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【セミナーレポート】世界のリーダー企業が実践するパーパス主導による経営/マーケティング-SDGsとマーケティング-#03

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メンバーズでは、企業のデジタルマーケティングご担当者さま向けに、最新事例やトレンドを盛り込んだ自社セミナーの開催や外部セミナーへの登壇を行っています。

2019年11月19日(火)に開催された「世界のリーダー企業が実践するパーパス主導による経営/マーケティング -SDGsとマーケティング-(https://marke.members.co.jp/20191119.html)」では、自社の存在意義(パーパス)を従業員や顧客などの関係者との共有の価値として明確化し、その価値に基づいた製品作り、コミュニケーション、教育を行う経営手法について、ご登壇いただきました。

第3部は、日本でのSDGs第一人者である株式会社Tree Chief Executive Officerの水野 雅弘氏と株式会社メンバーズ 執行役員 兼 株式会社エンゲージメント・ファースト Chief Executive Officerの原 裕に「SDGs」というソーシャルバリューを新たな指標に組み込んだマーケティングフレームワークと事例について語っていただきました。

自己紹介と我々のパーパスについて

原:おふたり(前パートを話した黒須さん、大柴さん)のお話、面白かったですね。ちょっと負けないように(笑)。お題を「マーケティングで地球を救えるか?」と少し大きくしましたけれど、やっぱり企業が変わっていかないっていうのは改めて痛感していまして。変わっていってほしいとは思いますが、国レベルに任していてもと。今日来ている企業のみなさんが実行していることもあるでしょうし、これから実行していかないとなかなか地球は後戻りできない、とどめることが難しい状態です。

今日は経営や新規事業というよりは、マーケティング視点でお話ししたいと思います。特にキーワードとしたいのは「SDGs」、それをどうやってマーケティングと絡めていくのかをお話ししたいです。まず、我々のパーパスというところで、自己紹介と合わせてお願いします。

水野氏:はじめまして。Treeの水野と申します。会社は実は31年になりまして、顧客マーケティングという、いわゆる顧客データを使ってマーケティングを推進することをきっかけに起業した会社です。自分自身、マスマーケティングにものすごく疑問がありまして。今だからこそ環境問題・資源問題がありますけれど、将来を考えると資源の問題やゴミの問題、特にここ最近出てきたプラスチックの問題にちゃんと企業が向き合っていくためにも、まずはダイレクトな事業を立ち上げようと、立ち上げたのが30年前です。

具体的には、コールセンターやCRMという仕組みを日本に持ってきて、マーケティングの推進をやってきました。2003年・2004年あたりに、ずっと大企業のサポートをしている中でちょっと疑問があって、顧客だけじゃなくて社会との信頼を作らないといけないなと、ちょうど15年前にESD(Education for Sustainable Development)の研究会を立ち上げました。まだ少し早かったんですけれど、社会とか環境とかをしっかりと捉えなければいけないと、サステナビリティの推進をずっとやっていました。

映像を作る会社はたくさんあるんですけれども、まず人に伝えるには動画というのは重要だろうと。2006年にイギリスのメディアと提携しまして、世の中に起きていることを千数百本にわたって伝えています。日本で起こっていることも伝えていこうとやってきたんですが、環境意識の高い方たちは映像を見るんですが、関心がない方は全く見ないんです。

環境メディアは成り立たないんだろうかと疑問に思っているときに、2015年にSDGsが採択されました。2006年あたりに提言してきたことは遅いのか、それとも今がチャンスととらえるのか。先ほど黒須さんもチャンスと捉えましたけれども、むしろ産業界が変わらなくてはいけないだろうとこういった事業に注力しました。

パーパスは何かと一言でいうのは難しいんですが、映像を通じながら小中高の特に高校生、若い世代の意識がものすごく高いと。これは、フィンランドやノルウェーといった北欧がSDGsの到達ランキングの上位に入ってきますけれど、20年前に教育の中でサステナビリティにしっかり注力してきたと。Treeのパーパスとしては、映像を通じた意識の変革。個人を含めた変革、マーケッターの方たちへの意識変革にかかわっていきたいと思っています。

原:水野さんは、放送作家もやっていたんですよね?

