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企業ロゴのデザイン手法を3つのプロセスで解説(言語化・象形化・構造化):③構造化編

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UX ONEロゴ

前回の企業ロゴのデザイン手法を3つのプロセスで解説「②象形化」で形にしたラフ案を、ロゴとして機能するよう構造化する作業を行なっていきます。

プロセス③ 構造化

目次
1.コンストラクション・グリッドを決める
2.タイポグラフィをつくる
3.カラーを決める
4.VIガイドラインにする
5.おまけに

1. コンストラクション・グリッドを決める

前回までにロゴの軸となるシンボルの大枠の形が決まりましたが、
今度はこの”なんとなく雰囲気で決めた形”の構造を整えることで「秩序」を与えていく作業になります。
「秩序」はロゴに規則性と普遍性をもたらし、異なるサイズや場所においても、常に同じメッセージを伝えることができます。
今回はロゴ作成の手法の一つ、コンストラクション・グリッドを用いて、安定した形に整えていきます。

UX ONE ロゴ動画

コンストラクション・グリッドによるロゴ形成

今回のロゴのユニークなポイントである放射状の直線。ここは、社名のイニシャルである「U」と「0」のフォルムを強調するため、
意味を遠ざける要因となる複雑で不定形な形は抑えました。
線一つ一つの太さ・長さのパターンを決めることで、規則性がありつつ、
多様性やスピード感を感じられるような、動きのある長短の放射線にしました。
この優先順位づけや表現の判断は当然、意図を含め原案を考えた本人が一番適任です。

グリッドを作る流れは冒頭の動画を見ていただければ分かると思いますが、まず真円の放射線のガイドを作り、
中央から外側に向かって拡大していく円を配置します。
上下に複製した楕円の放射線の上に、配置した連続の円から長短3パターンの直線を「U」の形に配置します。

頂点の部分のみ、開口部の協調と、翼のように外側に向かっていく勢いを際立たせるため、長い直線を使用しましたが、
他の線は遠目で見た時のシンボルのシルエットが崩れないよう入れ替えて順番を決めていきました。
グリッド基準で配置は決まりますが、目視で見た時のバランスや、ちょっとしたニュアンスを加えるため、適時調整は行います。

2. タイポグラフィをつくる

シンボル(図形部分)が終わり、次はロゴタイプ(文字部分)の作成です。
シンボルがシンプルなシルエットに決まりつつある段階で、ロゴタイプはシンボルの印象を損なわない、
ニュートラルで癖のないフォントを選ぶ方向で考えていました。
更に円形のシンボルと組み合わせるため、土台となるフォントは華奢でない安定感あるものを選ぶ必要がありました。
組み合わせのパターンとして、シンボルと複数のロゴタイプを組み合わせたパターンを作り、
フォント(Helvetica Narrow Bold)を決定しました。

今回、親会社である「メンバーズ(font:Gotham)」の表記が入る事になりましたが、
フォントはUX ONEの独自性を出せるものを新たに選びました。
結果、2つのアイデンティティに合わせたフォントが共存する方向になりました。
シンボルとロゴタイプを組み合わせる際ののバランスですが、
シンボルの形やロゴタイプのフォントに依存するので、これが正解!という比率はありません。
今回、一番使われるであろう縦組みのロゴについて、全体のバランスが美しく見える「白銀比」を用いて比率を決めています。

UX ONEロゴ モノクロ

UX ONEロゴ モノクロ

3. カラーを決める

ロゴ全体の形も固まり、ようやくカラーの選定です。
ロゴデザインは形(シルエット)が基本であり、色に頼らずとも企業のアイデンティティが伝わるものである必要があります。
そういった意味では、ここまでの段階で九割完成と言えるかもしれません。
とはいえ、色が見る人に与える影響はとても大きく大事な要素なので、ここでもしっかりと可能性を膨らませ→集約させるプロセスを踏む事で、
企業にとって、ロゴにとってベストな色を決めていきます。
舟山社長から受けた「想い」は、多様性(レインボー)というものでした。ただしそのままグラデーションや七色で表現することはありません。
表現したいのはUX ONEという企業=社員のもつ多様性であり、7つの色を使う事ではないからです。

色を選ぶ上で大事にした事がもう一つ、それは親会社であるメンバーズグループの色「紅」を使うことです。
紅を使った表現する事によって、企業としてのユニークさを持ちながら、根底にメンバーズのDNAを感じさせる事ができると考えました。
基調となる「紅」を軸に、スローガンから感じられる強さとフレッシュさのある色を選びました。
色を複数選ぶ際は色相を意識し、バランスのとれた組み合わせにすることが必要です。
今回キーとなる色は紅の補色、かつ伝統色から選び、いくつかのパターンを作成しました。

