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『地球に住めなくなる日 』 書籍紹介:事実を知り、気候変動を考える

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「人類を出現させ、文明と呼ばれるあらゆるものを世に送り出した気候システムはとても脆弱だ。たった一世代のあいだの人間の活動で、とたんに不安定になった。その責任が人類にあるとすれあば、元に戻す責任もあるはず。しかし私たちは、運転席に座ってハンドルを握っているにもかかわらず、責任を引きうけるどころか、そもそも責任があることすら認めようとしない。」(本書より)

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イーロン・マスクがスペースX社を創業し、火星への移住を目指すのは、「人類が地球に留まれば、人類が滅亡することは避けられず、他の惑星への移住が唯一の方法」だから。

温室効果ガス濃度の急激な上昇による世界的な温暖化と気候変動による大規模な森林火災や災害の頻発、甚大な環境破壊。そして、今まさに起きている未知なるウィルスの出現による世界的なパンデミック。イーロン・マスクが火星を目指す理由が、今まさに、現実のものになろうとしています。

 

今回紹介する書籍は、『地球に住めなくなる日「気候崩壊」の避けられない真実』は、IPCCが2018年には発表された、「1.5℃特別報告書」(リンク先:概要)の内容を今の地球上で起きている現状と共に伝え、気候崩壊がさらに進むことにより、私たちにどの様な影響が及ぶのかに言及した、海外の2019年ベストセラーリストにもランクインした一冊。

ニューヨークのジャーナリストによる、未来の地球を考える上では、絶望感に襲われる一冊でした。

「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2°Cより十分低く保つとともに、1.5°Cに抑える努力をする」というパリ協定が定める目標に向けて、温室効果ガスの排出量の急激な増加に歯止めはかかっているものの、目標達成には遠く及ばない現状であることを私たちは認識すること、そして、気候変動により、世界で今何が起きているのか、そして、何か行動を起こすために事実を知ることの重要性を改めて知ることになりました。

 

●抜本的な進展が見られない気候変動対策

気候変動、地球温暖化の影響と言えば、北極の氷が溶ける、海面が上昇する、サンゴが白化する等、日本の特に都市生活者にとっては、地球の裏側の遠い世界の様に思われがち。しかし、本書で示されるその影響の大きさを知れば、ショッキングな事実の数々に驚かされることでしょう。

本書では、気候変動による様々な影響を、熱波、飢餓、水没、森林火災、事前災害、水不足、大気汚染や気候戦争等の観点から、これでもかと言わんばかりに、今、地球上で起きていること、そして、様々な調査結果や有識者のコメントを紹介しています。

一人ひとりが考え、何か行動に移すためには、まずは事実を知ることの重要性を再認識しました。

  • 当時12歳だった、セヴァン・スズキさんのリオ地球サミットでの伝説のスピーチは、1992年
  • アル・ゴア元副大統領が映画「不都合な真実」を公開したのは、2006年
  • その約10年後の2015年に採択された、パリ協定とSDGs

持続可能な社会へのレールは敷かれ、過去何度か警鐘も鳴らされてきましたが、抜本的な転換がなされない温暖化対策。

<世界の二酸化炭素排出量の推移>

テキスト

全国地球温暖化防止活動推進センターWebサイトより

温暖化ガス削減でよく使われる、「産業革命以前と比べて」。産業各革命とは、18世紀半ばから19世紀と定義されていますが、過去に化石燃料を燃やし排出された温暖化ガスの半分は、ここ30年間によるもの。そして、未来へ託すバトンは、今の私たり世代がその責任を負っていることをもっと理解すべきでしょう。

 

●未知なるウイルスがなぜ蔓延したのか?

そして、気候変動による影響の一つに本書でも挙げられているのが、「感染症のグローバル化」。

温暖化により、病原菌を媒介する蚊の生息範囲が大幅に移動することにより、これまでの感染範囲と呼ばれるエリアが拡大したり、北極圏の氷に閉じ込められた病原菌が融解により大気中に出てくる事により、過去のウイルスの残党が蘇ったり・・、「過去の経験のない感染症が出現する可能性もある」と警鐘を鳴らすその内容は、まさに新型コロナウイルスにより、現実のものとなりました。

 

●事実を知り、思いを巡らす

コロナ禍の収束もままならないつい先日(2020.6.12)、環境省は、2020年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書で初めて「気候危機」という言葉を明記し、環境省として「気候危機宣言」を発表しました。

令和2年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(概要):環境省Webサイト

「気候危機」初めて記載 温暖化で災害深刻化―環境白書:時事ドットコムニュースより

日本政府が掲げる「2013年度比で、2030年までに温室効果ガス26%削減」の目標。来年に延期されたCOPで削減目標を引き上げられるのか?世界が注目しています。

 

また、今年1月に開催されたダボス会議での主要テーマは「資本主義の再定義」、そして、欧州各国では、コロナ後の社会を気候変動対策を中心に据え、ダメージを受けた経済活動と社会を復興するという、「グリーンリカバリー」という動きが加速しています。

今こそ、米国オバマ政権時代に提言された「グリーン・ニューディール」政策、つまり、温暖化対策による経済刺激策や、持続可能な社会の成長モデルが求められています。

民間企業の立場でできる事、私たち一人ひとりが普段の暮らしでできる事は何か?

本書では、具体的な解決策は示されていませんが、事実を知り、思いを巡らし、アクションのためのきっかけ作りの一冊をなると言えます。

 

最後に、少し長くなりますが、国立環境研究所 江守正多氏による、示唆に富んだ本書解説の一節を紹介しましょう。

「あなたも、たとえば、コンビニでレジ袋を断ることができます。これは、レジ袋1枚分のCO2を削減したいからだとすればとても効率が悪いことです。しかし、これを「私はプラスチックを大量消費する社会システムが好きではありません」と伝えるメッセージのひとつだと思うと、そのような人が多くなればコンビニ側の意識や取り組みも変わるかもしれません。そのように何かを動かすためのメッセージを発すると考えれば、自分の行動にレバレッジが効くような感覚がします。つまり、自分の行動は自分の生活から出るCO2を減らすだけでなく、システムの変化を促すことを通じて、もっとたくさんのCO2の削減につながっていると考えることができるのです。」(本書 解説より)

 

気候危機は未来のファンタジーではなく、今まさに起きている現在進行形のノンフィクション。

宇宙船地球号に乗り続けるのか?、スペースXが開発する最新鋭の宇宙船で火星を目指すのか?、今、私たちは問われています。

 

地球に住めなくなる日  「気候崩壊」の避けられない真実:NHK出版 Webサイト
[著] デイビッド・ウォレス・ウェルズ [訳] 藤井 留美

 

 

萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社エンゲージメント・ファースト(メンバーズグループ)
Chief Shared Value Officer
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員、環境エンジニア2級
『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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