水野氏:はい(笑)。大学を卒業して。だから、マスマーケティングを疑問に思ったんです。

原:なるほど。ありがとうございます。「SDGs.TV」って是非ご存知の方が多いかもしれないですが、見ていただくと色んな映像が出ています。本を読むだけじゃなくて、SDGsを体感するために映像というのは、非常にパワフルだと思いますので見ていただければと。

私は、株式会社メンバーズの執行役員で、エンゲージメント・ファーストという会社を7年前につくって。メンバーズ自身がCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)という、ポーターが言った言葉で今はあまり使われていないですが好きな言葉でして。社会課題をビジネスで解決してサスティナブルな地球にしていこうと。これを我々はマーケティングでやろうとしています。

何故かというと、後で事例でもお話ししますが、消費者のニーズがそっちに行っているんですね。ちょっとした差別化とか値段とかマイル・ポイントが貯まるのがいい人も沢山いますけれど、消費者の意識がすごく変わって来ている中で、マーケティングが変わらなければいけないと思っています。難しいところもあるんですが、これは変えていかないといけないというミッション・パーパスがあって。

私も水野さんもマーケティングをやってきたんですが、マーケティングはどちらかというと地球の資源の消費を促進してきた流れがありまして。ちょっとそこの後ろめたさ、しかもバブルも経験していて。ちゃんとやらなきゃいけないなというところに、こうして若い人が言いだしていることにインスパイアされているという。

水野氏:マーケティングがこの数十年間に大量生産・大量消費、そして大量廃棄をしてきたなかで、特に日本はそれを繰り返してきた。SDGsがスタートして4年を過ぎましたけれど、マーケティングの側面からなかなか意見が出てこないんです。マーケターの役割が本当に問われる時代がやってきたんですが、今日はそんなテーマを掘り下げていきたいと思います。

原:調査したことはないですが、おそらくマーケターが1番SDGsを知らないと思います。これは、間違いないと思っていて。すごく重要なイニシアティブで、色んな部署の人がやりだしていますけれど、日本のマーケターは「SDGsってCSRのことでしょ」となってしまうんです。でも、実は消費者の課題、地球の課題をつかってビジネスチャンスがあるということを、皆さんに知っていただきたいなと。色々本も書き出しているんですけれど。

水野氏:背景をお伝えすると、気候変動サミットが5月にありまして、ここで1番インパクトがあったのは、ファイナンスなんですね。今までお金の流れによって、これだけの大量生産・大量消費を促してきたと。それを金額的に3700兆円以上を、気候変動含めた脱炭素化にむかって動いていこうと。これは、機関投資家だけではなく、銀行も保険もそうです。これだけの気候変動が起きているので、このお金が流れていく中でのマーケティングが果たす役割は非常に重要だなと。

原:そんな2人が30分、40分話します。パーパスというと、おふたり(前パートを話した黒須さん、大柴さん)にもお話しいただいたんですが、どういうことですかね?

パーパスとは何か?

水野氏:(前のパートで)素晴らしいお話をいただいたので(笑)。企業の中でも日本でも昔から、理念とかビジョン・ミッションというのがあり、これはトップの判断のもとで経営理念をもって、ミッションを共有して、企業における持続性を高めていくと。パーパスでは、客観的に見ていく視点が必要だろうと。日本語では、(パーパスのことを)存在意義と言いますけれど、外から見たときにどのような存在、役割、価値や機能を提供してくのか。外から見るとパーパスというのが自ずとはっきりしてくるんじゃないかなと思います。

原:私は今大手企業さんでワークショップをやっているんですが、何をやっているかというと、その企業の存在意義を関係者で話し合うワークショップをやっていて。意外と自分たちの存在、私たちは「WHY」と言っているんですけれど、存在意義(WHY)を考え直すとすごくポジティブな空気が流れ始めるんですね。

でもいいかえると、そこに貼ってある理念とかビジョンが腹落ちできていないと。先ほど黒須さんは横河電機では社員の腹落ちが出来ていると言うことでしたが、できていない企業が本当に多いんです。なので、理念などすばらしいものがあるのに腹落ちできていなくて、製品・サービス・CRMに落とすことが出来るわけがなくて。そうするとお客さんにも伝わっていないので、消費者が育ってきている中で、理念とかパーパスがお互いに共感していかないといけないと思っています。

黒須さんのように素晴らしい方が上にいらっしゃれば、浸透ができるんですけれども、大方の企業は役員たちも腹落ちが出来ていなくて、「パーパスは何ですか」と聞くと、「株主が…」と言っちゃうんです。そのことを消費者が知ったときに、その企業の製品を買うのかと。

今はソーシャルの時代で、そういったことが伝わるようになってきているので、我々メンバーズは企業の本当の存在意義(WHY)をお客さんと一緒に考えて、それをソーシャルメディアだったりのデジタルで伝えていこう、そういったマーケティングをやろうと思っています。けれど、肝心の存在意義(WHY)が出来上がっていないことがすごく多いんですね。

