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【セミナーレポート】「資本主義の非物質化」、「製品サービスのデジタル化(DX)」と脱炭素化(質疑応答編)

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メンバーズでは脱炭素社会の実現に向けて、お客さま企業向けの勉強会を開催しています。
2020年12月上旬の勉強会に引き続き、京都大学大学院 教授 諸富 徹氏をお迎えし、勉強会を開催いたしました。今回の勉強会では、DXと脱炭素化の繋がりについてお話いただきました。本編・講演パートでは、講演内容のまとめをお届けしました。本コラム質疑応答編では参加者のみなさまから当日寄せられた質問への回答をご紹介します。

■当日のご講演資料とアーカイブ動画は本コラムの最後でご案内しております。

勉強会の参加者からの質問
1.企業活動・経営に関する質問
2.日本社会・日本の政策に関する質問
3.他国に関する質問
4.講演内容に関する質問
5.その他

 

1.企業活動・経営に関する質問

Q.2050年までにCO2排出量実質ゼロを達成するため、企業はいつまでにビジネスモデルの転換が必要ですか。
A.直ちに転換が必要だと思います。新しいビジネスモデルを確立するには時間がかかるので、着手は早ければ早いほどよいと思います。

Q.日本企業がDX自体を目的化してしまう状況を脱するには、どうすればいいとお考えですか。
A.企業がDXを通じてどのように社会の役に立ちたいのか、また顧客に対してどのような満足を提供したいのかなど、広い意味での社会貢献を意識することが大切だと思います。製品・サービスで利益を得るだけでなく、製品・サービスが浸透した結果、社会がどのように良くなるのかまで考え、DXを取り入れる必要があります。

Q.日本の経営者の考え方を変えるために、得策はありますか?政府指導、税制変更による後押し?、補助金などは効果ありますか?
A.経営者の考えに影響を与える策として3つ考えています。
①投資家の変化。②国の方向転換。③国際環境の変化。
「①投資家の変化」については、経営者は投資家の動きを把握するので、変化があると経営者にも影響を与えると思います。既に環境に配慮したビジネスを行う企業に投資するESG投資は増加しています。
「②国の方向転換」については、菅首相がカーボンニュートラルの宣言をしたように、国がはっきりと方向を示すことで、経営者に影響を与え、企業方針を検討するきっかけになると思います。
「③国際環境の変化」については、現在のように多くの国が脱炭素化にむけて取り組みを始めることで、経営者は企業も脱炭素化に進む必要性を感じ、意識変化が起こると思います。

 

2.日本社会・日本の政策に関する質問

Q.日本の転換が遅いのはどこに課題があると思いますか?国?企業?投資家・株主?
A.私もずっと考えていますが、転換が遅い原因がどこにあるのかはっきりと見つかっていません。しかし日本は今後転換を早めるため、意思決定が早くできる仕組みを作り、対応していく必要があります。韓国は産業構造の転換が早いと見ていますが、その理由は企業のオーナーが力を持っているため意思決定がスムーズだからだと思います。現状では、日本でも株主や社外取締役の力が強い企業もありますが、彼らに力を集中させたとしても、上手くいってはいません。また、経団連の影響や、取引企業の関係により意思決定がスムーズに進まない企業もあります。

Q.環境税導入、カーボンプライシングのスケジュール感はどのように考えられていますか?
A.カーボンプライシング導入の検討は2021年中で集中的に行われ、最速なら2022年に可決されると思います。しかし今までの多くの抵抗意見があったことを考えると、すぐ導入するのは難しいと思います。日本は前回のCOP(気候変動枠組条約締約国会議)で非難を受けたため、次のCOPまでにカーボンプライシング導入についての方向性を示すことができるように検討されると思います。

