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「同じ志を持つ人がつながり、気候変動の解決策を見つけていく」 アスクル:Social Good な企業とその取り組み #52

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2016年に「2030年CO2ゼロチャレンジ」を発表、翌年にはRE100、EV100に参加し、いずれも2030年までに、再生可能エネルギー利用率と配送車輛EV化の100%達成を目標として掲げるアスクル。なぜ高い目標を掲げ積極的に気候変動対策に取り組むのか?今回はアスクルのお二人にインタビューの機会を頂きました。

  • お客さまや社会の声に耳を傾け、環境への対応を積極的に推進
  • 高いゴールを達成するために、常に目標設定を考える
  • 同じ志を持つ人たちと気候変動対策の目標達成を信じ取り組む

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<インタビューにご協力いただいた方々>

アスクル株式会社
コーポレート本部 コーポレートコミュニケーション サステナビリティ(環境) 部長 東  俊一郎 様(左)
同  立花 丈美 様(右)

<プロフィール>

東 俊一郎 様
1999年入社。オリジナル商品の環境ラベルの管理体制の構築、ISO14001の新規取得の立ち上げに係わる。2010年からコピー用紙の原材料に係わるプロジェクトに従事。2016年から現職。現在は、アスクルの環境活動全般の企画・推進の統括を担当。

立花 丈美 様
2007年入社。物流および全社の環境活動の企画・推進を担当。2016年の「2030年CO2ゼロチャレンジ宣言」、2017年のRE100・EV100加盟に係わる業務に従事。現在は、気候変動・資源循環・サプライチェーンの3つの環境課題の解決に取り組む。

 

●以前より環境配慮型の商品を積極的に提供しているイメージがあります。

環境への取り組みは20年前から進めていますが、ダイレクトマーケティングの会社として、常にお客さまや社会の声を商品やサービスに反映し改善してきた歴史があります。

現在、法人のお客さまを中心に、多くのコピー用紙を購入して頂いています。以前のコピー用紙市場は、複合機を提供するメーカーがコピー用紙も販売していましたが、その牙城を崩そうと、海外メーカーと協業し、コピー用紙の製造販売をスタートしました。

当時は品質の良いコピー用紙をできるだけ安く提供しようと進めていましたが、ある時、環境NGOから原材料に関する懸念があるという指摘を受けました。それをきっかけに、紙製品の調達方針を制定し、原材料調達のトレーサビリティ調査も進めました。2010年からは、生産国であるインドネシアにも定期的に視察を行い、持続可能な原材料の調達により、環境に配慮したコピー用紙をオリジナル商品として提供しています。

また、商品配送の際も、以前は、お届けする商品に比べて、配送の際の段ボールが大きかったり、緩衝材や梱包材が多く含まれていました。そうした梱包のための資材はお客様にはゴミになります。こうしたこともお客さまの声を採り入れ、使用するダンボールのサイズの適正化、緩衝材の量の最適化、くり返し利用可能な折りたたみのコンテナを活用することでゴミを減らし、環境負荷を抑える取り組みをしています。

多くの環境配慮型商品を提供していますが、アスクルオリジナル商品は全て環境配慮型商品にするという目標を掲げ、2012年に達成しました。環境に配慮した商品を提供し、その商品を購入していただくことで、お客さまのグリーン購入にも貢献できるのではないかと考えています。

 

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●そうした環境へのスタンスが、積極的な気候変動対策にもつながっているということですね。

気候変動対策は、2013年、当時の社長が、英国大使館主催の「科学者とCEOの対話」に参加したことがきっかけとなります。そのイベントに参加した科学者の1人でIPCCの報告書作成にも関わった、木本 昌秀 教授(東京大学 大気海洋研究所)から、地球温暖化の話を伺い、こうした社会課題を企業として解決する役割を果たす必要があると考えたことからスタートしています。そして、商品やサービスでの環境対応だけでは、地球温暖化の対応には不十分であり、企業として率先して気候変動に取り組む価値があると考えました。

こうした中、2015年にはパリ協定が採択されますが、弊社も2016年に、「2030年CO2ゼロチャレンジ」の宣言をしました。「アスクルが直接影響を及ぼすことができる事業所・物流センターから排出されるCO2をゼロ」、そして「物流センターからお客様までの配送に使用する車両から出るCO2をゼロ」に、というのがチャレンジの内容です。

 

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アスクルWebサイトより

 

●2050年 再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%を目標とする企業が多い中、非常に高い目標を掲げています。

2030年までに残された時間はあまりありません。ほとんどの企業が、2050年を目標年としていましたが、当時の経営トップの強い意志で、その目標を掲げました。

2030年という短期間でどの様なことができるのか、十分な資源もない中で考えたのが、JCLPへの加盟でした。そして、2017年には、RE100(再生可能エネルギー100%)、EV100(電気自動車100%)に参加し、国際的なイニシアティブの中で達成を目指すことを改めて宣言しました。こうしたイニシアティブに参加することにより、多くの仲間と共に取り組むことができる、また、様々な提案やソリューションの提供があると考えました。日本企業としての参加は、RE100は3社目、EV100は2社目となります。

すでにJCLPに参加し、RE100の目標を掲げていた、リコー様、積水ハウス様からの勧めも、参加の意思決定の後押しとなりました。

 

●トップの想いが積極的な取り組みのきっかけになっていますね。

しかし、当時は経営会議でRE100やEV100への参加を申し入れてもなかなか理解を得られませんでした。参加による自社のメリット/デメリットや、2030年までのマイルストーン等を問われる中、経営会議での議論を重ねました。

現在は、電力会社のメニューから再エネの電力を選ぶこともできますが、当時はそうした選択肢もありません。自社で所有する物件もなく、太陽光発電等も設置できない中でどのように達成できるのか、また、EV100も加盟することにどの様な効果があるのかなどを問われました。

様々な意見がある中で、最終的には、当時の社長が参加の意思決定をしました。目標達成への選択肢や資金が少ない中でも、気候変動や地球温暖化を解決するために、まずは目標を設定して進めていこうという考えに基づいています。

 

●実際に、JCLPの本会員企業として参加していかがですか?

