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SDGs 「目標13:気候変動対策」:「地球温暖化は解決できるのか」 ブックレビューを通して考える

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今世界を動かす最も中心にいる人たちが、低炭素・脱炭素行動に意欲を燃やしているのです。皆さんもこの将来性のある低炭素競争に参加しませんか?そこに向かって世界のお金が動き、人が集まり、技術が進み、ダイナミックに社会が変わりつつあります。(「地球温暖化は解決できるのか」 より)

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●気温上昇を何℃にとどめるか?

本書のタイトルになっている「地球温暖化は解決できるのか?」という問い。私たち人類は、上昇トレンドにある気温をこれから先、何℃にとどめ、この先、温暖化は解決できるのか?

このままでは、100年後には地球の平均気温は4℃を超えてしまう。そして、最も気温上昇を抑えることが出来ても2℃程度の上昇は避けられないというのが、本書の内容。つまり、地球温暖化はもはや避けられない事態で、その状況を温暖化対策により、2℃未満の気温上昇に抑えるのか、それとも、今のライフスタイルを続けて4℃上昇する世界を受け入れるのか・・・

一般的な肌感覚として、気温が2、3℃上がっても問題ないじゃないかと思われがちですが、これはあくまで世界の平均気温。今から1万5000年前の氷期の平均気温は、現在の平均気温よりもたった4度から7度低かっただけであることがわかっています。つまり平均気温が5度違うならば氷期になるような大きな変化を地球上にもたらすということ。

しかも、こうした5℃程度の変化でも、これまでは、1万年以上も時間を要したもの。現在のトレンドは、産業革命以降のわずか200年余りで、平均気温が数℃も上昇するという、これまでにない変化を地球に及ぼしているということを理解すべきでしょう。

パリ協定で掲げられた1.5℃の上昇に抑えるのか、2℃以上の上昇を受け入れるのか?ここ数年が勝負との研究者の発信も最近では耳にする様になりました。

気温上昇が、私たちの生活や地球環境にどんな影響を与えるのかは、海面上昇や生態系、社会・経済の観点から、本書と併せて、環境省の資料を読むことで理解も深まるでしょう。

環境省 IPCC「1.5℃特別報告書」概要(2019年7月版)

 

●小説にも勝るノンフィクションのストーリー

パリ協定が画期的なのは、先進国や開発途上国、全ての参加国にCO2排出削減の努力を求める枠組みであること。そして、本書の一番の醍醐味は、2015年 パリ協定の現場に立ち会った著者ならではの臨場感あるストーリー。採択に至るまでの各国間の交渉のプロセスが詳しく書かれていることでしょう。

冒頭で述べた気温上昇を2℃未満に抑えること、それを長期目標として世界の国々全てが初めて合意できたのがパリ協定。温暖化対策の国際会議では、先進国と開発途上国の対立というこれまでの構図が、パリ協定では、温暖化対策の積極派と消極派との対立に変わったこと。

その変化の原動力になったのは、最も開発が遅れているグループに属するアフリカ各国やツバルやグレナダ等が属する島国連合。つまり、気候変動により、最も被害を被る貧困層を多く抱えるエリアであったり、海面上昇により、国そのものの存続が危ぶまれる島国。こうしたグループが、経済成長を優先させたい中国やインド等に呼びかけ・・・

温暖化対策に向けた各国の駆け引きと交渉、読み応えあるストーリーが展開されます。

 

●民間による温暖化対策のアクション

今まさに海外では、地球温暖化対策に向け、NGOや民間企業を中心にその動きが加速化し、本書でもそれらアクションが紹介されています。

国連のWebサイトにそのプラットフォームが構築されている「NAZCA」。現時点で、企業や自治体、地域等が自ら、温暖化対策へのアクションやコミットメントを登録しています。ぞの数は、全世界で2万件近くにも上ります。

また、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する、UKで立ち上げられたイニシアティブ RE100

RE100加盟企業は、2019年5月現在、175の企業が参加し、日本企業は19社(リコー、イオン、アスクル、積水ハウス、大和ハウス、電通イージス・ネットワーク、富士フイルムホールディングス、富士通、ソニー、丸井グループ、城南信用金庫、戸田建設、野村総合研究所、ワタミ、エンビプロ・ホールディングス、芙蓉総合リース、大東建託、東急不動産)が参加。その参加数は年々増えています。

また、日本に必要な政策として本書でも提言しているのが、炭素税や排出権取引制度の導入。炭素税導入には既に経団連を始めとする産業界の団体が反対を表明し、温暖化対策に消極的で、未だに石炭の火力発電所建設が積極的に進められている日本。日本企業はこうしたアメリカの先進企業に追随し、現政権に反対の立場をとり、パリ協定の目標達成に向けて主導権をとることが出来るのか?

こうした中、この5月には、アメリカで、産業界による大きな動きがありました。

グローバル企業75社、米連邦議員にカーボンプライシング導入を要求。気候変動政策強化

ナイキやマイクロソフト、ユニリーバ等の世界を代表する企業75社が連携し、アメリカ議会にカーボンプライシング、つまり、排出した二酸化炭素に価格を付けることや気候関連法成立を求める声明を議会に提出しています。

パリ協定 脱退を表明しているトランプ政権下でも、短期的にはコスト増にならざるを得ない炭素税の導入をも後押しするアメリカの先進企業。日本の産業界は追随できるのか?

今、世界が注目していると言えます。

 

●WWFのユニークなキャンペーン

最後に、本書とは無関係ですが、今年のアースアワーで大成功を収めたユニークな温暖化防止キャンペーンを紹介しましょう。

アース・アワーとは、WWFによる国際的なキャンペーンで、3月の最終土曜日の夜の1時間、電気を使わないイベント。

今年、WWFはロシアで、ネットがオフラインの状態でのみ、そのページを見ることができるキャンペーンを実施。サイトに特殊なスクリプトが組み込まれ、ネットがつながっていないとコンテンツが表示される仕組みの様ですが、なんと、ロシア国内のネットユーザーの約1/3、2,700万人以上がこのサイトにアクセスしたそうです。

Detox Hour (Earth Hour) for WWF Russia by 24ttl

テキスト
地球温暖化や気候変動を社会課題として一人ひとりに知らしめること、アースアワーにちなんだ電力消費の抑制にも繋がるベストプラクティスと言えるキャンペーンと言えるでしょう。

 

ジュニア新書と侮るなかれ、WWFの気候変動・エネルギープロジェクトリーダーによる地球温暖化の現状や対策を知るためのおススメの一冊でした。

地球温暖化は解決できるのか
パリ協定から未来へ!
岩波ジュニア新書 小西 雅子 著

※本コンテンツは、はてなBlog:Marketing They Are a-Changin’  投稿コンテンツを追記修正して掲載しました。

 

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執筆

萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社エンゲージメント・ファースト(メンバーズグループ)
Chief Shared Value Officer
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降、Green TV Japanの立上げ・運営に従事。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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