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【セミナーレポート】「カーボン・プライシングと再生可能エネルギー政策の現状と課題~日本が導入すべき方策と企業が取り組むべきこと~」

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メンバーズでは脱炭素社会の実現に向けて、お客さま企業向けの勉強会を開催しています。2020年12月上旬に京都大学大学院 教授 諸富 徹氏にご登壇いただき、世界各国における炭素税導入と経済状況、再生可能エネルギーの最新事情についてお話いただきました。本コラムでは、諸富氏の講演内容についてご紹介します。当日のご講演資料とアーカイブ動画は本コラム最後でご案内しております。

目次
1.登壇者さま紹介
2.パリ協定後の日本の課題は何か
3.日本の気候変動対策の現状
4.CO2排出量と収益性
5.カーボンプライシングが事業の公正さを表す
6.カーボンプライシングの現状と経済的影響
7.ドイツ・イギリスの再生可能エネルギー導入状況
8.日本、そして企業は今後どのようにしていくべきか
9.企業活動を通して消費者や子供に発信するべきメッセージとは

 

1.登壇者さま紹介

京都大学大学院 教授 諸富 徹 氏

環境経済学の専門家。特に環境税、排出量取引制度など気候変動政策の経済的手段(カーボンプライシング)の分析や、グローバル経済/デジタル経済下の税制改革といったテーマに取り組まれる。直近では、資本主義が脱炭素化/デジタル化に向けて変容していく中で、市場と国家のあり方はどうあるべきかを問う研究もおこなっている。

著書:『資本主義の新しい形』(岩波書店2020年)

 

2.パリ協定後の日本の課題は何か

パリ協定では温暖化による深刻な影響を避けるため、平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えることを目標とした「2℃目標」を定めています。この目標を達成するため、近年、世界中で高い目標が掲げられ、日本でも2020年10月に「2050年にCO2排出量を実質ゼロにする」ことを宣言しています。この目標を達成するためには、例えば、石炭火力発電所の段階的全廃を進めるなど相当大きな変革が必要です。

引用:最近の気候変動政策の動き(福岡市地球温暖化対策市民協議会)

パリ協定以前に世界的な目標を定めた京都議定書では、日本は1990年と比較し温室効果ガス排出量を減少させることを目標としていました。しかし、上記の図からもわかるように、2017年までの約20年間はCO2排出量を減らすことができませんでした。2018年にようやく京都議定書で定めた基準を下回ることができ、その後減少傾向となっています。

産業別にCO2排出量の推移を比較すると、エネルギー転換分野(石炭火力発電)を除き、全体的に減少傾向となっています。2050年の削減目標を達成するためには、石炭火力発電への依存を解決することが重要となっています。

 

3.日本の気候変動対策の現状

日本の気候変動対策は、CO2排出量削減に大きな成果が出せていない状況です。

実はパリ協定前の段階では日本は先駆的に温暖化対策に取り組む必要がないとされていました。その理由は3つあります。

①日本はすでに世界最高水準の排出削減技術を持っている
②日本は石油ショック以来、省エネに取り組み今や「乾いた雑巾」だ
③日本の限界排出削減費用は世界最高水準/さらなる温暖化対策は成長にマイナス

しかし現在の状況は違うのではないでしょうか?

日本の技術は他国と比較し遅れている

日本はバブル崩壊後、技術的に後れをとり、様々な商品における競争において他国に抜き去られています。温暖化対策でも同じことが起きています。たとえCO2削減技術は最高でも、付加価値の創出に結びつけることができていない可能性があります。実際に各種産業のエネルギー効率性は1985年以降上昇していません。現状は横ばいか効率性が悪くなっている産業もあります。

日本はまだ省エネに取組む余地がある

「乾いた雑巾」と言われていた日本の省エネ対策ですが、東日本大震災の停電の影響もあり、各家庭で省エネの意識が高まることで電力消費量の削減に成功しています。数年後には震災前の電力消費量に戻ると考えられていましたが、関西電力エリアでは震災から数年経過してからも電力の削減が続いています。つまりまだ省エネを進める余地があるのです。

温暖化対策と経済成長の両立は可能である

EU諸国では1990年代初頭に炭素税を導入し、CO2排出量を削減しながらGDPを伸ばしています。通常CO2削減に取組むと経済が打撃を受けると考えられていますが、多くの国でCO2削減と経済成長の両立が成されています。両立ができる理由として個人がCO2削減のために設備投資を始めることと、企業が脱炭素社会に適応するために産業構造をデジタル化へ転換し成長を遂げていることが考えられます。

 

4.CO2排出量と収益性

引用:カーボン・プライシングと再生可能エネルギー政策の現状と課題~日本が導入すべき方策と企業が取り組むべきこと~(登壇資料)

日本の産業セクターを炭素生産性と利益率でマッピングしてみると、CO2大量排出業は収益性が高くないことが明確です。少し厳しい言い方になりますが、炭素生産性の悪い産業は利益が低く、日本経済に貢献できていないと言えます。

 

5.カーボンプライシングが事業の公正さを表す

CO2排出量に課税し、CO2の削減を促すカーボンプライシングは環境をよくするための政策手段だけではなく、産業構造の転換を促すものです。今後はカーボンプライシングを取り入れ、利益をあげることができる企業が公正な企業になると考えています。