水野氏:ほとんどの従業員の方が、パーパスを聞くと答えられない。そして、パーパスとは違うんですが、会社としてどこにエンジンを持っていくのかというと、ツールとしてSDGsを見たときに、社会課題の現実を認識して初めて従業員の方の心が動くんですね。それと、チームとしていきなりイノベーションは起きないので、どんな原動力があるのかを知るためのひとつのフィルターとして、SDGsは有効であると、数多くのワークショップをやって痛感しています。

Apple・Microsoft・良品計画など各社のトップの考え

原:最近「パーパス経営」という言葉が出てきて、ハーバード・ビジネス・レビューも半年ほど前にパーパス特集をやりました。我々ふたりともApple大好き、スティーブ・ジョブズ大好きなのですが、彼が98年に「Think different」のキャンペーンをやったんです。会場にいらっしゃる方はご存知の方が多いかもしれないですね。

彼がクビになって戻ってきたときに、彼が最初に感じたのが「Appleが何なのかを人々は忘れていた」と。彼は創業者だったので、もちろん意思を持ってやっていたんですけれども。自分たちは何者なのか、何に価値を見出しているか分からなかったので、「Think different」という広告をやったんですね。それは、社員に向けての要素がすごく大きかったと。ちょっとご覧いただこうと思います。

https://youtu.be/W5GnNx9Uz-8

見ていただくと、Appleの商品は一切出てこないんですね。iPhoneもiMacもまだ出ていないときで、株価も本当に下がっていていたときに彼が戻ってきてこれをやったと。彼が言いたかったのは、クレイジーと言われている人たちが、世の中を変えていって、自分たちの価値観はそこにあるんだと。

Microsoftがこの4~5年で息を吹き返してきたように私は感じているのですが、彼はMicrosoftに20年以上いるインド出身の方で、3代目のCEOになり、「存在理由を再発見する必要があった」と本の中で書いています。お金で優秀な人はやってきたけれど、てんでばらばらのことをやっていたと。黒須さんの話でもありましたけれど、それぞれが色々なことをやっていると、やっぱりその企業のWHYが見えない。彼はそれを感じて、人間の未来に貢献できるような企業文化を作ることから始めたということです。それから、azureのクラウドが良くてAmazonを抜いたという話もあって、それとの相関性は分からないですけれど、彼はそういう経営のやり方をしたと。

それから、良品計画さんは我々メンバーズのお客さまで、金井会長はメンバーズの社外取締役もやっていただいているんですけれども、創業以来、「無印良品とはどういったものだろうか?」という問いに向き合い続けていると。彼らは、ホテルやったりキャンプ場を作ったり、家を建てたり、雑貨や食べ物をやったり、スーパーマーケットをやったりしているんですが、真ん中には「感じ良いくらし」をつくるということがあって。それを突き詰めると、こういったものが出ると。

ユニリーバは、サステナビリティにおいてリーダーシップを発揮していると思っているんですが。彼らは、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”にこそ、今後もユニリーバが企業として目指していくパーパスです」と。ビジネスも上げるけれども、サステナビリティも同じくらいビジネスマネージャーに(目標を)課して、両方を統合してやっています。

それから、ニーチェがいい言葉を言っていて、「自分の「なぜ」を知れば道が見える」と。存在意義を創業者は分かるんでしょうけど、なかなか従業員に伝わらないところをちゃんと伝えていくと。コンサルが作った理念・ビジョンを壁に貼るのではなくて、絶えずコミュニケーションしていく。(存在意義に)共感すれば、お客さんにも伝えようとなるので、どこまで共感できるかが大切ですね。

どうですか?偉人の言葉を聞いてみて。特にAppleなんかはすごく共感しますよね。

水野氏:プレゼンテーションの方法も、そこからガラッと変わりましたよね。

原:そうですね。パーパスみたいなことは、一見情緒的で感情的な話でエクセルで計算できないんだろうと思われるかもしれないんですが、実はそうではなくて。

心で満足するか、頭で満足するか

これ、ご存知の方いらっしゃいますか?「ヒューマン・シグマ」という本で2006年くらいに出ています。シックスシグマは、製品の品質をあげることですが、人間の品質はどういったもので出来ているのかという、非常に面白い本です。

私はもともとアメックスにいたんですが、アメックスはこれを採用してコールセンターの在り方を変えました。リサーチをやるんですが、被験者をよんで脳の動きをみながら、質問したときにどう動いているのかを調べたんですね。脳の動きとその人たちがどういうマーケティングに対しての活動が響いているのかという。

 

