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コールセンターチャネルによるカスタマー・エンゲージメント構築の取り組み:ANAテレマート株式会社~コールセンターマーケティング~

ANAテレマート株式会社 サービスマネジメント室 斉藤 聡子室長

「予約センターからコンタクトセンターそして、マーケティングセンターへ」ANAテレマートが目指す、コールセンターチャネルによるカスタマー・エンゲージメント構築の取り組み

<インタビューにご協力頂いた方>ANAテレマート株式会社 サービスマネジメント室 斉藤 聡子室長

非対面でありながらも企業の重要の顧客接点の一つであるコールセンター。Webサイトやソーシャルメディアがデジタルチャネルとして進化を続ける中、人を介したコールセンターのハイタッチ・サービスは今見直されようとしています。

ICTの進化により、近い将来、コールセンターのオペレーターは、その役割をAIに代替されるとも言われていますが、今回の取材を通して、高スキルのオペレーターでマーケティング力が求められるセンターであればあるほど、その役割をAIが担うのは、もう少し遠い未来であることを確信しました。

今回は、東京・札幌・長崎 合わせて約1,000シートのコールセンターを保有し、ANAグループの重要な顧客接点を担う、ANAテレマート株式会社 サービスマネジメント室 斉藤 聡子室長にお話を伺いました。

●ANAテレマートさんのコールセンターは、マーケティングセンターになることを表明し、これまで以上にデジタルとの連携も進められていますね。

現在は、顧客満足度の観点から、コミュニケータの対応は、一定のレベル感に達していますので、次のステージに向かう段階であると考えています。実は、マニュアル通りではない方が生産性も高かったりしますので、次のステージへ行くことが求められます。

基本的に、コミュニケータからの勧誘や販売は一切していません。電話を掛けてきたお客様には、そのタイミングでどうANAを好きになって頂けるか? コールセンターの価値を感じて頂けるか? そうした事を電話を通じた会話だけで実現するのは本当に難しいと考えています。

センター全体で実現するのはもう少し先になりますが、ある時期から、マニュアルに沿った対応からは脱却し、お客様の思考に合わせて、コミュニケータ自らが考えて対応することを目指しています

マニュアル通りの対応はお客様も望んでいませんし、センターの生産性にも寄与しません。コールセンターの対応品質が上がればコールセンターの運営コストも下がります。

また、最も重要なのは、お客様に継続して利用して頂くことです。

予約センターから、コンタクトセンター、さらにマーケティングセンターとなるため、お客様へのアプローチも変えていく必要があります。

継続してご利用頂いているお客様は、基本的なことは把握されていますので、マニュアル通りの対応は望まれていませんし、そうしたお客様とマニュアルに沿った対応をしてもお客様との会話も噛み合いません。そうなると、コミュニケータが自分で考え対応する必要があります。

●コミュニケータ自身が自ら考えるためには、具体的にはどの様なトレーニングをしていますか?

これまでは、各コールセンターの担当者がコミュニケータの音声をモニタリングして改善を進めていましたが、2012年に、モニタリング専門の部門をつくり、それら取り組みの一元化を行いました。

2ヶ月に一度、約1,000名のコミュニケータのモニタリングと指導により、コミュニケータの応対品質は向上しています。そして、これまでの取り組みから分かったことが、マニュアルに頼らない対応の有効性です。

新入社員はマニュアルにより、基本的な知識習得を行う事が重要ですが、ある程度業務を習得した後は、コミュニケータ自らがいかに考えるかが重要になります。さらに、お客様との会話形式によるロールプレイでレッスンすることで学んでいます。

 

テキスト

●コミュニケータ自らが考えることを定着させるのがメインのトレーニングになっていますね。

私たちは常に、お客様の質問に答えるのではなく、お客様と会話をすることを重視しています。

例えば、ログインが出来ないお客様がいたとします。そのお客様は、ログインをすることは目的ではなく、チケットの予約をしたいという真意があります。研修では、お客様の真意を掴むためのトレーニングをしていますし、トレーニングを継続することにより、感性を磨くことも出来ます。

ログインができない、パスワードを忘れたというお客様には、ログインしてお客様がされたいことを質問します。そうした問いかけをすることにより、お客様からの真意を引き出すことが出来ます。

電話を掛けてきたお客様の質問に正確に答える事も重要ですが、お客様の真意を問うためにコミュニケータが質問をする事で、的確にお客様の要望に応えることが出来て、生産性も上がることになります。

こうしたコミュニケーションを行うことで、通話時間も短縮できますし、お客様の満足度も上がります。

●コミュニケータ業務は、コミュニケーション能力がないと難しいですね。

非常に難しい取組みですが、現在はそうした真意を掴むためのトレーニングを実施しています。そして、その取り組みはマーケティングそのものです。

セグメントされたお客様への対応ではなく、私たちは一人ひとりのお客様に対して、まさに、One to Oneの対応を行っています。

お客様は何に困っているのだろう?なぜパスワードを知りたいのだろう?それを聞くことはマーケティングです。

●お客様のインサイトを掴むということでは、まさにマーケティングですね。

私たちは、お客様に継続して利用して頂きたいというミッションを持っていますから、それを達成するためには、一人ひとりに合わせたアプローチが必要です。

また、最近では、問い合わせ先の電話番号がなかなか見つからない企業が多いですが、私たちはWebサイトの目立つところに電話番号を掲載しています。つまりお電話下さいというメッセージを伝えています。

お客様ご自身でWebサイトを見て解決して頂くことも重要ですが、困ったお客様にはどんどん電話をして頂きたいと思っていますし、そのタイミングをチャンスと捉えています。

●問い合わせの用件は、どの様な内容ですか?