高いゴールと目標は異なることを学びました。高いゴールにどうやったらたどり着けるか、そのために、目標を常に階段状に作っていく、JCLPに参加することで、そうした考えが整理できたと感じています。また、こうしたイニシアティブに参加することで、自社取り組みの社内周知にもつながっていると思います。

 

●2030年 再エネ100%の目標達成に向けて、現在はどの様な進捗状況ですか?

2025年までの中間目標として、再エネ80%を達成しようとしています。現在、私たちの物流センターは全国に9箇所ありますが、2018年に導入した4拠点に加え、2020年8月には、さらに2拠点に再エネを本格的に導入したことにより、本社、物流センター、子会社を含め、グループ全体で再エネ34%を達成しました。

ここ3年で、電力供給者や需要家も含めて、市場は大きく変わってきています。新電力会社の再エネ電力のメニューも充実してきましたし、ブロックチェーンの様な新しいテクノロジーも登場しています。2030年までに、新しい技術や手法、様々な選択肢を組み合わせて目標を達成したいと思います。

一方で、EV100に関しては、日産自動車や三菱ふそうのEV商用車を導入していますが、EV率は数%に留まっています。原因は、ラストワンマイルに使用するEV商用車の選択肢は国内ではほとんどない、つまり、積載量や車格等、当社の配送に適したEVがないこと、そして、充電ステーションのインフラが整備されていないことが挙げられます。今は国内外の自動車メーカーや配送事業者との情報交換を通じて、当社の物流に適したEV商用車の調達を進めていきたいと考えています。

私たちの規模の会社がなぜ、その様な検討をできるかと言えば、EV100に参加し目標を宣言しているからだと考えています。私たちが何を目的に何をしようとしているのか、その考えを理解して頂くには、EV100への参加は、とても有利に働いています。

 

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●RE100、EV100の目標を掲げたことによる、ビジネス面での成果や機会創出はいかがですか?

投資家や社会から、当社のチャンレンジへの理解は少しずつ進んできていると感じています。気候変動対応の取り組みや情報開示も、CDPから最高評価の「気候変動Aリスト」企業の評価を頂きました。STB認定も受けていますし、TCFD提言への賛同も表明しています。目標達成と共に、ビジネス面でもチャンスに変えていけるよう、継続して取り組んでいます。そして、私たちの取り組みが、少しでもみなさんの参考になればと考えています。

しかし、対お客さまということでは、現状は明確な成果までは至っていません。私たちは、物流センターや配送まで含め、お客さまへの商品提供を再エネで実現したいと考えていますが、お客さまにとっては、化石燃料のエネルギーによって商品が届いても、商品自体の価値は変わりません。

一方で、ミレニアル世代と呼ばれる層を中心に価値観も変化し、生活も社会も変わってきています。商品やサービス以外の選択肢、つまり、気候変動対策を行うどの会社から買うのか、そうした社会がいずれ来ることを信じ、先駆けて行動していきたいと思っています。

 

●気候変動や環境配慮型商品への関心も高まってきていると思いますが、一般消費者とのコミュニケーションに関しては、どの様にお考えですか?

私たちアスクルにとっては、Webサイトとカタログがお客さまの接点となります。お客さまからの評価と口コミによって成長・進化してきました。また、これまで積極的な広告宣伝はしていませんでしたので、今後は、どうやってこうした取り組みを伝えていくのかは課題となっています。お客さまには、いかに環境に良い商品やサービスを提供することが重要であると考えていますが、利用して頂いた方々に加えて、当社の考え方を社会全体に知って頂くためのコミュニケーションも必要です。

また、私たちは非常に多くのサプライヤーと取引をしています。取扱う商品が同じものであれば、再エネの取り組みは差別化のチャンスになる可能性もあると考えています。サプライヤーと一緒に再エネに取り組む、価値観を共有する等、できることを考え、実行していきたいと思います。

そして、私たちは、気候変動に加えて、資源循環と責任ある調達を重視して取り組むことを掲げています。再エネに取り組むこと以外に、サプライチェーンを通じて持続可能な原材料の調達やエネルギーの削減をメーカーやサプライヤーと一緒に進めていきたいと思います。同じ志を持つ人がつながり、解決策を見つけていく、またそういった仲間をどうやって見つけ増やしていくのか、課題解決にはそれが大切だと考えています。

 

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●最後に、2030年の再エネ100%の社会に向けて、メッセージをお願いします。

気候変動は世界共通の課題です。すでに様々な取り組みをしていますが、まだまだできることはたくさんあります。環境に良い商品を扱うこと、そして、気候変動により自然災害も増えていますので、これからもサプライチェーンが分断しない様に商品をお届けすることを心掛けたいと思います。

また、RE100、EV100の宣言後、私たちも変わりましたし、社会も変わりました。高い目標設定をしたことは良かったと思っていますし、同じ志を持つ人たちと目標達成を信じて取り組んでいきます。

CO2ゼロチャレンジの目標を掲げることで、自社でできること、できないこと、そして、私たちの課題が可視化されたことが成果として挙げられます。皆さんも脱炭素に向けてチャレンジすることをおすすめします。

 

 

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萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社 メンバーズ
EF室 CSVデザイン
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員、環境エンジニア2級
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