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【共創マーケティング】エンゲージメント・マーケティング成功のための10ヶ条 β版 (4) My Starbucks IdeaとIDEAPARK(原 裕 寄稿 オルタナティブ・ブログ16)

5. あらゆる企業活動にエンゲージメント・マーケティングのプロセスを組み入れる

エンゲージメント・マーケティングの効果を最大化するには二つの重要ポイントがあります。一つは顧客の参加ですが、忘れてならないのは社内関係者、あるいはパートナーの参加です。「実は社内の方が難しい」ということを大手企業のクライアントからもよくお話を伺います。これは何もエンゲージメント・マーケティング実行における問題というよりは会社という「根深い」組織の問題です。

しかしながらネットやソーシャルメディアの登場及び普及で顧客の声をよりダイレクトに関係者(特に社長や役員の場合は大変なことになる場合が多いですが 笑)が閲覧する機会が増えるにつれ、否が応にも顧客の声という、マーケティング・コミュニケーションにおけるリーサルウェポン的な水戸黄門の印籠を見せられるようになってきました。無論、このブログでも度々取り上げているように、従来も「お客様相談窓口」に多くの顧客の声が届けられてはいたのですが、一部の顧客セントリックな企業を除き、そのほとんどはクレームということで一部の関係者のみの閲覧にとどまっていました。(さすがに最近は開発部署やマーケティング部署にホットボイスとして回覧されているようですが)

ところが、Facebookの良いところでもあり、怖いところでもありますが、社長が自社のページを見れば自社に寄せられるファンの生の声を見る事ができてしまうのです。怖いのはファンの声に一喜一憂してしまう事ですが、いずれにしろ社内で加工された声ではなく「生」の声である事が重要なのです。

エンゲージメント・マーケティングにおける顧客は、メッセージの受け手としてだけではなく、積極的にブランドに関与するものだという前提です。故に企業やブランドから顧客へ一方的にメッセージを届けるだけでなく、顧客からの企業やブランドに対するフィードバックが行われ、かつ、そのメッセージに対する企業・ブランドからの意見、自分以外のファンからの意見などのインタラクションも重要になります。ここでは初期の「共創」が行なわれるわけです。コトラーの「マーケティング3.0」ではこの「共創」が行われる場としての「コミュニティ」の重要性が更に増すと書かれています。

では、企業やブランドはどのようにエンゲージメント・マーケティングの一つの成果である顧客の声を活かすのでしょうか?今後、社内のあらゆるマーケティング・プロセス、すなわち広報、ブランド・コミュニケーション、商品開発、コンタクトセンターにおいてこれら顧客の声を取り込むことを重要な方針として定め、PDCA(Plan Do Check Action)の中に組み入れられる事になるでしょう。顧客とのエンゲージメント・マーケティングを展開するプラットフォームとして最も有名なのはスターバックス社のMy Starbucks Ideaがあげられます。

このMy Starbucks Ideaは2008年に、CEOに復帰したハワード・シュルツ肝いりの施策としてオープンしたものです。当時Starbucksは業績低迷の時期で、多くの顧客が去っていき出した時期です。シュルツが第一線を退いた後、外部から招聘したCEOによるアメリカ式の株価・業績中心のマネジメントがこのような事態を招いたと判断し、7つの重要な戦略、7 Big Movesを掲げ復帰したのです。

1) Be the undisputed coffee authority.
コーヒーという中核事業で揺るぎない地位を築く

2) Engage and inspire partners (staff).
パートナーとの絆を築き、彼らを刺激する

3) Ignite the emotional attachment to customers.
顧客への情熱的な愛情に火をつける

4) Expand global presence while making each store the heart of the local neighborhood.
地域コミュニティでの中心となり、かつ、グローバルでの存在感を高める

5) Be the leader in ethical sourcing and environmental impact.
倫理面と環境面でのリーダーになる

6) Create innovative growth platforms worthy of Starbuck’s coffee.
スターバックスにふさわしい、イノベーティブな成長基盤を構築する

7) Deliver a sustainable economic model.
持続可能な経済モデルを確立する

私はこの戦略ビジョンに惚れ込んでます。まさにエンゲージメント・マーケティング・モデルの実践だと思います。彼らはこの戦略を実践する事により、2008年当時から大幅に株価、業績ともに伸長しています。(無論、2008年には様々な外的要因もあったのですが)

さて、My Starbucks Ideaの話に戻します。このプラットフォームはBig Movesの2,3,4にかかわるものと思われます。

My Starbucks Ideaは平たくいえばスターバックスファンのためのアイデア・コミュニティだと言えます。ファンはスターバックスに対しての意見やアイデアを3つの中分類(Product, Experience, Involvement)、15の小分類カテゴリーに分けて投稿できます。商品アイデアや環境、テクノロジーなどさまざまなカテゴリーです。ファンはこれらのアイデアに賛成、反対を表明する事ができ、一定の賛同を得られたものに対してはアイデアに関係するスターバックス担当者が検討を開始し、その検討プロセスも公開しています。検討の結果、採用されたアイデアや採用されなかったアイデア(これに関してはその理由なども開示されている)も開示されています。2014年2月現在、過去190,670のアイデアが投稿され、994のアイデアが現在検討中という状況です。過去にはWi-Fiの無料設置を決めたり、いくつかの新商品がここから生まれています。リワーズプログラムなんかもそうですね。

まさにエンゲージメント・マーケティング・プラットフォームと言えるこのMy Starbucks Ideaは、顧客、パートナー(スタッフ)、本社の人間などの意見が可視化され、かつ、そのプロセスが可視化されている点が秀逸で、「共創」の可視化・オープン化=参加者のモチベーション向上、社内関係者の参加を促しています。今回のお題である、あらゆる企業活動にエンゲージメント・マーケティングのプロセスを組み入れる、を実現できている最適な事例だと思います。

日本でも同様の事例があります。無印良品IDEAPARKです。ここでも顧客からの意見が可視化されています。最近開始したコミュニティなのですが、既に1,715のアイデアが投稿され、この中から63のアイデアの開発が開始しされ、7つのアイデアが商品化されています。一部のコアの人たちだけではないのかという意見はあるでしょうが、そもそもエンゲージメント・マーケティングはマス・マーケティングではないので、広く一般的にユーザーとコミュニケーションすると言うよりはコアなファンとの対話と考えるべきでしょう。

My Starbucks IdeaとIDEAPARKの最も大きな成果としては、この共創基盤がオープンであることで顧客から意見を頂く=企業が対応しなければならない状況を作ったと言う事でしょう。このような仕組みに、一部の部署だけでなく、より企業内の関係者を対話に巻き込んだということがエンゲージメント・マーケティング最大の成果だと思います。実は社内関係者とのエンゲージメントが一番難しいというのが現状ですから。

次回は「参加、及びアクションを継続してもらう仕組みの実装(ソーシャル・プラグイン、コミュニティなど)」についてです。


※本コラムは、オルタナティブ・ブログにて、原裕(株式会社メンバーズ 執行役員兼 株式会社エンゲージメント・ファースト代表取締役)が寄稿する記事の転記です。

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カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2014年04月09日

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