UXデザインとは?と、最近、社内外からUXデザインについて問い合わせを受けることが多くあります。
「UXデザインってWeb制作でどう使うの?どう学ぶの?」「UXデザインってどんなプロセスで進めるの?」「UXデザイン思考とは?」「UXデザイン領域はどこまで?」「UX定義は?手法は?」「ユーザーエクスペリエンスってそもそもなに?」「WebデザインのUXは?」
このコラムでは、UXデザインとは何かやそのUXデザインプロセスなど、基本的なことについて紹介していきます。
UXデザイナーの採用をお考えの企業さまはこちらをご覧ください。
[UXデザインとは 目次]
UXデザインってなに?UXデザインの定義は?
Web業界では色々なところで「UXデザイン」という言葉が使われていて、それぞれ違う意味合いで使われていることも多いので、まずは定義について簡単にまとめてみます。
「UX(ユーザーエクスペリエンス)」という言葉はそのまま「ユーザーの体験」を指すので、UXデザインとは「ユーザーの(よりよい)体験をデザインすること」になります。
ここでの「ユーザーの体験」では、特定の範囲を限定することなく人間の生活一般を対象としていますが、Web業界で「UXデザイン」を活用するときは、当然、Webサイトやアプリでの接点を中心に考えながらユーザーの体験をデザインしていくことになります。
権威ある機関/人による「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の定義
と、言葉の意味だけ説明してもイメージがつきにくいと思いますので、世の中に広く認められている人や機関による「UX」の定義を紹介します。Wikipediaから引用していくつか並べてみますので、読めばなんとなくイメージがつくかもしれません。
- 「製品、システム、サービスの利用および予期された利用のどちらかまたは両方の帰結としての人の知覚と反応」(ISO 9241-210)
- 「企業とエンドユーザーとのインタラクションの全側面。企業のサービスや製品。模範的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、手間や面倒なしにユーザーのニーズをきちんと満足させること。次に、所有や仕様を喜びとするようなシンプルさやエレガンス。真のユーザーエクスペリエンスとは、顧客が欲しいと言っているものを提供することでもなければ、チェックリストに載っているような機能を提供することでもなく、もっとはるかに優れたものである。」(Nielsen-Norman Group)
- 「我々の感覚を喜ばせる度合い、我々が製品に与える意味(意味の経験)、引き出される感覚と感情(感性的経験)を含む、ユーザーと製品との間のインタラクションから引き出される感情の全集合」(Hekkert)
- 「人が特定のデザインとインタラクションするときに得る経験の質。カップ、玩具、あるいはウェブサイトなどから、美術館や空港のような、より多く統合された経験までの幅を持ちうる。」(UXnet.org)
「UX」についてなんとなく理解できましたでしょうか。個人的には、一番下の定義がけっこう具体的に書いてあるのでイメージしやすいです。
また、これらは「UX」の定義なので、「UXデザイン」とはこれらの「UX」をより良いもの、理想的なもの、ユーザーにとってうれしいものにデザインしていく活動のことになります。
UXデザインとUIデザインはなにが違うのか?
これもよく聞かれる質問です。私もUXデザインのことを学ぶ前は、UIデザインとUXデザインの違いがよくわかりませんでした。
UXデザインのことをある程度理解した上で感じるのは、「デザイン」という言葉が持つイメージが人によってかなり違っていて、それが誤解を生んでいるのではということです。
一般的に「デザイン」というと、何かを描いたり、色をつけたり、見た目をかっこよくする行為をイメージする人が多いのではないでしょうか(私も以前はそうでした)。Web制作のプロセスでいえば、要件定義に基づいてワイヤーフレームを作って、実際のアウトプットの見た目として作り上げていくプロセスにあたります。
一方、Googleで「design」を英→和で翻訳してもらうと「設計」という言葉が出てきます。
これは「UXデザイン」においては、デザインする対象が単に見た目だけでなく、ユーザーの行動や気持ち、またそれを提供する企業側の仕組みやビジネスモデルまでを設計する活動を含むことを意味しています。
そういう意味では、UIは、UXデザインにおいてデザインするべき要素のひとつ、ということになります。
※ちなみに、特にWeb業界の場合はユーザーとの接点がWebサイトやアプリのみになることも多いため、UIがUXに大きな影響を与えることになり、UIデザインの重要性は高いのです。
一般的なUXデザインプロセスとは
では、ここからはUXデザインがどのようなプロセスで進められていくのかを紹介します。
※一般的に、UXデザインを進める手法として「人間中心設計プロセス」が使われており、ここでもその手法を使った進め方を紹介します。
ざっくり言えば、以下のようなプロセスになります。
1.ビジネス要件の確認を含め、UXデザインの全体のプロジェクト設計をする
↓
2.ユーザーのことを知る/調査する
↓
