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SDGsとは?企業が学ぶための書籍紹介。SDGs(エスディージーズ)の課題は左側におく 「SDGsの教科書」

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2015年9月の採択からはや3年、日本でも大企業を中心にその取り組みがやっと少しづつ浸透してきたSDGs(エスディージーズ)。つい昨年末は、あのFRaUで、一冊まるごとSDGs特集(メンバーズも紹介されました!)が組まれたり、2020年東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)に向けて、グリーン調達やサステナブルフードの観点から、一般生活者への浸透も進んでいくことでしょう。

さて、今回はその「SDGsとは?」の基本を学ぶことが出来る 「ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書」を紹介しましょう。
教科書といっても、タイトルにもある通り、ビジネス・パーソン向けのかなり歯ごたえのある本格的な内容となっています。第2部の産業別にまとめられたリスクと機会、グローバルでの事例集は、現状を知り実践する上で、とても参考になる資料集と言えるでしょう。

ここでは、前半の第1部で印象に残った、
・企業もやっとSDGsに取り組むその理由とCSRのモヤモヤ感をSDGsが企業にとって座りのよいものあることと指摘していること。
・SDGsの課題を左におく思考
の二つにフォーカスして本書を紹介したいと思います。

●企業がSDGsに取り組む理由と企業のモヤモヤ感の解消

日本企業も、腹落ちしてSDGsに取り組むその理由に、本書では以下の2つが挙げられています。
それは、SDGsに 「対応しないリスク」 と 「ビジネス機会の創出」 の2つを日本企業も理解し始めたから。

テキスト

本書より

横並び意識が高い日本企業は、事業機会創出のイノベーションのためというよりは、リスク回避の観点からの取り組みがこれからも増えていく様な気がします。
リスク回避とは、消費者やNGO・NPO、バリューチェーンでの取引先との良好な関係性を保つためであったり、GPIFの動きに倣ったESG投資の視点、広い意味での企業のレピュテーション等が挙げられるかと思います。しかし、いずれにせよ、企業がSDGsに向き合い、企業経営に取り入れることは良い傾向と言えるでしょう。

もう一つは、企業が進めるCSRへのモヤモヤ感をSDGsが解消し、座りが良いものと指摘していること。CSVにも同様の意見が出されることが多い様に、CSRへのモヤモヤ感とは、
「日本企業はCSRとは言わないまでも、長らく企業と社会との間の関係に十分配慮して経営の舵取りをしてきた」
「企業活動が売上を上げ、利益創出を実現しているのであれば、それ自体が社会に役立っていることの証であって、CSR云々と大騒ぎする必要はない」

という二つの主張。

こうしたCSRのモヤモヤ感を解消し、SDGsが日本企業にとって座りが良いとする筆者の考えをここで紹介したいと思います。
SDGsが売上を伸ばし、利益を生み出しながら、世の中にも役立っているという状況を作り出すために策定されたわけでは決してない。それでも、ほとんどの企業は 「売上を伸ばし、利益を生み出しながら、世の中にも役立っていると胸を張って言いたい」 という欲求を常に有している。SDGsが目の前に現れたいま、 「当社はSDGs達成への貢献を意識しながら事業を行っている」 と宣言したいという誘惑に、多くの経営者が駆られているというのが実態だろう。

●SDGsの課題を左側におく思想とは?

もう一つ、ビジネスパーソンの方々に是非、目を通して頂きたいのが、第1部 ビジネスと金融からSDGsを読み解く の最終箇所 3-(3)企業取り組みへのヒント。

SDGsへの取り組みが、様々な企業のサステナビリティレポートやWebサイトに掲載されるたびに、私自身が違和感を持っていたのは、CSRレポートやサステナビリティ・レポートに掲載されているこれまでのGRIへの対応表同様、GRIの項目がSDGsの17の目標に置き換わって、それぞれの目標に合致する自社のサービスや製品は何かといった星取表の様なものを掲載していること。
その違和感を明確にクリアにしてくれているのが、本項となります。

さて、SDGsの課題は、右におくか、左におくか?

右におく思考とは、自社で提供する製品やサービスが表の左側にあって、それらに関連するSDGsの17の目標や169のターゲットをヒモ付けすること。
一方で、左におく思考とは、SDGsの課題を表の左におき、それぞれの社会課題のために、自社では何が出来るかを考えること。

右において、事業の棚卸しをすることも重要ですが、企業がSDGsを経営に取り入れるには、左におく思考がその本質、つまり、SDG Compassで述べられる、「アウトサイド・イン・アプローチ」 となります。最後に、本書で一番響いた以下センテンスを紹介しましょう。

企業が「SDGsの課題を左側におく思考」に問題意識を進化させたとたんに、景色は大きく変わるであろう。まず、社内で取り組みを牽引する組織が様変わりをせざるを得なくなるだろう。

自社の重要課題をSDGsと紐付けることや、既存の製品・サービスをSDGsと紐付ける作業なら、CSR部署だけでもできないわけではない。(中略)それが、17の目標を左において、そこから自社は何ができるかを考えてみる場合には、研究開発部門、事業開発部門をはじめ既存の事業部門との調整や意思決定、さらには、資源の再配分は不可避となる。

既存の事業をSDGsの目標と紐付けるだけでは、世界は何も変わりませんが、アウトサイド・インのアプローチで社会課題を考え、経営にSDGsを取り入れれば、企業にイノベーションをもたらし、SDGsの本質であるサステナブルな社会実現の一歩となるということ。

●最後に

本書を読んで、改めて、こちらのドキュメントも重要性を再認識しました。
本書同様、ビジネスパーソン向けの内容ですので、こちらもご一読を。

SDG Compass SDGsの企業行動指針 -SDGsを企業はどう活用するか-(グローバル・コンパクト)

より良きビジネス より良き世界 概要(ビジネス&持続可能開発委員会報告書)

<サービスのご案内>CSV企業戦略コンサルティング

執筆

萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社エンゲージメント・ファースト(メンバーズグループ)
Shared Value Agency®
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員、環境エンジニア2級
『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)