これは面白くてですね、銀行の例です。心で満足している人と頭で満足している人、いわゆる機能・ベネフィットの面でエンゲージメントしている人と、ハートでエンゲージメント出来ている人の違いですね。それを見ると、心で満足している人を見るとやめるのは3.8%なんですけれども、頭で満足している人は6%もやめるんです。驚くべきことに、不満足の人とそんなに変わらないんですね。でも、これって当たり前で、頭で満足している人は他にベネフィットがあったら、そっちに行ってしまうということなんですね。そういう人を追っかけていると、企業はやっぱりお金がかかりますよね。

それから、クレジットカード。これも同様で、頭で満足している人はこうです。不満足な人と変わらないくらいの利用額になっていると。なんとか心を満たそうと、マイレージやポイントを出したり、オファーをいっぱい出したり、無料にしますとかやるんですけれども、例えば楽天カードがパワフルな特典を出すと、みんなそちらへ行ってしまうんですよね。じゃあ、そうじゃないカード会社さんはどうするかというのを、我々もカード会社さんがお客さんにいるので、一緒にお話しています。特典ではないところというと、やっぱりパーパスになるのかなという話はしています。

コトラーのマーケティング3.0を読み解く

水野さんと私の大好きなコトラーのマーケティング3.0。ちょっとこの辺りについて、お話いただけますか?

水野氏:私も自分自身がマーケティングに深くかかわってきて、社会との信頼をどうやって作っていくのかという中では、「共創していく」というのが新しい価値であったり。顧客との共創していくというのを、マーケティング3.0でコトラーは提唱してましたけれど。

原:我々もこれにのってやってきた感じですよね。少し先を見ていたので、早すぎたということもありますが(笑)。

水野氏:マーケティング1.0のときは、極端に言えば、いかにその機能を説明するかというプロジェクトマーケティングです。マーケティング2.0では、顧客満足ということで、私もどっぷりと関わらせてもらって。先ほどもありましたけれど、心が動いているか・どれだけ腑に落ちているかを、2.0の時代でさえ、顧客と企業でしかなかったんですね。その先にあるのは、社会。そのあたりコトラーは、さすが10数年前に社会との信頼をベースによりよい社会をつくるためにマーケティングがあるんだと。その中で、企業の持続性と社会の持続性を高めていくと。成熟した生活者とありますけれど、本当に成熟しすぎてしまった。

原:我々がマーケティングにこだわっているのは、やっぱりプロダクトとか広告・コミュニケーションというのは影響力があるので、企業が主導でこういうことをやっていかないとなかなか変わらないというのはありますね。国に頼っていてもという。

水野氏:特にSDGsは、今までのNGOか産業界かという対立ではなくて、経済から変えていくことが軸になっている中では、これからの未来を考えたら間違いなくマーケティングは必要かと思います。

世代別の社会課題に対する考え方

原:マーケティングは顧客のニーズ、豊かな社会を創っていくなかで、顧客は変わってきています。特に欧米はそうですよね。Gretaさんのような若い世代、Z世代はより変わってきていますので、企業が変わらざるを得ないという側面もあるんですけれど。日本はなかなかここまで行っていないという感じもありまして。

水野氏:最近この年になって、高校生に会うことがあるんですけれども、中高生そして女子の意識がすごく変わっていますよね。少し前であったら、就職活動するときにサスティナブルレポートなどを読んで、恥じないように企業へ訪問していた。逆に10年後の2030年に就職する彼らは、来年の教科書からSDGsが入ってきて明確にサステナビリティを理解した上で、社会をどうするのか。その彼らが10年後就職するときに企業がどんなスタンスでのぞむのかは、今とても大切です。

自動化・AIなど仕事も変わっていくというのを、彼らは本能的に掴んでいるので、社会に自分たちがどうやって関わっていくのかを、今の中学生からとらえ始めたかと。10年後には大きく変わると思います。

原:マーケティングは顧客のニーズをやっているんですけど、いまだにあまり見ないテレビ広告をやったりだとか、こういう時代なのに顧客のニーズを満たしていないんですよね。顧客はもっと自分たちの世の中を良くしてほしいという関心があって。

我々が9月にやった調査ですが、ジェネレーション・ジェンダー別に1,000人くらいに聞いています。「社会課題に関心がありますか」という問いに対して、以前は20代が高かったんですけど、今回調べると30代~60代の関心が高まってきているんですね。20代はもともと高いんですけれども。

水野氏:10代を入れてほしかったですね(笑)。

原:10代を入れるとさらに変わってくると思いますね。40~60代もさすがにSDGsの話、気候変動の話は出てきていて、これやばいんじゃないかと思い始めている感じはしますね。ただ、30代はそれどころじゃないというのが表れています。しかし、いずれにしても関心は高まってきています。

