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「スポーツの力で気候変動問題を解決する」 アシックス:Social Good な企業とその取り組み #53

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東京2020大会では、 日本代表選手団公式スポーツウエア製作を通して、消費者との共創によりサステナビリティの意識を高め、2050年 脱炭素社会への移行を目指すアシックス。今回は、再生可能エネルギーの導入やモノづくりを通した気候変動対策を中心にインタビューの機会を頂きました。

  • 気候変動に取り組むのは、創業哲学に基づく、心身共に健康な社会作りのため
  • モノづくりを通して、サステナブルな価値を積極的に発信していく
  • スポーツには、気候変動問題を解決する力がある

<インタビューにご協力いただいた方々>

CSR統括部 CSR・サステナビリティ部 部長 吉川 美奈子 様(左)
同部 環境サステナビリティチーム マネジャー 井上 聖子 様(右)

<プロフィール>

吉川 美奈子 様
ドイツ銀行、P&Gを経て、2011年アシックスにCSR部長として入社。サステナビリティ戦略と体制のグローバル化を推進。グローバル広報室長、リスクマネジメント担当部長を経て2019年より、CSRサステナビリティ部長。

井上 聖子 様
2005年アシックスに入社。アシックスとマサチューセッツ工科大学の共同研究プロジェクトの一員として、シューズ1足のライフサイクルでのCO2排出量を業界内で先駆けて算出。現在は、サステナビリティ戦略、サプライチェーンなど環境サステナビリティに関する幅広い分野を推進。

 

 

●スポーツメーカーとして、CO2排出削減をマテリアリティとして掲げ取り組む意義を教えて下さい。

1949年に「スポーツによる青少年の育成を通じて社会の発展に貢献する」ことを志し創業したのがアシックスです。創業者である鬼塚喜八郎は「もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神があれかしと祈るべきだ(Anima Sana in Corpore Sano)」という古代ローマの詩人ユベナリスの名句に感銘を受け、アシックスの社名の由来にもなっています。戦後の混乱した時代に、青少年を前向きにしたい、という考えで創業しました。

そうした創業哲学や社名にも込められた想いが、スポーツを通して、心身共に健康で前向きな社会を創り、将来世代にもつなげていくことです。そのためには、気候変動の問題も解決する必要があります。

気候変動とスポーツとの関係性ですが、例えば、2019年 ドーハで開催された世界陸上では、暑さの影響もあり、女子マラソン選手の約40%が棄権してしまいました。また、来年開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)では、マラソンや競歩の開催地が、猛暑の影響を考慮して札幌に変更になりました。

気候変動の問題が深刻化することによって、スポーツにも影響を与えている、そうした考えから積極的に取り組んでいます。

 

●気候変動問題は、夏の猛暑や自然災害等、私たちの身近な問題として実感することも増えました。

最近は、熱中症を予防するため、小学生が外で遊ぶことも制限されています。世界的な大会だけではなく、一般の人たちがスポーツを通して心身ともに健康になる、それ自体にも影響を与えています。

こうしたことから、気候変動問題とスポーツは密接につながっていると考えています。

 

●2050年には再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%の目標を掲げ、RE100にも参加しています。

2050年のCO2排出実質ゼロにコミットメントしており、2030年のCO2削減目標は、SBTにも承認されましたので、目標達成のために再エネ100%を実現することはとても重要です。導入の進捗状況に関しては、国内では、本社や研究所等、すでにいくつかの拠点で、再エネ100%を達成しています。

 

●再エネ電源はどの様にして調達していますか?

本社等では、電力会社が提供する再エネのメニューにより調達しています。米国の大規模な自社配送センター等では、施設自体に太陽光パネルを設置しています。また、欧州では再エネ調達が順調に進み、現時点で全事業所の約7割が再エネに移行しています。

グローバルで事業を展開していますので、国やエリアによって、調達方法や進捗状況も異なります。

 

テキスト

 

●RE100に参加したことによる社外の変化を感じることはありますか?

RE100にコミットメントしたことで、再エネに関する様々なご提案を外部から頂く機会が増えました。

また、私たちは、国連気候変動枠組み条約の「ファッション業界気候行動憲章」にも署名していますが、こうしたイニシアティブに参加し、サプライチェーンまで含めて、企業が共に取り組むことはとても重要です。ファッションやアパレル業界は、以前から気候変動等の社会課題に対して、一緒に取り組むという文化がありますし、気候変動に対する意識も業界全体で高まっていると感じています。

 

●社員の方々の意識の変化はいかがですか?

RE100に参加したことで、社内の意識や関心も高まっていると思います。特に若い世代の社員のサステナビリティへの関心はとても高く、新入社員研修等では多くの質問や意見をもらいますし、「会社としてこの取り組みに参加できないか」「この団体と協業できないか」といった具体的な取り組みに関して提案を受けることもあります。若い世代の社員を巻き込み、サステナビリティの取り組みを盛り上げていくことが重要です。

 

●東京2020大会では、一般の人たちから回収したウエアを原材料にしたオフィシャルウェア作りに取り組んでいます。ウェアのテーマとなるキーワードの1つがサステナビリティですが、このキーワードを含めた経緯や意味を教えて頂けますか?

