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中国デジタル体験記 第1回
キャッシュレス先進国では現金がいらない!?

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您好!メンバーズで東アジア担当をしている神尾(かみお)と申します。
ステレオタイプな始まり方ですみません(汗)。とあるクライアント様のデジタルを活用したコミュニケーションの支援をする事になった事がきっかけで、今年の1月から中国上海に赴く機会が増えました。気がつけば早9ヶ月。

中国デジタル体験記1-2上海市静安寺駅付近

最近では、日本の著名なコンサルティングファームから中国先進企業の事例を綴ったビジネス書が出版されヒットしていたり、デジタルマーケティングを扱う有力メディアでもアリババやテンセントなどプラットフォーマーの動向を追った中国のデジタル最新情報を目にすることが増えました。注目度の高さを感じます。
このコラムでは、一定の中国デジタル事情が知られているという前提で、私自身が仕事を通じて、または生活者として過ごす中で感じたことに主眼を置いてお伝えできたらと思っています。
そしてそれが、日本から海外を見ているデジタルマーケティング/Webサイト・SNSの運営に携わる方々に情報としてだけでなく少しの実感を伴う助けになれば嬉しいと思っていますし、実際に体感しに行こう!というきっかけにもなったら尚嬉しいです。
月1回のペースで更新していきたいと思いますので、気楽に目を通していただけたら幸いです。

では、初回の今回はキャッシュレス・モバイルペイメントについて取り上げたいと思います!

目次
1.中国のキャッシュレス事情
2.日本との違いは?
3.便利なことばかり!?
4.まとめ

中国のキャッシュレス事情

「中国に行ってるんです」と同僚やお客様に話すと「スマホで決済できて、現金いらないんだってね」というようなコメントが大体最初に返って来ます。
キャッシュレス先進国、モバイル大国のイメージがすっかり定着しているのだなあと感じます。
私も渡航する際に、最初に気になったことはお金をどう用意していくのかということでしたので、実際のところどうなの?ということを紹介したいと思います。
(尚、私の体験は主に上海とその周辺地域になりますので、地域によってはもちろん違う場合もあるでしょうから、その理解の元で読み進めて頂けたら幸いです)

結論から言うと、もう日本からは想像できないくらい現金がいらない世界があります!
上海浦東国際空港から市街地へアクセスするリニアモーターカー(上海磁浮:通称マグレブ)や地下鉄、飲食店からコンビニといったあらゆるところで、スマホからQRコードをかざすだけで購入や決済が完了します。便利です。

 

リニアモーターカーマグレブのチケット売場。使えるサービスのサインがあります。
店舗のQR対応レジ

店頭の無人レジではこのようにQRコードを読み取らせます。

これらはほんの一例ですが、こんな感じで使えないところはほぼ無い印象です。
雨が急に降り出したある日(上海ではあるあるです)のこと、地下鉄駅から地上に上がろうとしたら、傘を売る人(多分こちらも急に現れた)が出口で待ち構えてたので傘を持たない私はつい購入したのですが、お店の人が首からQRコードをぶら下げていて「ここここ」と指差してきました。
「えっここでも!?」とちょっと驚いたことを覚えています。

中国デジタル体験記1-5

急に出現した傘の露店でも使える

そんな普及状況ではありますが、データで見るとどうなのか。いろいろな所から数字は出ていますが、ここでは中国互連網絡信息中心(CNNIC)という行政機関から公表されている2019年6月のデータから引用※1します。
この発表によるとオンライン決済利用者が約6.3億人で、インターネットユーザーの75%近くが利用し、その内の約98%がモバイル決済ユーザーだそうです。つまり大体6.2億人が使っています。
そして更にその内の8割のシェアが、アリババ系のアリペイ(支付宝)とテンセント系のWeChatペイ(微信支付)という2つのサービスで占められていると書かれています。

※1 出典:CNNIC:我国网络支付用户规模达6.33亿 手机支付占比超98% (2019年 9月3日付け 新鲜事热态-今日头条 )

感覚値で言ってもこの2つのサービスのどちらも使えないところは、ほとんど見たことがありません。
大体の人がこの両方のサービスを使えるようにしているので、最低どちらかが対応されていれば問題ないのです。で、恐らくこの2強に続くのがApplePayや銀聯カード(デビットカード)辺りになるのだと思いますが、使っている人を目にする事が少ない印象です。
つまり中国のモバイル決済といえば現時点では、アリペイとWeChatペイの事を指していると言っていいと思います。

WeChatペイのキャプチャ

WeChatペイで支払いに利用するQRコード画面(セキュリティの観点からぼかしを入れてます)

 

<余談>

上海市はアリババのお膝元である杭州に近いこともあって、たまにWeChatペイが使えないお店が存在します(アリババ・テンセントの2強はライバル関係バチバチなのでそういう事があります)。
居酒屋チェーンでその場面に遭遇した時に、当時アリペイが使えない・現金の手持ちが全然無い私達一行はめちゃくちゃ焦りました。ではどうしたか?
店員さんが「自分のWeChatペイのアカウントに送金して」とのこと。
私→店員さんの個人WeChatペイアカウントへ送金→店員さんがお店にアリペイで支払い、で完了。ここには送金の便利さが利いているんですが、ちょっと日本人の感覚では無い?解決方法だなあと印象に残ったエピソードです。

日本との違いは?

