皆さんはSNSを利用していますか?
いまやインターネットの利用率はテレビを上回り、SNSの浸透はその一因となっているのではないでしょうか。
企業もSNSアカウントを持つことが当たり前の時代となっており、一個人でもSNSをビジネス目的で利用している方々も少なくありません。
SNSをマーケティングで利用するにあたり、もっとも価値があるものの一つと言えるのが「ユーザーの声」です。
今回このコラムでは、SNSを利用して「ユーザーの声」を収集して運用に生かしていく手段であるソーシャルリスニングをご紹介します。
ソーシャルリスニングとは
そもそもどういうことなのか
ソーシャルリスニングとはつまり、ソーシャルメディア上に投稿される「ユーザーの声」を収集、分析することです。
ユーザーの声とは、SNS上で発信されている皆さんの投稿、たとえば、「〇〇おいしい!」「今日は〇〇に行った」などのつぶやきのことです。
ソーシャルリスニングとはそれらの収集、分析を通して、トレンドのリサーチやユーザーインサイトの把握、競合調査やインフルエンサーの把握を行うことを指します。
ソーシャルリスニングのメリット
近年は「消費者目線のマーケティング」が重視されてきていますが、これまでのアンケートによってユーザーの声を集めるなどの方法は回答者が
「意識的に」アウトプットしたものであったり、インセンティブの有無で大きく回答数に影響したり、リアルタイム性に欠けていたりと、
なかなかユーザーの「今」を把握する自然なインサイトを汲み取ることは難しい状況にありました。
この課題を解決しうるのがSNSであり、ソーシャルリスニングです。
ソーシャルリスニングであれば、ユーザーが「匿名性を持ってつぶやいている」内容からよりユーザーの自然な声の分析を行うことができ、
アンケートと比較しても情報のボリューム、リアルタイム性という点で大きく有利に働きます。
ソーシャルリスニングのデメリット
どれだけ便利な手段であってもデメリットは存在します。
ソーシャルリスニングにおけるデメリットは、「情報量が膨大であり、精査が難しい」という点です。
例えば、自社が新しく販売した食品についてのポジティブな意見を収集したいとします。
食品に対するポジティブな意見、と言われて出てくる言葉はやはり「おいしい」といったような言葉だと思います。
しかしソーシャルメディア上に投稿される内容は、日常会話で使われるような「話し言葉」での投稿が多く、単に「おいしい」という言葉だけで
調査をしたのではその全てを収集することはほぼ不可能に等しいのではないでしょうか。
今回の場合であれば他には、「うまい」、「好き」など様々な表現ができるように、ソーシャルリスニングを行う際に難しいのは、
「同音異義語や、それと反対に、同じ意味で表現が多岐にわたる言葉の精査が必要」という点です。
ソーシャルリスニングのはじめかた
さて、ソーシャルリスニングのメリット・デメリットをご説明したところで、具体的にどのように実施していくのかを説明していきます。
ソーシャルリスニングは大きく、
- ソーシャルリスニングを通して導き出したいことの決定
- 分析対象の定義
- 情報収集・分析
という3つのステップで行っていきます。
1.ソーシャルリスニングを通して導き出したいことの決定
まずは何について調べ、分析したいのかを決定。
ソーシャルリスニングを実施して、「明らかにしたいこと」を明文化します。
自社の評判、競合の評価、特定のサービスに対しての口コミ、新商品への反応など、
ソーシャルメディアの利用が進む現在であれば、望む情報を収集することはそう難しいことではありません。
ここで問題となるのが、その情報が果たしてSNSを用いて分析すべき情報なのか、そもそも分析を行えるだけの情報量が揃っているのか、
というところでしょう。
ここでの決定がしっかりとなされなければ、分析対象となるキーワードの精査にも影響してくるので、時間をかけてじっくりと行うのがポイントです。
2.分析対象の定義
目的が固まった段階で、それを達成するための情報を収集、分析していく対象を定義していきます。
決定した「収集したい情報」を集められそうなキーワードを設定していきます。
「収集したい情報」が、自社のサービスへの口コミだとしたら、まず必須となるキーワードはその「サービス名」です。
そして、サービスに対してどんな意見を収集したいのかを設定していきます。
ポジティブな意見だとしたら「便利」、「好き」、「助かる」など、そのサービスを利用して良かったと思っているユーザーから
挙がりそうなキーワードを設定します。
ここで大切なのは、「どんな意見」を収集したいのかを決めて調査を行っていくことです。
自社サービスへの言及数を調査したい場合にはそこまで設定する必要はありませんが、定性的な内容にも踏み込んで分析を実施していく場合は、
ある程度のセグメントに分けて収集を行うのがよいでしょう。
キーワード例
ポジティブな言葉 | ネガティブな言葉 |
---|---|