欧米のようにミレニアム、Z世代だけが環境に意識があるかというとそうではない。特に、気候変動の影響で台風がすごいですよね。さすがに身近になってきているんじゃないかなと思います。

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マーケティングの話になると、「購入するうえで企業の考え方や姿勢はどのくらい重要ですか」と聞くと、どちらかというと重要であると回答した人は、40代や60代が高いですね。20代、30代はそこまで行っていないと。それから、女性が多いですね。自分たちがものすごく買い物する中に、食品とかもあるからでしょうね。

このあたりが我々がマーケティングにこだわっている理由で、おっしゃる通り10代を入れたらもっと変わると思います。

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水野氏:特に今年高校を卒業した18歳よりも若い人たちは、相当ちがうと思いますね。

原:水野さんはSDGsの動画コンテストをやっていらっしゃるじゃないですか?

水野氏:映像の力はやはり強いので、「SDGs.TV」を高校などで見てもらうことが多いんですね。でもそれでも足りないと。ですから、自ら作るという「SDGsクリエイティブアワード」というのを今年(2019年)の春開催してみたんです。そうしたら、157作品の内100本が中高生だったんです。彼らはデジタルネイティブを超えて動画ネイティブなので、スマホで動画を作ってエントリーしてくる。インプットだけでなくアウトプットするのが、ものすごく自然体なんですね。彼らが社会課題を認識したうえで、どう伝えていくのかというのは、とても競合する可能性は高いですね。

原:私は娘が中1なんですけれど、文化祭に行くとSDGsのイベントがあるんですよね。小学校のときもそういった話が入っていて。

水野氏:昔からエコ検定とかなんとか検定がいっぱいありましたけれど、それは知識としてあった。若い世代の彼らがちがうのは、知識ではないんです。アクションをどうしていくのかにかなり感性が響いているんです。

ですから、そのアクションとして映像で表現してくださいというコンテストだったんですが、本当に想像を超えていました。

原:これから企業を選ぶにしても、消費者として何か買うにしても、そこが重要になることがどうして分からないんだろうと思うくらいです(笑)。そこは、マーケターのこれからの課題だなと思います。

さっきの(大柴)ひさみさんの話で行くと、アメリカは分かっているわけですよね。経団連みたいなところもそういっているわけで。

大柴氏:まあ、どこまでやるかは。そこは、今のアメリカで言うと懐疑的。だからみんな実際の行動を見ていますよね。サインアップした企業が首尾一貫していないと必ずダブルスタンダードと言われてしまうので。

これからの経営者・マーケターは何のためにマーケティングをすべきか

原:今日のテーマの1つなんですけれども、これからの経営者・マーケターは何のためにマーケティングをすべきなのかと。コトラーは、マーケティング3.0のなかで「よりよい世の中にすること」と定義して、消費者の意識が変わってきて、単に良いものだけでは満足しなくなって、社会課題を考えざるを得ないわけですよね。

大柴氏:1つだけ、コトラーが4つのPという彼の有名な理論があるんだけど、2013年にインドのカンファレンスでもう1個追加するのは、「パーパス」と言っているのよ。

原:知りませんでした。ありがとうございます。すごく恥をかいた感じがしますけれども(笑)。

大柴氏:いやいや、親切ごごろだったのよ(笑)。

原:というくらい重要になっているというわけですね。地球が3つ必要になりますとか、WWFは2030年に地球が2つ必要ですと言っていると。日本人ってなにか自分ごとできていない節があるんですけど、「未来の年表」という一昨年に売れた本を見ると、日本は課題先進国なので、そこで解決できればそれを輸出できると言われています。 これらの課題を解決するのは、結構大変ですよね。水野さんは、和歌山や北海道に住まれていますが。

水野氏:いま北海道に住んでいますね。これが頭でわかっていても、働き方改革、外国人労働者、高齢化対策など地域の持続可能性って、地域の行政経営そのものが課題に直面して、今までの自治体だけではできない。

ですから、黒須さんのお話でもあった下川町は、今までも持続的な林業経営を目指してやってきたんですけど、多様な人たち、まさに横河電機さんたちと一緒に共同して、新しい技術を入れて住み続けられる街にしようとしていますよね。自治体も多様なパートナーシップを組んで進めるしかないなと。東京は分かりませんが。

原:先ほども言った通り、企業のワークショップをやっているんですが、テーマとして2030年にどういう企業になっていますかと。こういった年表を使いながらやるんですね。若い人は、年表に年齢を入れていくと、ど真ん中の世代だから、何とかしなきゃなと思うんですが。上の方になると、このあたりは死んじゃっているからいいやとなるかもしれないです(笑)。