日本でも昨年辺りからPayPayやLINEPayなどネット系事業会社から生まれたサービスがCMやキャンペーンで話題になっていますし、良くないニュースもありましたがコンビニ各社も○○○ペイというサービスを始め、モバイル決済・QRコード決済の認知度が一気に高まった印象があります。それでもまだ1割程度の普及率とも聞きますので、中国のそれには遠く及ばない状況であることが分かりますね。
この違いがどこから来るかという点については、色々な要因があって説明が難しいのですが、行政による規制緩和、補助などの後押しが、先進テクノロジーを必要不可欠なインフラとして”社会実装”される事に大きく寄与したことは確かだと思います。
そこに中国の紙幣の不便な点や元々のお金に関する習慣の違いも相まったのではないかと。
この辺りは、中国現地で活躍されているYo-ren社の家田昇悟さんが、スライドシェアで資料※2をまとめていらっしゃっていますので、そちらをぜひご覧頂けたらと思います。更にモバイルペイメントは単なる決済だけの話に留まらないことについても興味深くまとめられています。
※2 参考文献:中国新小売(China New Retail) 2019年3月23日公開

数多くのサービスがともすれば乱立している日本のモバイル決済サービス※3の状況は、逆に言うと社会実装の域に達していない、と言えるかもしれません。
この先2つか3つのプレーヤーに集約され、どこでも使えるサービスが登場するのか?が普及の分水嶺ではないかと思います。
※3 出典:ジャストシステムズ社  Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年6月度)

便利なことばかり!?

ここまで中国のキャッシュレス・モバイル決済の進み具合を体験談を交えてお伝えしてきました。
「やっぱり日本より進んでいてすごいですねー」「見習うべき点が多いので日本でも取り入れたら?」と言われる事も多いのですが、最後の章では必ずしもそうでは無いよ、ということを紹介したいと思います。
私も最初1ヶ月くらいは、先の個人送金のエピソードもそうですが、合理的な考え方や便利さの追求といったところは凄いなあと思って見てました。
でも必ずしもそういうことばかりで無いことにも気づいてきました。
例えばこちらの飲料自動販売機。

QRコード自販機1

商品を選んでボタンを押すと、決済のためのQRコードが出現します。

QRコード自販機2

それを自分の端末のアリペイアプリを開き、QRコード(セキュリティの観点からぼかしを入れてます)をスキャン。

QRコード自販機3

通信が発生して値段が出てきて下のボタンを押し(この後ID認証もある)、、、、、

QRコード自販機4

で、ようやく商品が出てきた!ここまでおよそ30秒くらいです。

・・・圧倒的にSUICAやPASMOの決済の方が手順が少なくて早いです。更にいうと現金の方が早い。
こんな感じで、使いやすさよりもテクノロジーを使うことが優先されているような事例は他にもあります。
テーブルから自分のスマホでオーダーするレジの無いレストランもありますが、普通に店員さんを呼んでオーダーした方が圧倒的に早いはずです。
「ビールもう1杯!」って頼みたいだけなのに、わざわざスマホでビール探して選んで決済しないといけないという。。。
これも日本の居酒屋で見るようなテーブル備え付けのタブレットでオーダー出来る方が便利かも知れません。

キャッシュレス先行になっていて却って不便になっているケース、日本のFelicaのように他の技術の方が進んでいる・便利に解決されているケースなど、一概に優れていることばかりではありません。
ですのでもしこれから中国向けに、或いは現地でお仕事に取り組まれる方は、中国のデジタル環境に感心するばかりでなく、冷静にユーザー視点で考えること・日本や他国の技術やユーザーインターフェースでよりよい体験を提供出来るものもあるのでは?というフラットな視点で捉えることも大事だと感じます。
(もちろん先行していること、独自発展している部分について”一から学ぶ”という謙虚さも併せて持つべき事が何より重要なことは言うまでもありませんが)

まとめ

ざっくりまとめると、

  • 現在の中国では現金はほぼ必要なく生活できる。
  • モバイルペイメントの普及状況は約6.2億人。その内8割がQRコード型のアリペイかWeChatペイの2大決済プラットフォームに集約。
  • 現状は全てが便利なことばかりでもない。フラットな視点で捉えてみる事も大事。

ということで第一回目はキャッシュレス・モバイル決済についてお届けしました!
次回は、10月下旬頃に発信予定です。

おまけ

このようなキャッシュレスな中国ですが、アリペイもWeChatペイも使えない、現金とクレジットカードのみ可能という結構びっくりなイタリアンのお店があります。
本格的な料理と雰囲気が楽しめるこだわりあるお店です。これもひとつのこだわり?なのでしょうか。
Bella Napoli(长乐路店)
とても美味しいので上海にお立ち寄りの際にはお勧めです!

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次回予定 2019年 10月15日(火)19時半~ 場所:上海市内

 

コラム執筆

神尾 武志(かみお たけし)

神尾 武志(かみお たけし)

2011年メンバーズ入社。クレジットカード会社や小売企業のデジタルマーケティング支援、インバンド事業の責任者などを務め、2017年に執行役員を拝命。
現在は上海で単身奮闘中!