UX ONEロゴ カラー検討案

カラー検討案

最終的に社長と検討し「カラフル」かつ「スピード感」のあるA案に決定しました。

UX ONEロゴ 最終案

最終案


紅(くれない)#d7003a / R215 G0 B58 / C18 M100 Y74 K0
浅葱色(あさぎいろ)#00a3af / R0 G163 B175 / C76 M20 Y35 K0
葡萄色(えびいろ)#640125 / R100 G1 B37 / C56 M100 Y79 K41
黒(くろ) #333333 / R51 G51 B51 / C0 M0 Y0 K80

ロゴはサイトだけでなく名刺や印刷物など、様々な媒体に記載されます。媒体によって色が変わらないよう、
カラー指定は16進数、RGB、CMYKそれぞれ再現性の高い色を決めておきましょう。

4. VIガイドラインにする

VIは「Visual Identity」の略です。
一般的には企業ブランディングのための視覚表現を定めるもので、ロゴはその一部に含まれる形になります。
VIは、どんな環境・フォーマットであっても、見る人に常に統一された企業イメージを伝えるための「ルール」です。

企業のブランドカラーやタイポグラフィ、各種フォーマット(名刺・書類)などの表現を細かく定める事が多いですが、
今回はロゴデザインの一番基本的な以下のルールのみ定めました。

・ロゴ展開パターン(縦横)
・カラー展開(カラー/モノクロ)
・アイソレーション(ロゴ周りの余白)

ロゴが掲載される媒体は自社サイトや外部メディアだけでなく、エントランスの看板から名刺、社員証、モノクロ印刷まで様々です。
どんな場所でもロゴがしっかりとイメージを発信できるよう、縦横の展開パターンや、
アイソレーション(ロゴの周囲に確保する余白)をさだめる事は必須になります。

UX ONE VIガイドライン1

UX ONE VIガイドライン2

VIガイドライン(一部)

おまけに

アイデアを収集する

「プロセス② 象形化」にあたって行う情報収集です。
普段からロゴデザインのトレンドなどはチェックしていますが、いざ一つのブランドを表現しようとする時、
表面的な情報だけではアウトプットできません。
ロゴに限ったことではありませんが、デザインする上で思考の幅を広げ、
引き出しを増やす為にインプットは多ければ多いほど良いと思っています。
よく行なっている情報収集の場は以下です。

「書店でインプット」
デザイン系の書籍が多くある書店が良いです(おすすめはTSUTAYA書店か青山ブックセンター)。
いわゆる「ロゴ事例の集まった本」はバイアスがかかるので極力見ないようにしています。アイデアに煮詰まった時や、
完成後にバッティングしていないかのチェックで見る事はあります。
見るのは色々な図形やグラフィックが載っている海外のデザイン本などです。
インスピレーションを得たらその場で付箋にメモします(模写はしません)。欲しい本があったらちゃんと買いましょう。

「Pinterestでインプット」
どうしてもロゴデザインを検索してしまいがちですが、極力ロゴではないグラフィックを色々探してPinします。

商標チェックをする

せっかく作ったロゴも、既に他企業で使われて入れば、世に出す事ができません。
そうならないためにも事前のチェックは行った方が良いでしょう。

Google画像検索
完成、あるいは途中段階のロゴを画像検索にかけ、類似のロゴがないか確認します。
あまり精度は高くはないので、簡単なチェック程度に使います。

toreru
申請中も含め、特許庁に登録されている商標を探す事ができます。
Google同様に画像検索できて、精度も高いのでおすすめです。

J-PlatPat」特許情報プラットフォーム
同じくオンライン商標検索サービスですが、検索にはややコツが必要です。
やれることは「toreru」と同じなのですが一応書いておきます。

「法務部チェック・登録手続き」
最終的な社内承認や手続きなどはバックオフィスにお願いしています。

おわりに

3回に渡ってUX ONEロゴの制作プロセスをご紹介させていただきましたが、自分自身でも改めてフローを整理する良い機会だったと感じています。
実際進めている中で割と「なんとなく」行なっている行動も実は多く、俯瞰的に見直すことで一つ一つやっている事の意味の確かめることができました。
制作したロゴは今後より多くの場で展開され、会社の成長とともに露出が増えていくと思いますが、UX ONEの全社員と共に長く愛される存在になってほしいと思います。
長々と書いてしまいましたが、今後ロゴ制作に携わる方の参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
2019年8月9日

第1回:プロセス① 言語化

第2回:プロセス② 象形化

コラム執筆

及川 努(おいかわ つとむ)

及川 努(おいかわ つとむ)

デザイナー / HCD-Net 人間中心設計スペシャリスト

2006年メンバーズ新卒入社。
第5ビジネスユニット アカウントサービス第1ユニット所属
コーポレートサイト構築からWebプロモーション・SNS広告・アプリ構築・ECサイト運用案件などでデザイン・アートディレクションを担当。