好き | 嫌い |
便利 | 不便 |
良い | 悪い |
3.情報収集・分析
最後に、実際に情報収集を行い、その分析を行っていきます。
分析の進め方は様々ですが、例えば
①カテゴリごとにユーザーの声を分類
②ポジティブ/ネガティブ/ニュートラルに分類
③カテゴリごとにセンチメント(ポジネガ)の比率の把握や、細かい意見、内容を見ていく
という流れで分析を進めていく方法もあります。
この流れで分析を行った場合、特定の商品やサービスに対して、ユーザーのどのような意見が多かったのか。
また、その具体的な内容を見ていくことができ、その声に対してどう対応していくべきかまでを考えることができます。
「定量的」な観点からのみ分析を行うのでは、せっかく収集したリアルタイムな「ユーザーの声」を活かすことができず、
また「定性的」な観点からのみ分析を行うのではその情報のボリュームを活かすことができません。
収集した情報に対して「定量」、「定性」の両面から分析を実施することが大事です。
事例紹介
さて、ここまでソーシャルリスニングの使い方やメリット、デメリットなどをご説明してきましたが、
最後にソーシャルリスニングを用いた2件の事例をご紹介します。
「東急ハンズ」
視覚過敏の女子高生の、「目に優しいグリーンノートを作って欲しい」というツイートを東急ハンズTwitterアカウントの担当者が発見。
当ツイートには3万件を超えるいいねが付き、「自分も似た症状で困っている」、「視覚過敏ではないが、こっちの方が目に優しそうだから使ってみよう」などのコメントが寄せられ、多くのユーザーのニーズが顕在化されました。
ツイートから5日後には実店舗での販売を開始、ツイートを行った女子高生には直接取り扱いを開始することを返信し、
感謝と購入の意思が伝えられました。
担当者は、「フォロワーはハンズのスタイルをよく理解しているため、的確な情報を提供してくれる。Twitterでは突然このような波が起きるので、
すぐ対応できるよう常にアンテナを張っていきたい」として、Twitterを通じたマーケティングの重要性を述べていました。
グリーンノートへの反響は大きく、19年8月5日には累計販売数が約4150冊を突破しており、1人のユーザーの声によって潜在的なニーズが見出され
販売促進につながった好例となりました。
参考サイト:女子高生のツイートが発端、ハンズで4000冊売れた緑のノート
「eneloop」
充電式電池のブランド。競合に「DURACELL」と「Energizer」というブランドがあります。
ソーシャルリスニングツールを利用して、eneloopが2017年度に行ったFacebook投稿の中で最もエンゲージメントの高かったものと、
競合他社の投稿を比較しました。
結果は以下の通りでした。
eneloop | DURACELL | Energizer | |
---|---|---|---|
シェア数 | 18 | 70,000 | 19 |
リアクション | 197 | 1,000,000 | 12,775 |
コメント件数 | 187 | – | – |
eneloopの投稿はシェア数が18、リアクションは197件、コメントが187件。
対してEnergizerはシェア数こそ19でしたが、リアクションは12,775件。
ただし得られているコメントは圧倒的に少なく、コメント件数の点においては優位に立てているのでは、という報告があったそうです。
DURACELLはすべての国のFacebookを一つに統括していることもあり、リアクション数は100万を超え、シェア数も7万回を超えていました。
すべての国のFacebookを一つに統括しているとはいえ、7万回もシェアされているDURACELLの投稿を見て、
eneloop担当者は「学ぶ点がたいへん多かった」と述べており、自身のコンテンツがどのように、どれだけ評価されているのかが明確になっていました。
参考サイト:失敗しないSNSマーケティングは、まず目的の再確認から Meltwaterが提供する“メディアインテリジェンス”の価値
今回はソーシャルリスニングを用いて、「ユーザーの声」からヒット商品を生み出した事例と、
エンゲージメント数の比較を行った事例の2つをご紹介しました。
このように、「ソーシャルリスニング」と言ってもその使い方は幅広く、単に口コミ調査を行うだけでなく競合他社との比較を行ったり、
影響力のあるユーザーを見つけたりといった様々なことに活用できます。
今後もソーシャルリスニングを実際に利用して、口コミ調査などを行う際のポイントや活用事例をご紹介していきたいと思います。
最後まで閲覧いただき、ありがとうございました。
■コラム執筆者
- 阿部竜士 (あべりゅうじ)
- 2019年入社。第2ビジネスユニット アカウントサービス第3ユニットに所属し、SNS運用を支援。趣味はTRPG。うさぎが大好き。
カテゴリ: SNS, ソーシャルリスニング, マーケティング
2019年09月25日