストレージの設置、建物の外皮断熱材の改善、照明、窓、電化製品のアップグレードなど。

・手頃な価格の住宅プロジェクトまたはコミュニティ開発の目的を持つコミュニティ施設にエネルギーを提供するコミュニティソーラープロジェクト。

・洪水および/または風のリスクが高いLMI地域でのマイクログリッドまたはバッテリー貯蔵プロジェクト。これにより、洪水および強風による電力損失のリスクが軽減されます。

・洪水や下水道の問題に対処するプロジェクト、または主にLMI地域に利益をもたらす、新規または修復された下水道、堤防、雨水管などの雨水流出を削減するプロジェクト。

・建物の高さや移転、排水ポンプの設置など、手頃な価格の住宅を提供する集合住宅の洪水回復力活動。

・LMI居住者の熱リスクと光熱費を削減するための手頃な価格の住宅を提供する集合住宅への空調設備の設置。

上記のリストは、ほんの一例ですべてを網羅しているものではありません。気候回復力を促進する活動のための革新的な投資であれば、評価の対象となるようです。

 

●本政策のポイント

この政策の素晴らしい点は、政府/監督当局・金融機関・地域コミュニティ・地域住民などのすべての関係者がメリットを享受できる政策であるということです。

1、気候変動問題は万人共通。しかし低所得世帯は、気候変動弱者で改善に向けた資金不足であること
2、低所得世帯に着目しエネルギー効率を高めることは、気候変動を削減する取り組みから得られる便益が大きいこと
3、マイノリティ差別や人権問題にもつながる社会的問題への改善につながること
4、金融機関にとっても新たな収益チャンス・社会的高評価につながること
5、地域コミュニティにとっても住環境の保安保全環境の改善、地域の活性化につながること

 

●日本の事情に置き換えて考えてみる

日本においても、国や地方自治体からの(例えばソーラーパネルなど)気候回復力支援の政府補助金制度がすでに存在します。同様に気候回復力支援の融資優遇を打ち出している金融機関もあります。ただそれらの施策は個々の”点”の側面が強いといえます。

気候変動の取り組みは、短期的で終わるものではなく中長期的。金融機関が前向きに、息の長い取り組みに挑めるようなインセンティブを与えているこの施策は注目できます。NYDFSが発表したような”面:仕組み”を促す着眼点で日本も取り組んでほしいところです。

ではこの例を日本に置き換えて考えてみます。

日本のそれも地方が抱える問題は、高齢化や人口減。
高齢者が住む住宅や設備も劣化が進み、エネルギー効率が芳しくない状態。
上下水道インフラの劣化問題や、洪水・台風などへの治水対策にも資金不足な状態といえます。
これは、LMIコミュニティが抱えている問題と全く同じといえます。

地方の金融機関は、その多くが低金利・低預貸率で経営難に陥っています。
実績評価主義という古き融資基準に縛られ、融資リスク&リターンが算定できないESGファイナンスに及び腰な状態です。これは、NYFDS監督対象の金融機関も全く同じ。

根本的な状況は、ニューヨーク州も日本も全く同じなのです。
そう考えると、日本の金融当局の英断が望まれますね。
財務省、金融庁、日銀、日本証券取引所グループあたりがNYFDSに習って、日本オリジナルな政策を発表してほしいものです。

特に金融庁。バブル崩壊後の銀行不良債権問題を監督していた時代は金融監督庁という名称でした。これからは、銀行の環境問題への取り組みを監督するという”ポジティブ”な視点で、金融”監督”庁への再転換が必要なのかもしれません。 おっと戯れがすぎました。

 

●日本の金融機関に望むもの

仮に日本の金融当局が同様の政策を発表したとして、果たして金融機関は率先して動くのでしょうか。気候変動やCSVなどの取り組みでは、不確実性が高く、金融機関が及び腰になるのは世界共通です。
そんな社会的課題への取り組みを潤滑にすべく、ブレンドファイナンス(Blended Finance)という手法で解決する動きが世界的には注目されています。
ブレンドファイナンスは、字義通りには、ブレンドされた、つまり混ぜ合わされた金融、性質の異なる資金が組み合わされた金融という意味。公的、民間(≒金融機関)、慈善機関(含む個人)からの資金をブレンドしプロジェクトへ資金投下することを意味します。それぞれの想いを異にする組織が協力することでリスクを分散することができるメリットがあります。