ただ、メンバーズは若い社員がどんどん入ってきているので、彼らと一緒に(この年表を)どうしていこうかとやっていくと、言い方は悪いですが定着率がいいんですね。それから、いろんなアイデアも出ます。

例えば、2030年に東京郊外にもゴーストタウンが広がるといったときに、どうするかを一緒にアイデア出しすると、当たり前ですけど競合よりも何がいいとか、広告で何かやろうとはならないんですね。マーケティングでどういうことが出来るかをいつも話しているのですが、この年表をベースにやると、さすがにちょっと自分ごとになるかなと。

水野氏:そうですね。特に台風15号・19号を見るとやっぱり防災弱者、それから私は和歌山に直近住んでいましたけれど、本当に高齢化を迎えたときには、地方を中心に買い物難民と言われる人がいる。でもそのベースとしている熊野古道の保全とか地域集落の持続があってこそはじめて、世界に誇る世界遺産を維持できていると。ですから、観光の面においてもインフラの面においても、多様な企業や自治体が一緒に取り組む必要がありますよね。

今は北海道にいるんですが、2030年に107万人が75歳以上になるんですね。2040年には、北海道は500万人いますけれど、1/4が75歳以上。これでどうやって酪農や日本の食を支えている北海道がなりたつのかと。

原:SDGsが2015年に出てきたんですけれど、やっぱりこのままじゃいけないということで、ユニリーバとかP&Gは結構やっているんじゃないかと。

水野氏:そうですね、3年かけて一緒にやってきました。

原:社会課題っていっぱいある中で、この17個にまとめて、みんなで解決していこうということで。特徴的なのは、民間企業もちゃんと一緒にやろうということですね。

水野氏:SDGsの序文に、環境・社会・経済の調和と書いてあるんですが、基本的には統合ですよね。物ごとを考えて、短期的なリターンがあれば良かったものが、長期的に見て、自社の成長と社会の安定・最終的な環境の保全が同時にできないといけない。残された10年において、どう変革を成し遂げるかがSDGsだと理解しています。

原:会社のパーパスや存在意義が、お金儲けじゃなくて、やっぱり社会課題を解決しようというはずなんです。それが、壁に貼られているだけの言葉になったのを、これ(SDGs)が少し役に立つんですよね。思い出させたりきっかけとして。

水野氏:整理するのに、17個のゴールだけじゃなくて169個のターゲットを全部読み解くんですね。自社としてサプライチェーン別に考えて、じゃあ原料調達するとき、169個のうち何が自社と関係するかを考えるツールとして、ものすごくSGDsは使えるんです。ツールとは変な言い方ですよ、世界の目標で共通言語ではあるんですが。ただ、自社に対して、トランスレーションしていく必要があります。

特に来年からの10年というのは国連のサミットでもありましたが、ローカリゼーションが鍵になってきます。169個のKPIがあるんですけれど、それを自社や地域にどれだけ落とし込んでいくか。気候変動枠組条約などのように国が決めてトップダウンするんじゃなくて、地方などにゆだねていくというのがこのSDGsの特徴でもあります。

原:横河電機でいうと、このSDGsの扱いは社内でどうですか?

黒須氏:うちの社長が好きで、結構連呼していますね。もう1つ良かったのは、社外取締役にBtoCの方、ニチレイの元社長の浦野さんがいらして、BtoCの感性がものすごく高いと。我々はもともとやってはいたんだけど、感性が弱かったんですね。それが、浦野さんがいらっしゃって、これはバンバンやらないといけないし、まさに気候変動は起きたらガッと行くから、今からやっておいたほうが良いと今から3年前に言っていました。ちょうどSDGsが出だして、啓蒙が始まり、社員全員にまでいっているのかってのはあるんですが、少なくとも中期事業計画の中にはばっちりSDGsが入っていて。この(SDGsの)カラフルな絵というのはみんな見たことがあって、何かが起きているんだなと浸透しています。

原:そういった意味だと、分かりやすくてアイコンになっているんですかね。

黒須氏:そうですね。非常に分かりやすいですし、国を挙げただけじゃなくて世界中でこういうことが起きているぞと、良くも悪くもブーム的なものがあるっていうのはおそらく認知されただろうと。

SDGsとマーケティングはどう関係があるの?

原:次の話題なんですけれども、SDGsとマーケティングはどう関係があるの?という話です。

水野氏:先ほど4P、パーパスを加えて5Pというベースがずっと前に出てきたんですが、日本の場合はプロモーションやマス的なことが、マーケティングの位置づけだと。プロダクト・プライス・プレースメントが、あまり問われてこなかった感じがするんですけれど、どうですか?