カーボンプライシングが導入されると、CO2排出量の少ない企業が有利に、多い企業が不利になります。排出されるCO2に課税されるため、多く排出する企業は利益率は下がり、逆に、CO2排出量が少ない企業は利益率が上がるからです。そのため産業によってはカーボンプライシング導入に反対の方もいるかと思います。

しかし、北欧では既にカーボンプライシングが導入されていることがフェアであり、何をもって公正とするかの考え方も時代によって変化しています。今後はCO2を多く排出する企業は、現在でいう児童労働のように不当な企業だと認識されるリスクがあります。

 

6.カーボンプライシングの現状と経済的影響

他国はカーボンプライシングを導入しながら、GDPも高めることに成功していますが、日本では成果が出ていない状況と言えます。

カーボンプライシングの税率を比較すると、日本の税率はとても低く、欧州を始めとする先進国では高税率となっています。またカーボンプライシングの導入後、他国では税率を上げてCO2排出量削減に取り組んでいます。

他国では高税率のカーボンプライシングを導入した後、CO2排出量の削減とGDPの成長を両立する「デカップリング」が起きていますが、日本ではなかなか進んでいません。

すでに欧州諸国で実現されていますが、デカップリングが起きていることから、経済に悪影響を与えずにカーボンプライシング等の環境税を導入することも可能と言えます。むしろ導入することでプラスの影響を与えている国もあります。
例えば、イギリスでは環境税を導入し、社会保険料の負担分の引き下げを行っています。環境税の負担は大きくなりますが、社会保険料の引き下げを行うことで、労働者を雇用した企業の負担を下げ、雇用を促進しています。

 

7.ドイツ・イギリスの再生可能エネルギー導入状況

エネルギーについて考えてみると、サービス業では電気の使用に伴って、CO2を排出しています。そのため自社での省エネの取組み以外にも電源そのものを再生可能エネルギーに転換することが大切です。

ドイツ・イギリスではCO2排出量は下がり、GDPは上がるというデカップリングが起きています。

ドイツの状況

・チェルノブイリ原発事故をきっかけに、原子力発電の割合が減少し、代わりに再生可能エネルギーを年々増加させています。
・ドイツの課題は石炭火力発電の撤廃です。ドイツでは2038年に石炭火力発電ゼロを目標にしています。

イギリスの状況

・イギリスでは石炭火力発電の削減が進み、代わりに再生可能エネルギーを増加させています。
・イギリスの課題は原子力発電です。イギリスでは再生可能エネルギーで石炭火力発電を全て補うのではなく、新しい原発の開発をすすめ活用していく方針となっています。

ドイツ、イギリスで抱える課題は異なりますが、どちらも再生可能エネルギーの割合を今後拡大していく方針となっています。

 

8.日本、そして企業は今後どのようにしていくべきか

まず日本は本格的なカーボンプライシングを導入し、税率を段階的に引き上げていくことが必要になると考えています。欧州諸国のデータでも示されている通り、経済成長とカーボンプライシングの両立は可能です。

そして企業は5つのことに取組む必要があると考えています。
①2050年を目指して高い目標を掲げる(「RE100への加盟」、「カーボンニュートラル(気候中立)宣言など」)
②気候変動問題への寄与を通じて利潤を上げていくビジネスモデルに転換する
③再エネ比率の引き上げ、省エネの強化など企業として現時点で可能な対策(社内CPを含む)を実行する
④中長期的に投資の中身、事業構造をどのように変えていくべきか検討する
⑤企業だけでなく、産業界全体、あるいは政府と協力して推進していく

 

9.企業活動を通して消費者や子供に発信するべきメッセージとは

消費者に身の回りのエネルギー消費について考えるきっかけとなるメッセージを届けることが大切だと思います。消費者が削減できるCO2は電気・住宅・交通の3つがあると考えています。それぞれのCO2が排出されるプロセスとどのように削減できるかについて知識をつけてもらうことが必要です。

電気
・電気には種類があり、電力自由化により自分で電気を選ぶことができる。
・再生可能エネルギーへの切替も可能。

住宅
・断熱を取り入れることで、エネルギー消費を抑えることができる。
・CO2排出量の削減につながる住み方とは何かを伝える。

交通
・公共交通機関・電気自動車・徒歩を選ぶなど、日常生活でもCO2排出を抑えることができる。
・飛行機やガソリン車での移動にはCO2排出が伴うことを伝える。

以上がセミナーの内容となります。
カーボンプライシング・再生可能エネルギーについてよりご興味を持っていただけたら、下記講演資料とアーカイブ動画をご覧いただけると幸いです。

 

本セミナーの資料/アーカイブ動画は、下記よりご覧いただけます。

京都大学大学院 教授 諸富徹さまにご登壇いただき、世界各国における炭素税導入と経済状況、再生可能エネルギーの最新事情についてお話いただきました。今後の日本および企業がとるべきアクションについても深い示唆に富む内容となっております。是非ご覧ください。
講演資料はこちら/講演動画はこちら

 

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<コラム執筆>
石川碧
EMCカンパニー EMC推進室 マーケティング&コミュニケーショングループ
2020年にメンバーズへ新卒入社。顧客向け勉強会の企画や自社サイトの運用業務を担当。社内のサービス・取り組みについてのコラム執筆にも挑戦中。