東京2020大会の基本原則の一つが、サステナビリティです。また、オリンピック・パラリンピックは、新しい文化やレガシーを社会に残していくという考えもあるかと思います。そうしたことからも、オリンピック・パラリンピックを通して、サステナブルな社会を根付かせていきたいとの考えからテーマの1つとしました。

東京2020大会では、回収した家電等の金属を原材料としてメダルを作ったり、使用済プラスチックで表彰台を作ろうとしていますので、オフィシャルウェアも、リサイクルで作ること(ASICS REBORN WEAR PROJECT)を提案しました。

 

テキスト

アシックスWebサイトより

 

●数年前には、アパレル企業の商品廃棄問題がニュースでも取り上げられました。回収ボックスを設置したことは、そうした社会課題に対して、消費者の意識を高めることになりますし、今回の取り組みは消費者との共創と言えます。

消費者の皆さんと一緒に取り組むことができたのは、とても意味あることと考えています。商品の廃棄問題を知ったとしても、個人でできることは限られています。自分で使ったモノがオリンピック・パラリンピック選手のウェアに生まれ変わることを知れば、一般の方々もアクションを起こしやすいですし、商品廃棄問題や気候変動への意識を高める動機付けになったと考えています。

 

●最近では、アパレルメーカーや、スポーツメーカーを中心に、サステナビリティをテーマに、リサイクル素材を活用した商品が増えていると感じています。特に、海外のスポーツシューズメーカーが積極的に取り組んでいる印象です。ASICS REBORN WEAR PROJECTはその取り組み1つかと思いますが、商品を通したサステナビリティの訴求や消費者とのコミュニケーションはどの様に考えていますか?

気候変動問題を解決するため、バリューチェーン全体で取り組み、循環型のもの作りを行うことはとても重要です。

ウェアやシューズは、多くのポリエステル素材を使用していますが、2030年には100%再生ポリエステル材への切り替えを目標に掲げ取り組んでいます。2021年からは、当社の主力商品であるランニングシューズはほぼ全ての新製品で、リサイクル材を採用する予定です。ウェアも、ASICS REBORN WEAR PROJECTの取り組みを活かし、リサイクルウェアを順次、提供する予定です。

また、今年から、100%再生紙と水性インクによる環境配慮型のシューズボックスを導入しました。新しいシューズボックスを採用することで、年間約1,200トンのCO2排出削減を見込んでいます。

隈研吾さんと共同開発したシューズでは、セルロースナノファイバーという素材を採用しています。セルロースナノファイバーは、木質資源が原料のため、循環型低炭素社会の実現にも貢献できる素材として、様々な産業で注目を集めています。さらに、自然由来の素材にも関わらず、鉄と比べて、5倍以上の強度があるとされています。この素材を原材料に、2018年に私たちは世界で初めて一般消費者向けの商品を開発しました。そして今年の日本オープンイノベーション大賞では、選考委員会特別賞を頂きました。

 

テキスト

アシックスWebサイトより

 

●そうした先進的な取り組みに対する消費者の反応や認知はいかがですか?

こうした素材を積極的に採り入れても、残念ながら、なかなか消費者の方々にきちんと伝わっていないのが現状です。しかし、認知を高めるため、これまで以上に、情報発信を強めていく必要があると思っています。消費者の方々がライフスタイルの中でアクションを起こしやすい形での情報発信が必要です。

 

●若い世代は特に気候変動への関心も高いとのお話もありました。こうした取り組みを消費者に伝えることは、商品選択の際の動機付けの1つになると思います。

海外のメーカーは、サステナブルな情報も積極的に発信しています。リサイクル素材も通常素材と変わらない見た目で提供しますと、商品の見た目だけで伝えることは難しくなりますが、私たちも、モノづくりを通して、サステナブルな価値や気候変動問題に対する対応をグローバルで積極的に発信をしていきたいと思います。

そうした情報をお客さまが理解することで、私たちの商品を選んで頂く、今後、そうした傾向は強まると思います。

 

●将来のサステナブル社会に向けて、メッセージをお願いします。

私たちは、将来ありたい姿を長期的な視点で示す、「VISION2030」を策定しています。重視するテーマとして、「デジタル」、「パーソナル」、「サステナブル」の3点を掲げています。気候変動問題が顕在化する中、「サステナブル」は今後もますます重要になるでしょう。

また、これからも創業の精神を受け継ぎ、将来世代に渡り、スポーツを通して心身共に健康な社会をつくっていきたいと考えています。気候変動問題に取り組むことで、未来の子どもたちや人々の心身の健康に貢献できると考えています。

こうした考えを、お客さまやお取引先さまも含めて、拡げていきたいと考えています。スポーツにはそれを実現できるとても大きな力があると信じています。

 

 

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萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社 メンバーズ
EF室 CSVデザイン
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員、環境エンジニア2級
『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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