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DX視点で読み解く:現代版フランス革命?!米国ゲームストップ株事件

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ここ数日で話題となっている「ゲームストップ株事件」をご存知でしょうか?

アマチュア投資家VSヘッジファンドの抗争は、権力を独占する貴族に立ち向かった現代版のフランス革命、市民革命ともいえるかもしれません。

デジタル業界に身をおきデジタルマーケティングやDXを推進する私達にとっても、なかなか示唆に富む事件です。金融の難しい話が多く含まれているので、起承転結の4つの章に分けて分かりやすく解説してみます。

目次
●起の章:集団を形成し道具を手に入れたアマチュア投資家
●承の章:ゲームストップを守れ!ヘッジファンドとの戦い
●転の章:裏切りのロビンフッド?
●結の章:戦線離脱を始めるヘッジファンド
●DX視点で読み解くこの事件の示唆
●海外有力メディアのデジタルトレンド情報をかき集めた「デジタルトレンド2021」刊行!

 

●起の章:集団を形成し道具を手に入れたアマチュア投資家

まず、今回の革命を巻き起こしたアマチュア投資家たちと彼らが集うSNS・コミュニティについてご説明します。
アマチュア投資家は、世界中に存在します。彼らがSNS上で情報交換をするのは当然の行為。なかでもテーマ設定可能なコミュニティを持つSNSにはファンが集いやすいですね。
「レディット(Reddit)」もそんなSNSのひとつ。金融投資のテーマを掲げる「WallStreetBets(WSB)」というコミュニティの登録者数は500万人超です。

もう一つの背景として、手数料無料で金融商品の売買ができるオンライン証券が勃興しています。
なかでも、伝説上の義賊の名を冠するのが「ロビンフッド」というオンライン証券会社です。彼らが保有するアプリは、非常に洗練されたデザインで2015年にはAppleデザインアワードも受賞。退屈にみえる投資活動を、簡単に楽しめて習慣性のあるものに変え、DX事例としてもたびたび登場します。コロナ禍を契機に投資を始めた若い世代を中心に利用者数は増加し、2019年末には1000万人に到達しました。

レディット(Reddit)
・米国の掲示板型ソーシャルメディア
・テーマ性があるコミュニティでファン同士が情報交換できる
・話題になったのが WallStreetBets(WSB)というコミュニティ。登録者数500万人超
・WSBは投資に対して「何でもあり」の姿勢を奨励。常識を避け、ユーザーや投資判断、勝敗を失礼な言い回しで表現する。画像ネタを多用し、大きく賭けて負けた投資をからかい半分に祝福するパリピ的な場所として発展

 

ロビンフッド
・アメリカのオンライン証券会社
・特徴は手数料無料で金融商品の売買ができること
・コロナ禍を契機に投資を始めた若い世代を中心に利用者数が増加、2019年末には1000万人に到達

 

●承の章:ゲームストップを守れ!ヘッジファンドとの戦い

テキサスに本社を置き、テレビゲームの機器やソフトを売る実店舗を北米中心に世界中に展開する「ゲームストップ(GameStop)」という企業がニューヨーク証券取引所に上場しています。そうですね・・・日本の企業で例えるならGEOとかですね。
業務形態からわかるとおり、若者(特に米国オタク族)への知名度が高い企業がありました。

ゲームストップ(GameStop)
・テレビゲームの機器やソフトを売る実店舗「ゲームストップ」を北米中心に世界中に展開する小売企業。ニューヨーク証券取引所に上場
・日本の企業で例えるならGEO
(補足説明:つまり(特に米国の)オタクで知らない人はいない)

そもそもオンラインゲーム普及でゲームストップの業績は右肩下がり。ここにきてコロナショックによる更なる大苦戦を見越したシトロエン・リサーチ他複数のヘッジファンドが、空売りを仕掛けていきます。
株券を借りてそれを売り(空売り)、それを買った人からまた株券を借りて空売りを仕掛けることで、ゲームストップの市場流通量(浮動株)以上の空売り状態になっていたのです。