Q.CO2排出量をゼロにするために欧州を中心に施策が進められて効果も出ています。しかし、CO2排出量をゼロにする製品の開発に苦しめられ、不正に排出量を低く記載した報告書を提出してしまう企業もあると聞いたことがあります。開発と目標のバランスを調整しながら、徐々にステップを踏んでCO2を削減していくことが大事になってくると思いますが、日本のそうしたサスティナブルな製品開発の現状は世界的に見て劣っているのでしょうか?また、2050年の目標達成への動きと比例して、今後サスティナブル製品の需要は上がっていく傾向にあるのでしょうか?
A.日本の製品開発は劣っていないと思います。シーメンスで第4次産業革命を指揮し、最近東芝に移ってきた方は、日本の技術や従業員の質を高く評価しています。しかし高い技術を脱炭素化に向けて統合し、ビジネスとして打ち出すことができていないとコメントしています。日本企業の強みとしては、正確に仕事を行い信頼できるものを作り出すことにあります。一方、弱みは環境変化への迅速な対応や意思決定を早く進める推進力の欠如にあります。そのため日本は時間はかかるかもしれませんが、脱炭素化に向けた製品サービスを生み出すことは可能だと思います。

需要が増加するかについては悩ましいです。需要は国際ルールや影響力の高い企業の取り組みによって増加することはあると思います。例えば開発された当初の再エネのように、最先端技術の需要が高いわけではありません。再エネは元々コストが高く望まれない電気でしたが、今は先を争って導入されています。これは政策的誘導が起き、脱炭素製品を採用することがお得であるという仕組みが作られたからだと思います。またAppleがサプライチェーンに再エネ利用を求める取り組みを始めたことなども現在の再エネ需要に繋がっています。

Q.日本政府は、ビジネス構造を転換させるために何か施策を行っているのでしょうか?スウェーデンは国が積極的に経済に関与していたと思います。
A.かつて日本は産業と政府が一体となって「日本株式会社だ」といわれる程でしたが、いまやすっかり産業政策の視点が弱くなっていると思います。特に新しい産業を生み出し、育成する力が弱いです。企業経営のあり方、つまりガバナンスを変える取り組みは行われていますが、スウェーデンに比べると様々な取り組みが甘く、既得権益に絡めとられてむしろ斜陽産業の救済に多くの資源をとられてしまっています。現状では、構造転換はなかなかできないでしょう。

Q.原発やリニア新幹線など、時代遅れの技術に今も投資し続ける国の政策にも問題があるのでしょうか。
A.まったくその通りです。

Q.昨今、経団連がSociety5.0をキーワードに推進しています。諸富教授の視点で、着目する点があればぜひ紹介ねがいます。
A.経団連のSociety5.0は、誰もが反対できないという意味でいいことを言っているのですが、総花的で、変革の契機が見出せないビジョンではないかと思っています。もう少し鋭角に打ち出さなければ、経営上の指針とはなりえないのではないかと個人的には思っております。

Q.経済成長はしたほうがいいという前提でしょうか?直ちに温室効果ガス排出量を減らし気候変動を回避するには、「経済成長をスローダウン・スケールダウンさせていくことが重要だ」という主張に対してはどのように感じられますか?
A.私は、経済成長をするのが望ましいと考えています。成長をスローダウンすると、たしかに資源の利用は減り、温室効果ガスの増加ペースも緩むでしょう。でも経済の縮小は、人々をさらに貧困化させ、格差拡大を助長するのではないでしょうか。政府に税収が入らなくなり、社会保障財源が枯渇します。脱炭素が実現できる水準まで経済を縮小すると雇用が縮小し、経済システムが人々の生存を保障できなくなると思います。さらに、投資は行われなくなり、さらなる省エネや技術革新は止まってしまって、脱炭素技術に向けた研究開発も停滞し、かえって脱炭素化は遠のくのではないでしょうか。「脱成長論」には、これらの疑問に答えていただきたいな・・・と思っております。

Q.脱炭素、DXとESG投資との関連はどうお考えでしょうか?
A.ESG投資は、脱炭素化とDXの強力な駆動力だと思います。

 

3.他国に関する質問

Q.資料中の各国のデカップリングは確かだと思いますが、全世界のGDP(経済成長)と炭素排出のデカップリングは進んでいるのでしょうか?炭素排出量が大きい中国やインドではデカップリングが進んでいないという記事があったため。
A.先進国から産業構造の転換が進み、デカップリングが起きています。途上国でいきなり産業構造の転換が起きるのは難しいと思います。しかし、デジタル化は途上国でも急速に進んでいます。全世界的にデジタル革命は進み、産業構造の転換は大小違いはありますが、今後起こると思います。デジタル化が進む中でも、どこかではものづくりは必要になります。そのため先進国から順番に、最適な産業の形を作り出す必要があります。例えば鉄を作るにしてもCO2を生み出さない製法を考えるべきです。実際に技術としては既に水素還元法がありますが、お金がかかる方法となっています。そのため技術に関しても全世界同時に取り入れていくことは難しいですが、徐々に世界に広がると思います。