原:そうですね。僕はアメックスにいて、プロモーションだけじゃなくてプロダクトを作ることも少し関与していて、マーケティングって4Pだよと言っても、どうしても広告・宣伝でマーケティングって意識がすごくて。宣伝部がマーケティング担っている企業さんが多かったんで、いやいやそうじゃないと思いながらも、ちょっとそういう流れがありましたね。

水野氏:特にプライスですよね。その部分に対してどう捉えてきたかというと、利益というものがあって視点がまずは軸で。もちろんそれは大切なんですけれど、だったからこそ児童労働や格差といった不公平な問題が起きて、公平な社会につながらなかった。マーケティングの責務ではあるんですね。

原:じゃあそのマーケティングをどう絡めるのかというところで、1月くらいに公開しようと思っているんですが、特別公開で。ここに4Pがあって、実はベースにパーパスがあって。

大柴氏:コトラーはもう言っているよ(笑)。

水野氏:1つのキーは、具体的にコトラーの3.0を実施していこうと。SDGsを169個のターゲットや17個のゴールではなくて、基本原則5つのP(People・Planet・Peace・ Prosperity・Partnership)で見ていくんですね。こうした5つのPからみて、5×4のマトリクスで捉えていくと、自分たちの4P(Product・Price・Placement・Promotion)のやり方を、はっきりとマーケターが問いただしていける。そんなフレームワークを作っていくべきではないかということで、この1年間原さんと議論をしてきて、来春発表するんですけれども。

原:このSDGsのもとになった5Pというのを解説いただけますか?

水野氏:はい。皆さんご存知のとおり、SDGsのゴールには色々な考え方がありますけれど、基本は自然資本のいわゆる環境にかかわる世界の上に、はじめて社会が成り立っていると。その上に経済。これをつないでいるのが、バウムクーヘン的な「ウェディングケーキ」と呼ばれるSDGsの概念です。

それを繋いでいるなかでは、すべてのPeople(人間)の人権が尊重されて、特に先ほどジェンダーの話もありましたけれど、ジャンダー平等もきちんと達成し、健康的な生活を保障していくものがあった上で、各ゴールやターゲットが決まります。

Planet(地球)は、言うまでもなく気候変動が、特にゴール12(目標 12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する)にあるマーケティングにとても深く関係してくる生産と消費。先ほど、WWFも言っていた地球が2個3個ないといけないと言う、いわゆる日本やアメリカ含めた先進国と同じように捉えているともう持たないと。地球の破壊を守るというのが原則に入っています。

Peace(平和)というのは、なかなかマーケティングに関わってこないんですが、今まさにPeaceから見たときにどういったモノ作りが関係してくるのか。そして、Priceに関しても平和な産業を促進するためにどう価格に反映しているのか。

Prosperity(豊かさ)は、「豊か」という定義自体がこれから変わってきます。なので、「People(人間)」の項目とも近いですが。今までは物質社会でものをたくさん持つこと・便利であることを追及してきて、モノを売ってきたわけですけれど、本当の

心の豊かさはパーパスの時代に入ってきたり、特にgretaさん世代になると、自分がものを持つことを超えた中の豊かさが定義されたのがこの項目です。

最後がPartnership(パートナーシップ)。これは、1社だけでは解決できません。自治体や企業や教育機関の連携の話をしましたけど、複雑化した問題を解決するためには、先進国だけがとか、途上国を支援していくとかではなくて、すべての国や自治体や市民や市民組織が一体となって解決していく。その中で、マーケティングの4Pを取り入れるとどうなるのかというのをプロットしています。

原:その土台になるのが、今日のお題の「パーパス」かと思っています。パーパスがないとそれぞれが独立してしまうんですが、これがあるとマトリクスにできるなと。作ってみて、シンプルなんですけど今後マーケティングを考えていくときに、この軸を考える企業と考えない企業、4Pだけやっている企業、色々あると思いますが、ちゃんと行動しなきゃとだめだなと言っているところです。

水野氏:(大柴さんが)お話していたジェンダーの話も全部このマトリクスに入ってくると思うんですね。インクルーシブな社会をつくっていくのに対して、労働環境がどうなのか。そこをや捉えたうえでマーケティングをしながら、顧客との対話を続けていく中には、こうしたマーケターの方に投げかけていくひとつのヒントになればなと思っています。

登壇者2人が注目する取り組み事例

原:今日はすべての事例はお見せできないのですが、すごくローカルな事例で(笑)。

水野氏:北海道に中標津という小さな町があります。そこにある東武というスーパーは、量り売りもしていますし、なるべくオーガニックなものを売ろうとしています。けれど、ホールフーズと比べ物になりません。

