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サーキュラーエコノミーを考える【ファッション業界編】

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ファッション業界の功罪

ファッション業界では、地球温暖化の要因となるCO2が2018年時点で21億t排出されいると言われており、これは世界全体の排出量の4%を占めています。ファッション業界が今後何も対策講じない場合、予測される生産量の増加により毎年2%ずつCO2排出量が増加すると見立てると2030年には排出量は27.4億tにまでのぼると言われています。

出典:McKinsey & Company Fashion on Climate

 

パリ協定での1.5℃目標を達成するためには、2030年までに現在の年間排出量の約半分である11億tまで削減する必要がありますが、そのためには従来のファストファッションと呼ばれるような大量生産・大量消費のモノづくりのあり方を見直し、既存の脱炭素の取り組みを拡大していく必要があります。

この問題の重要性を認知し、ファッション業界全体でも気候危機への取り組みが行われています。国連気候変動枠組条約(UNFCC)事務局が推進する「ファッション業界気候行動憲章」や環境効率の高いビジネスモデルを確立する取り組みである「ファッション協定」など、主要ファッション企業が加盟している動きがあります。

 

企業はどのように対応すべきか

サーキュラー・エコノミーへの移行

大量生産・大量消費といったモノづくりから持続可能なモノづくりへと移行していく上での重要な概念が「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」です。従来型の資源を採掘して、生産して、捨てるというリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる仕組みのことを指します。

出典:オランダ政府:From a linear to a circular economy

 

サーキュラー・エコノミーと言っても抽象的な概念であるため、どのようにその考え方を適用してビジネスの実用レベルに落とし込めるのかというと中々イメージがしづらいかなと思います。コンサルティング大手のアクセンチュアによれば、サーキュラー・エコノミーを自社に適用して効果をあげるビジネスモデルとして以下の5つの類型があると言います。

類型①再生型サプライ

繰り返し再生し続ける100%再生/リサイクルが可能な、あるいは生物分解が可能な原材料を用いる。

類型②回収とリサイクル

これまで廃棄物と見なされてきたあらゆるものを、他の用途に活用することを前提とした生産/消費システムを構築する。

類型③製品寿命の延長

製品を回収し保守と改良することで、寿命を延長し新たな価値を付与する。

類型④シェアリング・プラットフォーム

使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、より効率的な製品/サービスの利用を可能にする。

類型⑤サービスとしての製品(Product as a Service)

製品/サービスを利用した分だけ支払うモデル。 どれだけの量を販売するかよりも、顧客への製品/サービスの提供がもたらす成果を重視する。

           

出典:アクセンチュア 無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する

 

持続可能なビジネスモデルを体現する企業事例

ここからは更に具体的にテクノロジー/デジタルを効果的に活用し、サーキュラー・エコノミーを上記の5つの類型で実践している企業事例をピックアップしてご紹介いたします。

類型①再生型サプライに関する事例:Piñatex(ピニャテックス)

「Piñatex」はパイナップル農家から出る副産物であるパイナップルの葉の繊維から作られる革新的な天然素材です。環境負荷が低く、革の代替素材としてH&Mやヒューゴ・ボスなどの企業とコラボレーションして製品を開発しています。

出典:Piñatex

類型②回収とリサイクルに関する事例:BRING

BRINGで製品を購入すると、商品とともにリサイクルに出すための封筒が到着し、服が不要になった時点で封筒に入れポストに投函すれば、同社のリサイクル工場へ送られます。服の素材をリサイクル原料として、新たな製品作りに活用される仕組みを構築しています。

出典:BRING

類型③製品寿命の延長に関する事例:パタゴニア WORN WEAR

衣類の修正を専門とするiFixit.comとパタゴニアを提携して提供しているサービスです。パタゴニア製品に関するお手入れ方法・修理方法のガイドが提供されており、修理を依頼したい場合は、修理サービスが利用することができます。

出典:パタゴニア WORN WEAR

類型④シェアリング / 類型⑤サービスとしての製品に関する事例:STICH FIX

月額の洋服レンタルサービス。最初にいくつかの質問に答えるとAIが最適な洋服をピックアップしてくれる。好きなアイテムが見つかればそのままキープすることで購入したとみなされる。購入するものがなければ定額スタイリング費のみが請求される仕組み。

出典:STICH FIX

類型⑤その他:EON サーキュラーID(CircularID)

アメリカのスタートアップ企業イオンが開発した衣服にマイクロチップを織り込んで追跡を可能にするサービスです。「サーキュラーID」をスキャナーで読み込むと、ブランド名、素材、原産地、価格といった服の基礎情報と、購入後の移動歴などの情報を確認することができ、ライフサイクル全体を通したトレーサビリティーを可能にします。ブランドがすでに商品管理のために活用するRFIDやバーコードなどに入力されている商品情報を「サーキュラーID」と連携させると、同社が提供するオンライン上のプラットフォームでその情報を確認することができ、ブランドは消費者とより継続的な関係性を構築することが可能です。
例えば、商品を購入したお客さまがどれくらいの期間その服を着用し、着用後にどのように処理をしたかなど顧客の行動データを蓄積し、時期に合わせて別の商品を組み合わせたスタイリングの提案や『着用しなくなったアイテムはここで回収しています』といったリサイクルキャンペーンを実施し、リサイクルに協力してくれたお客さまにクーポンを配布するなど活用が可能となります。

出典:EON Circular ID

 

他業界の可能性

今回は、サーキュラー・エコノミーを通じたファッション業界の動向・事例についてまとめてみましたがこれはファッション業界に限定した話ではありません。
サーキュラー・エコノミーへの移行を推進するエレン・マッカーサー財団によると、サーキュラー・エコノミーの機会は、世界経済のほぼすべての業界に存在しており、その中でも次の10業界は特に高い可能性を秘めているとのことです。

出典:Ellen MacArthur Foundation:Financing the circular economy

最後に

今後サステナビリティや脱炭素といったトレンドの中で、既存の製品・サービスの在り方がディスラプトされていく流れが加速していく中で、デジタルをどのように活用するのか(いわゆるデジタル・トランスフォーメーションしていくのか)が企業にとっては重要ですね。一方、一般消費者の視点からするとこうした商品・サービスの変化に対して、持続可能な購買選択が本当にできているかが重要ですね。あなたの自身のファッションの購買行動はいかがでしょうか?
可能な限り環境的な利益に繋がるような消費行動を日頃から心がけていきたいですね。

 

コラム執筆

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デジタルトレンドラボ

社内の有志が集まり、デジタル業界のトレンド調査を行い、社内外に情報発信しています。
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瀬崎 正太郎(せざき しょうたろう)

2014年4月メンバーズに入社。メンバーズのEMC事業にて大手カード会社・大手金融機関のプロデューサーを担当し、現在はEMC推進室事業企画グループ所属。企業のデジタルマーケティングの運営支援を総合的に行い、ビジネス成果向上を目的とした専任チーム提供するエンゲージメント・マーケティングセンター(EMC)の事業企画を推進しています。