「Webで予約をしようとしたけど、満席だった。どうにかならないか?」といった、お客様に対してNOと言わざるを得ない内容が、問い合わせの8割を占めています。

また、基本的に、Webを見て解決出来る問い合わせは来ませんので、コミュニケータの仕事は簡単ではありません。

「満席のためご搭乗できない」とお伝えする事は、NOですが、お客様との会話を通して、次回もANAを選んで頂く、そう思って頂く様にすることに仕事の面白さがあります。

NOと言うことや、叶えられないお客様のご要望を伺うことは、お客様の満足度が下がるとコミュニケータは考えがちです。しかし、結果的にご要望を叶えられなくても、一生懸命に対応することが重要であるとコミュニケータには伝えています。次回もまた相談したいとお客様に思って頂けることが重要です。

テキスト

お話をお伺いして、様々な事に取組む姿勢に、ANAテレマートさんの哲学や信念を感じます。一般的なコールセンターは、出来るだけ多くの電話をこなすために、通話時間を短くすることを優先したり、電話番号の表示もWebサイトの階層が深いところに掲載し、入電数を抑えたりするのが一般的ですが、ANAテレマートさんは違いますね。

お客様のご要望を叶えることが出来ない応対があったとしても、結果的に搭乗者数や会員数が増える、そうした成功体験が広がると、その様な意識も少しづつ拡がると思っています。

「つぎも・いつも・ずっと!ANA!」が私たちコールセンターのスローガンです。

コミュニケータのモニタリングをする際にも、「なぜこうした対応をする必要があるのか?」といった疑問がコミュニケータから出ることもあります。しかし、このスローガンを使いながら、「ずっと、ANAをお使いいただくため」である事を伝えることにより、モニタリングのフィードバックやトレーニングへの理解も深まっていると思います。

また、“「ANAでよかった」は、ここからはじまる。”をキャッチフレーズにしていますが、自社のフィロソフィーとして社内広報にも力を入れ、Webサイトも更改しました。今後は、社外にも積極的に発信していきたいと考えています。

ANAグループには、航空事業の他にも様々なグループ会社がありますが、最もお客様に近いところにいるのが私たちであるという想いです。当社の印象が良ければ、他グループ会社の印象も良くなる、そうした事によって、ANAの様々なサービスをご利用頂けると思っています。

弊社はお客様との最初の接点となることが多いし、何か困ったときにお問い合わせを頂く会社となりますので、キャッチフレーズは、私たちが進むべき道を明確に表現しています。

お客様からの問い合わせは複雑化し、期待値も上がっているかと思いますので、コミュニケータ業務は、難易度の高い仕事です。

これまで、Webサイトを通してOne to Oneの仕組みは提供してきました。しかし、コールセンターは、過去の蓄積された顧客データに加えて、コミュニケータ自らが、会話を通して真意を探り対応していますので、リアルタイム One to Oneのチャネルと言えます。

お客様の真意が分かれば、問い合わせへの回答に加えて、価値提案も出来ることになります。

●課題解決はデジタルで行い、価値提供はヒトの対応力ということですね。

先程、真意を問うことのトレーニングに関してお伝えしましたが、さらに現場で根付かせるため、スーパーバイザーとは別に、クオリティ・アドバイザーをコールセンター内に配置しています。

これまでのスーパーバイザーは、どうしてもコミュニケータの応対内容に注目し、コミュニケータにアドバイスしがちですが、クオリティ・アドバイザーは、お客様の会話だけを聴くことに注力します。そうした、センターで核となる人材を増やしています。

クオリティ・アドバイザーが日常業務の中でコミュニケータによりそい、ケアすることで、コミュニケータの意識も変わっていきます。

●様々なコールセンターが取り入れている、生産性やパフォーマンスに関わるKPIから、貴社センターでは、次のステージに向い評価するためのKPIも必要ということですね。

センターキャパシティを算出する上での基本的な処理時間や、センターへの電話のつながりやすさはとても重要ですので、応答率等は会社としてのKPIとしています。

また、センターの品質評価は、自社内の評価から、お客様のアンケートにより、満足度を測定しています。

センターのKPIとして、処理時間を管理することはとても重要ですが、通話時間の厳密な管理は、コミュニケータの萎縮に繋がります。繰り返しになりますが、真意を問うことで、結果的に通話時間が短くなることを成功体験としてコミュニケータに学んで欲しいしと思います。通話時間を気にすることで、思考が止まらない様、指導しています。

テキスト

●真意を問うことがマーケティングとのお話がありましがた、そうしたカルチャーを根付かせることは重要ということですね。

お客様一人ひとりを知る事が私たちの仕事の根幹であると考えていますし、そうした事がマーケティングのスタートと考えています。

●マーケティングセンターとしての今後の目標や展望を教えて下さい。

今まで以上に、コミュニケータ自身が、楽しい仕事として取組むことができたり、仕事の面白さを実感できたり、この仕事に就いて良かったと思える様にしたいと思います。

コミュニケータがその様に感じられることにより、お客様との対応の際の表情も変わっていきます。

2016年に、私たちの会社は、応対品質を、よりそい品質という名称に変更しています。名称を変更したことにより、コミュニケータの意識も変わりました。

そして、グループ企業の入り口としての役割を果たすことにより、お客様との会話を楽しむことは、少しずつに職場にも浸透していると考えています。今後もANAグループを支えるお客様チャネルとしてその役割を果たしていきたいと思います。

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コラム執筆

萩谷衞厚

萩谷衞厚

株式会社エンゲージメント・ファースト(メンバーズグループ)
Shared Value Agency®
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員
環境エンジニア2級

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。
前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。
茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員、環境エンジニア2級
『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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