Q.ドイツは製造業も強いとお聞きしましたが、それは現状の産業構造でDXや脱炭素を達成する道があるということですか。
A.ドイツの製造業は、現状の延長線上で脱炭素を描いているわけではありません。むしろ、脱炭素化を現状の産業構造を変革するチャンスととらえて取り組んでいる点に、日本との違いがあります。

 

4.講演内容に関する質問

Q.非物質化、サービス化された産業では、価値創造の中心が情報という限界コストが低く、排他性がないものを基盤にしているがゆえに、投資収益性が高く、また脱炭素化に資するという理解で良いでしょうか。
A.サービス産業だから限界費用が低く、収益性が高いとは言えません。投資対象が工場から人や組織などに変化しましたが、研究開発コストはとても高くなっています。収益性を得るためには投資コストを上回る利益を得なければなりません。脱炭素化については、サービス産業に移行することで、CO2排出量は減らすことができると思います。しかし電気の使用量は増えるため、電力部分の脱炭素化が必要になります。また自社だけでなく、サプライチェーン全体で再エネに取り組むことが求められます。そのため電力の転換が進めば、社会全体の脱炭素化に繋がると考えています。

Q.今日のお話とCSV経営はどう関わってきますでしょうか?私の中では、産業構造の転換の一つの手段としてのCSV経営だと捉えております。
A.脱炭素化と経済成長の両立は、CSV経営との共通点が多い論点だと思います。一見対立/矛盾する2つの価値を統合してより高みに持っていく、という点が、両者がともに目指すところだと考えます。

 

5.その他

Q.無駄な資産、本当に心配です。諸富先生ありがとうございました。
A.たしかに心配です。しかし人間も企業も、大きな失敗をしなければ、なかなか変わりません。膨大な資産が無駄になっても、そこから学んで再生できれば報われることになるのではないでしょうか。是非、日本企業がそうした方向に向かうことを期待したいと思います。

Q.メンバーズさん以外でカーボンゼロに向けた取り組みで注目されている会社があればその取り組み内容含めて教えてください。
A.個別企業の中身まで詳しくは存じ上げていませんので、残念ながらお答えするのは難しいですが、JCLP※加盟企業の取り組みは、注目に値すると思います。

※JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)については、こちらのコラムからご確認いただけます。

Q.私からみて、日本企業のふるまいの本質は、「現在の」財務的な価値の追求を目論み、「既存の」評価基準からみて自分たちを評価しようとする志向性、良くも悪くも、目の前にある物質に目を向けてしまうところにあるように感じられています。
これを問題と捉えるならば、目の前にないもの(非物質)に目を向けないといけず、このような思考の転換を図ることが、先生のご研究の主張点であると理解しています。
この「目の前にないもの(非物質)に目を向ける」という思考は、私には余剰資本の投資の思想そのもののように思えます。資本主義の非物質主義化によって、資本主義の思想そのものがどう変わってきた(あるいは変わってこなかった)のでしょうか?今後、資本主義の思想そのものは、どう変わっていく可能性があるのでしょうか?
A.最後の段落の「・・・という思考は、私には余剰資本の投資の思想そのもののように思えます」という点が理解しきれませんでしたので、ご質問者の意図を汲んで後段のご質問にどのような視角からお答えすればよいのか、的確な回答が浮かびませんでした。申し訳ございません。

 

以上が質疑応答の内容となります。

本セミナーの資料/アーカイブ動画は、下記よりご覧いただけます。

京都大学大学院 教授 諸富徹氏にご登壇いただき、ビジネスと環境問題をテーマに、脱炭素×DXは並行して取り組むべき課題であることを各種データをもとに解説いただきました。
講演資料はこちら/講演動画はこちら

 

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<コラム執筆>
石川碧
EMCカンパニー EMC推進室 マーケティング&コミュニケーショングループ
2020年にメンバーズへ新卒入社。顧客向け勉強会の企画や自社サイトの運用業務を担当。社内のサービス・取り組みについてのコラム執筆にも挑戦中。