それに気づいたアマチュア投資家が声をあげます。

ゲームストップが異常なまでの空売りで荒らされている情報がレディット/WSB上で話題となります。 みんなが大好きなゲームストップ、ヘッジファンドの喰い物にされてなるものか!と興奮します。

よし!じゃあみんなでゲームストップを買い支えようじゃないか!ということになり、我も我もと買い支え。
塵も積もれば山となる。米国では1株からも買える。お小遣い程度でヘッジファンドに戦いを挑めるぞー!とまるで市民革命の様相になってきたのです。小型銘柄で浮動株少なく日中出来高も少ないことを背景に、年明け時点で18.84ドルだった株価が100ドルを超えていきます。

・ヘッジファンドは、シトロエン・リサーチ他、複数社存在。
・過去52週間(≒過去1年)の最安値(2.57ドル)だったものが、1月28日に一時483ドルを記録するまで暴騰。

 

●転の章:裏切りのロビンフッド?

焦ったのはヘッジファンドです。
空売り、つまり値下がりで利益とろうとしてたのがまったく逆の動きになりました。浮動株も少なく(空売り、つまり株を借りる)貸株料も大きくアップ。ヘッジファンドも目論見が崩れると自主運用ルールに従い撤退せざるを得ません。ショート・スクイーズ(空売り勢の損失覚悟の買い戻し)が発生し、1月28日に一時483ドルを記録するまで暴騰したのです。

と、ここに来てまさかの事態発生。

ロビンフッドなど証券会社数社が、ゲームストップの“購入”を制限。つまり投資家は株を買えず、ただ株を持ち続けるか売るかしかなくなり、ゲームストップの株価は大きく下落したのです。

義賊と信じていたロビンフッドに裏切られた!とレッディト/WSB上で話題となり、アマチュア投資家はロビンフッドらオンライン証券会社に激しい怒りを向けます。

なぜ取引制限したのか?ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると株取引精算機関からの保証金の積み増しを求められたとされています。けれどもアマチュア投資家はそうは受け取りません。

ロビンフッドも企業です。収益がないと成り立ちません。ではその収益をどこから得ていたかというと・・・
来た株式注文をヘッジファンドやHFT業者(超高速高頻度取引業者)へ取引を流し、その手数料で儲けるのがビジネスの仕組み。
つまりキックバックで成り立っているということです。顧客であるヘッジファンドを攻撃するわけにはいかないということか!義賊に裏切られた!と、レディット/WSB上でまたも大騒ぎになります。

レディット/WSBのモデレーターは27日、全ての投稿とコメントを把握し続けるのは困難だとして、一時的にフォーラムを非公開にしたり、レディットのチャットサービスのサーバー停止が起きたりと混乱が騒動を大きくします。

騒動を聞きつけ、米国の政治家も騒ぎ始めます。
機関投資家がやってきたことをアマチュア投資家がやると規制するとは何事か!と。それが功を奏したか、はたまた保証金の積み増しがなし得たのか定かではないですが、制限事態は解除されて株価は乱高下・・・と不安定な状況が続きます。

 

●結の章:戦線離脱を始めるヘッジファンド

ついには、有力ヘッジファンドの一角であるシトロエン・リサーチが白旗。ゲームストップからの撤退を表明しました。もう二度と空売り対象の企業探しをしないと宣言、彼らのビジネスモデルを根底から覆す事態になったのです。

レディット/WSB上ではアマチュア投資家が歓喜の声をあげています。

この事件で大きく損失し運用パフォーマンスが大幅に悪化したヘッジファンドが、その損失手当のために主要銘柄の株式を換金売りする、とも囁かれています。これが、米国株式市場全体を大きく揺るがす事態に発展しなければいいのですが・・・

 

●DX視点で読み解くこの事件の示唆

さて、前置きが長くなりました。
この事件をデジタルマーケターとして、あるいはDXプランナーとして、あなたはどのように見ますか?