3.ユーザーのことを分析する/モデル化する
↓
4.理想のユーザー体験を設計し、解決策(Webサイトやアプリ)のアイデアを出す
↓
5.解決策のプロトタイプを作る
↓
6.ユーザー評価を行う(※必要に応じて2~5のプロセスに戻る)
↓
7.解決策が完成する
UXデザインとセットでイメージされることが多いペルソナやカスタマージャーニーマップは3の段階で作成されるものです。また、これらを作成するにあたってはワークショップ形式で複数人で理解を共有しながら進めていきます。
UXデザインの調査としてよく使われるデプスインタビューは2の段階にあたり、3のプロセスにおけるペルソナやカスタマージャーニーマップの作成のインプットとして欠かせないものになります。
また、UXデザインはペルソナやカスタマージャーニーマップを作ることがゴールなのではなく、その後の4~7のプロセスで実際のモノ(Web業界では主にサイトやアプリ)を形にし、理想のユーザー体験を実現するモノを創り上げることがゴールです。
そのためには、ユーザー評価のフィードバックを受けながら改善を繰り返していくことが重要で、メンバーズではアジャイル開発の手法を取り入れてWebサイトやアプリの開発を進めています。
UXデザインのプロセスの重要なポイント(通常のプロセスとの違い)
これが基本的なプロセスになるのですが、では通常のWEBサイトなどのものづくりのプロセスとどこが違うのでしょうか。3つのポイントを説明します。
1.プロセスの後戻りがある (具体的には「上記の2~6」を行ったり来たりする)
通常のWeb制作では、上流工程の要件定義から始めて最後の制作物の完成まで後戻りのない一本道で進めていきます(いわゆるウォーターフォール型の制作工程)。
しかし、UXデザインのプロセスでは、よりよいユーザー体験を実現するために、ユーザーの評価を取り入れて作っては直し作っては直し、を繰り返して、よりよいWebサイトやアプリを作るための改善をすることがプロセスの中に組み込まれています。
場合によっては、プロトタイプの評価結果をうけて、コンセプト自体の見直しや調査のやり直しをまで遡ることもあります。
ですので、アジャイル型で開発していくためのノウハウやスキルが重要になってきます。
2.ユーザー調査が起点となる (プロセスの途中から始めることはできない)
ポイント1で「行ったり来たりする」と書きましたが、一方で「プロセスの途中から始める」ことはできません。
よいユーザー体験を実現するためにはユーザーのことを十分に理解する必要があります。ですので、UXデザインのプロセスにユーザー調査は欠かせません(ユーザー調査のないUXデザインはない!)。スタートは必ずユーザー調査です。
3.プロジェクトメンバー全員が最初のプロセスから参加する
通常のWeb制作のプロセスでは、調査はリサーチャーが行い、プランナーが要件定義をし、UIデザイナーが見た目を作り、エンジニアがサイト/アプリを作る、という感じでバトンを渡すように制作が進められていきます。
しかし、この従来の手法では必ず(なんと必ず!)、どこかの段階で最初に立てた目指すべきユーザー体験が変形されていきます。(それならまだいい方で、そもそも目指すべきユーザー体験が設定されないケースのほうが多いかもしれません。)
よりよいユーザー体験をデザインするためには、プロジェクトメンバー全員がユーザーを十分に理解し、理想のユーザー体験を心の底から腹落ちして共有することがとでも重要です。そのためにUXデザインでは、ワークショップを用いて各プロセスでプロジェクトメンバー全員が理解を共有できるように配慮しながら進めていきます。(クライアントワークの場合は、クライアントにもワークショップに参加してもらいます)
以上、簡単ではありますが、UXデザインとはなにか、またUXデザインのプロセスを紹介しました。
次回以降、各プロセスの具体的な進め方や事例などについて紹介していきます。
メンバーズでは、UXデザインの専任チームにて上記のようなプロセスでものづくりをしています。UXデザインのコンサルティング、プロトタイプ開発、リーンなサービス開発などのご依頼は弊社UXデザインチームまでご相談ください!
もっと詳しく知りたい! と思った方、サービスの紹介やお問合わせはこちらからどうぞ。
■コラム執筆者
株式会社メンバーズ UXデザイン室 植木耕太
コラム執筆
植木耕太
UXデザイナー × プランナー
HCD-net認定 人間中心設計スペシャリスト
2007年メンバーズ入社。WEBプロモーション部門にてい、大手企業の広告プランニングに従事。その後、「エンゲージメント・ラボ」にて、ラボ長として、企業がソーシャルメディアを活用したコミュニケーションを支援した。現在は、UXデザインチームのマネージャーとしてデジタルコミュニケーション戦略策定やWEBサイト構築を担当している。著書に『エンゲージメント・マーケティング~Facebookが生み出す企業と生活者の絆~』(マイナビ、共著)、『即実践!検索連動型広告』(技術評論社、共著)がある。
産業技術大学院大学履修証明プログラム「人間中心デザイン」修了
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カテゴリ: UI/UX
2017年11月27日