例えば、タイ北部でのソーラーファーム建設。ここでも当初、民間金融機関は不確実性が高いとして資金提供に乗り気ではありませんでした。しかし、途上国の民間セクター支援を行う国際金融公社(IFC)が800万ドル、気候投資ファンド(CTF)が400万ドルを融資すると、3つの地元の銀行を含む民間金融機関からの融資が追従し追加で8億ドルの投資となりました。

ブレンドファイナンスを拡大するために投資家とプロジェクトを結びつけるプラットフォームとして、150以上のブレンド取引をデータベース化している”Convergence”などがあります。

地元の地域活性を目的とし、地方銀行みずからがブレンドファイナンスの組成の旗振り役になるのは難しいものなのでしょうか? 政府や国連に対して働きかけることや、クラウドファイナンス・クラウドレンディングを用いて地元企業や個人への融投資を促すなどの活動を期待するのは無理なのでしょうか?

地方金融機関は地元であること武器に、①当該事業者のクレジット情報を共有する、②ファイナンス後の管理監督とその進捗状況を他のステークホルダーに情報共有するなど、ブレンドファイナンスのハブ役を期待するのは酷なのでしょうか?

地方金融機関だからこそできることは数多くあると思えるのです。

日本を含む世界は金融緩和、量的緩和が進みキャッシュが溢れています。
溢れたキャッシュはその投資先を探しています。

そして気候変動への取り組みは世界共通のテーマ。欧米に並ぶ気候変動のリーダー国になるために、2021年4月22日に菅総理大臣が新たな気候変動対策目標を公表し、日本は2030年時点で2013年度比46%の温室効果ガス削減を目指すこととなりました。国は号砲を放ち、大企業は疾走し始めています。目先の期限はわずか8年後の2030年。

日本各地に数多くの地方金融機関があり、地元に張り巡らせた情報アンテナを活かし、どのような提案をするか・・・次の動きに注目です。

 

●DX時代の2030年から考える

いまはデジタル革命の真っ只中。
フィンテック、ブロックチェーン、人工知能/機械学習、量子コンピューター、ロボティックス、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、材料科学、3Dプリンティング、拡張現実・仮想現実などの新しい技術が生まれ花開こうとしています。

個々の技術も注目に値するのですが、それ以上に注目すべきなのはそれが融合しつつあるという事実。新しい技術を使ってさらに高速な新しい技術を開発する。 それによって正のフィードバックループが生まれ加速のペースが一段と加速していきます。これを収穫加速の法則というそうです。

いくつもの波が重なり合い積み重なり巨大なうねりに成長し、いままでの技術や社会をなぎ倒して進ん突き進んでいるイメージ。

製薬開発のスピードが、人工知能/機械学習で加速し、来る量子コンピューターがさらに加速を促すことをイメージするとわかりやすいでしょう。

デジタル革命(DX)は、新たな市場を生み出し既存の市場を消滅させる破壊的イノベーションの可能性を秘めています。

シリコンチップが真空管をあっというまに駆逐したように。
Amazon が軽々と小売業界のトップに躍り出たように。

個別の技術の進歩について行くのさえ難しいのに、それが掛け算として押し寄せてくるのがこの2030年に向けたDX時代。

地方だから・・・  DXに地方とか都会とかは全く関係ありません。
予算がないから・・・ ブレンドファイナンスの組成でどうでしょう
知見がないから・・・ 知見がないのは皆同じ。やらずに知見は増えません
人材が乏しいから・・・DXに明るい人材は提供できます。

そしてなによりも、あなたの意思が重要。

できない理由とやらない理由を探すよりも、できる手段を一緒に考えてみませんか。

2030年まで、わずか8年。待ったなしです。


 

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数藤 雅紀

数藤 雅紀(すとうまさのり)

シニアプロデューサー兼戦略プランナー、デジタルトレンドラボ所長

大手證券、世界大手調査会社を経てメンバーズ入社。戦略プランナーとして、上場企業・グローバル外資企業などの大手企業のデジタル戦略・施策を支援。ネット選挙や新規事業系支援などの先鋭的案件も得意。阿波踊りとフルマラソンを愛する左利きB型。