ヘッジファンドは、法令遵守のもと、いつもどおり活動していました。
ロビンフッドは手数料無料で投資チャンスを提供してきました。
レディットは単なる掲示板ソーシャルメディアです。
なぜこのような事件が起きたのでしょうか?

アマチュア投資家は・・・
馴染みのあるゲームストップを汚された!と感じました。
ヘッジファンドに抵抗する声をSNS上であげたのです。
手数料無料のロビンフッドになだれ込む注文。
彼らの思いは、株価操作ではなく、一矢報いることが目的。
それが、まさかのロビンフッドの取引規制・・・

ヘッジファンドや機関投資家がやってきたことを、アマチュア投資家がやると制限されたのです。そりゃあ激怒するでしょうね。
ヘッジファンドは、ブランドを大きく毀損し、今後のビジネスモデルの大転換も突きつけられることになりました。なぜでしょうか?

倫理観。
そう倫理観があらためて問われ始めてきているのです。

2000年代にアラブの春という事件がありましたが、あれは政治に対して民衆が起こしたデジタル革命。今回のゲームストップ事件は、ヘッジファンドを金持ちとみなした民衆が起こしたデジタル革命と後の歴史家は評価するかもしれません。

SNSのおかげで、民衆は発信力を手にいれました。
昨日まで普通とされていたことに疑問を感じ、反論し、声をあげ、行動に移す。
まさに市民革命ともいえるムーブメントを超短期に起こすことができたのです。
頼もしさと同時に怖さを感じますね。

もしあなたが、ヘッジファンド側やロビンフッド側、レディット側にいたら
このムーブメントを一刻も早く捉える環境は整備できてますか?
このムーブメントでどのように振る舞うべきか想定されていますか?
このムーブメントでどのような着地点を目指すべきですか?

そして・・・
この先、同様の市民革命が起きそうな潜在的リスクが貴社にはないといえますか?
倫理観。
デジタル化やDX化は、貴社のビジネスが今より効率効果的になるだけではないのです。
デジタル化やDX化は、ビジネスモデルの倫理的な再構築も求められているのかもしれません。そんなことを考えさせられるゲームストップ事件です。

 

 

参考情報:
https://jp.wsj.com/articles/SB11035720615581634282004587256180043587506
https://www.youtube.com/watch?v=r0pLHQvspi0
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2021/fis/kiuchi/0201

 


 

●海外有力メディアのデジタルトレンド情報をかき集めた「デジタルトレンド2021」刊行!

情報収集しなければ…!という皆さんに朗報です。
今年もデジタルトレンド発表の時期がきました!なんと今年で7年目です。
参考:昨年の昨年のデジタルトレンド2020はこちら

デジタル領域は日々進化変貌を遂げ、コロナショックでその実現速度は一気に加速してきました。
また、技術的なトレンドだけではなく、コロナショックやDXやSDGsなどは経営者の考え方にも変化を与えています。

その潮流を見据え、今回のデジタルトレンド2021では、
「経営視点編」と「技術視点編」「個別業種編」の三部構成にしました。

調査対象も質・量ともに大幅アップしたデジタルトレンド2021、近日公開です!

乞うご期待!

 


 

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担当:数藤雅紀/ご連絡はこちらから

以下の対象領域に関する情報収集やコンセプト作り、事業設計などご相談いただけます。ぜひご連絡ください。

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数藤 雅紀

数藤 雅紀(すとうまさのり)

シニアプロデューサー兼戦略プランナー、デジタルトレンドラボ所長

大手證券、世界大手調査会社を経てメンバーズ入社。戦略プランナーとして、上場企業・グローバル外資企業などの大手企業のデジタル戦略・施策を支援。ネット選挙や新規事業系支援などの先鋭的案件も得意。阿波踊りとフルマラソンを愛する左利きB型。