けれど、とても感動したのはすべてのポップが、スーパーが地域の健康について考えている。私は東武の社長とお会いしたことはありませんけれども、恐らくここは地域の健康を守るのはスーパーの役割なんだと思っているのでは。その上で、地産地消のものを取り入れていますよと。びっくりしたのは、ポップというのは安いとか特売とか新商品を訴求しますが、「テレビを見ながらの食事はやめよう」と子供や地域の健康、農家のことを考えるようなポップが全部なんです。

これも結構驚いたのですが、ビールとか売りながら「わんにゃんレスキュー」という話があったりだとか。地域のスーパーの役割というのは、まさに健康を考えなくちゃなりませんし、フードマイレージの低いもの・地産地消を応援していくと。それと同時に、子供やお取り寄りの健康を考えたうえで、売り方やそこに来るときにどんな気付きを与えるか。これは、大きなマーケティングのヒントだと思いますね。とってもローカルな話ですけれど。

原:逆に大企業に勝つにはこういったことをしないとですよね。

水野氏:そうですね。生協がオーガニックに力をいれたり、石川県もオーガニックに変えていこうとしています。とはいえ90%以上は、食料の安全性が問われていますのでね。

原:さっきのマトリクスごとにいろんな事例を埋めていっているんですね。1月にはそれを公開しようと思うんですが。あのマトリクスで見ると、いいマーケティングをやっているところとそうじゃないところが、凄くわかるんですね。これどこにでも当てはまらないよねという事例は縦軸だけでやっていると。横軸に何か絡んでいる事例を見ると、すごく共感性もあります。

たとえば、FREITAGというカバンをご存知ですかね?スイスのメーカーなんですが、トラックの幌を切って洗って、カバンにしているんですね。だから、1点ものなんですけれども、これをスイスのデザイナーが作り出して、今すごく流行っている。ちょっと高くて。安くすることも出来ると思うんですが、資材を移動することでCO2を出してしまうんで、スイスで作り続けているらしいです。

大柴氏:物欲があるからね、あなた。所有ばかりしないように(笑)。

水野氏:ぼくも自慢していいですか。獣害って日本の森林問題でものすごく多く聞きます。食の世界ではジビエという形で出てきますけれど、捨ててしまうのはもったいないということで、財布とかを和歌山ブランドとして、オリジナルで作っていただいています。

原:ちょうどひさみさんがFacebookで「日本の友達は物欲がありすぎる」と、このカバンを買ったばっかりだったんで(笑)。

大柴氏:べつにあなたを想定したわけじゃないんだけど、物にこだわりすぎているというのはあるよね。

原:すみません(笑)。

大柴氏:それはそれでいいんですけどね。そこにreason-whyがあって、なぜそれを買ったか。原さんがそのコンセプトをみんなに言いたいから買ったんだろうと。それはサステナビリティを支援するという、だからそのストーリーをちゃんと書かないとダメよ。形がいいとか、1点ものとかじゃなくてね(笑)。

原:たまたまそのストーリーをシェアしている友人がいて、空港を歩いていたら見つけちゃったんですね。ストーリーを買いました(笑)。

では、そろそろ時間なのでまとめに。

VOLVOのVisin2020っていうのはもう終わっちゃうんですけれども、彼らが2006年、不況に陥ったときに、2020年までに新しいVOLVO車による死亡者や重傷者をゼロにするとコミットメントして、彼らは自動車メーカーから安全な社会をつくる企業へ変貌するということをやりました。それから、Visin2030を発表していて、2030年までに電気自動車を半分にするとチャレンジなことをやっています。要するに、ビジョンにちゃんとそういったことが反映されて行動が出来ているかどうかはすごく問われる中で、これなんかもマーケティングメッセージのとして動画も素晴らしいのです。時間がなくなってしまったのでお見せできないですが。

こちらより動画をご覧いただけます>

今日はいろんな企業の方が来られていますけれども、パーパスドリブンなマーケティングですこしでも世の中を良くできればなと。そのための色々なお手伝いをしたいと思います。

以上でパネルディスカッションを終わりにします。ありがとうございました。

 

セミナーレポートの第3部をお送りしました。

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■セミナーレポート執筆■
鈴木 萌果
2015年入社。ソーシャルメディア運用・広告ディレクション業務を経験し、現在はEMC推進室 広報・マーケティンググループに所属。メンバーズのサービス・取り組みを伝えるべく、コラムをはじめ様々な書き物を担当。