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Social Good な企業とその取り組み #10:ギンザのサヱグサ

エンゲージメント・ファーストでは、Social Goodなお取組みを行う企業・団体の皆さまを対象として、独自の選定基準により、「Shared Value ベスト・プラクティス」として表彰をさせて頂いています。

この度、ギンザのサヱグサ様が取り組む、サステナブル社会実現と地域活性化のためのお米のプロデュース販売のお取組みを選定させて頂きました。

 

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日本を代表する繁華街であり、文化発信の街である銀座と共に歩み、子ども服の企画・製造・販売を行う、ギンザのサヱグサ。2019年には創業150周年を迎える銀座でも有数の老舗企業です。そのギンザのサヱグサが、未来を担う子ども達に向けて本気で取り組むサステナブル社会の実現。

今回は、様々な取組みの中から、長野県栄村小滝地区への取組みに関して、取材をさせて頂きました。未来を見据えたSocial Goodな取組み、是非、ご覧下さい。

 

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【インタビューにご協力頂きました皆さま】
株式会社 ギンザのサヱグサ 代表取締役 社長 三枝 亮 様
株式会社 ギンザのサヱグサ コミュニケーション戦略室 室長 澁江 摩樹 様

 

 ●サヱグサさんは、子ども服の製造・販売を本業としながらも、地方創生支援を視野に入れたお米のプロデュース販売も手掛けています。

 

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http://kotakirice.jp/

 

三枝社長:私たちの本業、子ども服のお客様のほとんどは都心部にお住いです。本業に即したCSR的な発想で、都会に暮らす子ども達に対して、子ども服の販売を通して出来ることは何かないかと、常々考えていました。
子どもの成長にとって、自然と触れ合うことの重要性を感じていましたので、「サヱグサが橋渡しをしながら、自然から学ぶこと、そうした機会を作っていこうじゃないか」との考えに至り、2012年に「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立ち上げました。そして子ども達が自然体験できるフィールドを探して全国20箇所位訪ねて廻った中で出会ったのが、栄村です。栄村は、2011年3月12日の長野県北部地震の震源地でもあります。そしてそこには、私たちが今プロデュース販売している「コタキホワイト(小滝米)」の生産地、長野県栄村小滝集落がありました。その時はまだ震災からの復旧の過程にあった小滝の方々と出会ったんです。

 

※コタキホワイトは、エンゲージメント・ファーストがANA様と一緒に進める、ANAマイレージ会員向けECサイト「SOCIAL GOODS」の中でも紹介をさせて頂いています。

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幻のコシヒカリ「小滝米」を、未来への想いとともにボトルに詰めて─コタキホワイト─
https://store.ana.co.jp/pickup/socialgoods_161121_v4#wrapper

 

●お米との出会いのきっかけは、子ども達の自然体験の場探しだったんですね。小滝という集落に惹かれたポイントは何ですか?

三枝社長:小滝には、千曲川が流れ、棚田があり、民家のすぐ近くには山もある、そういった場所です。13世帯36人ほどの小さな集落で、まさに日本の原風景をそのまま切り取った様な素敵な場所なんです。視察を繰り返す中で、自然体験の様々なアイディアが浮かびましたが、何といっても人の温かさを感じたのが印象的でした。周囲の人々が協力しあったり、寄り添ったりする、そんな、本来当たり前の生活や関係性がそこにはあったんです。コンパクトなエリアに、豊かな自然も温かい人々との出会いも全てが揃っていました。これこそまさに私たちが求めていた、都心では失われているものでした。
この場所こそが子ども達の学びの場としても未来に残すべき場所であると感じたのです。

 

●震災の影響は、現在は如何ですか?

三枝社長:田んぼは全て復旧しましたが、裏山の人工林は未だ震災で被害を受けたまま、手付かずになっています。私たちも森の再生、整備を通して、小滝が100年、300年と残っていくためのお手伝いをパートナーとして取り組んでいきたいと思っています。

小滝の美しい景観を壊さずに、子供たちが大人になって戻って来られる集落を存続させるためにはどうしたら良いか?そう考えた時に、ここには幻の米といわれた「小滝米」がある。
まずは、小滝の人達の米作りを支援し、その美味しいお米を世の中に送り出すことにより、集落の経済的な自立を進めようということで、お米のブランディングと販売のお手伝いをしています。

 

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●子ども服が本業のサヱグサさんが、なぜそこまで取り組むのですか?普通の企業の支援にありがちな寄付や、社員による農作業のお手伝いに留まらず、お米販売のための子会社まで立ち上げています。

三枝社長:私たちの会社は再来年、創業150周年を迎えますが、洋服を通して、子ども達の色彩感覚やT.P.O感覚、感性を育むことを提案し続けてきたブランドだと思っています。
そうしたこれまでの取組みと、子ども達に里山体験を提供することは、「感性を育む」という点で、私たちにとって全く同じ軸のことなんです。子ども達が多感な時期、五感に触れる全てのものから色々なことを吸収するその大切な時期に、私たちはこれまで子ども服を提供してきた。その提供するものが自然体験であったり、田植えなどの里山体験に変わるだけで、原点のフィロソフィーは同じなんです。
それを実現するために、小滝との出会いがありました。でも、そうした里山の原風景がなくなってしまうと、子ども達に自然と触れ合って欲しいという想いも果たせなくなってしまう。何をすべきか考えた時に、地域の経済を回していくことが重要だと思ったんです。
小滝の人たちはとてもおいしいお米を作りますが、これまでBtoCのビジネスはしてこなかった。でも私たちはBtoCの会社です。ブランディングやパッケージ開発、販路の拡大は東京にいながらでも出来るだろうと考えてお米をキーにした支援をスタートしました。
おいしいお米を作ることと私たちが進めていること、どちらが欠けてもビジネスとして成立しない。私たちは消費者の方々に小滝米の良さをこれからも伝えたいと思っています。

 

●サヱグサさんのWebサイトでは、本業のコンテンツに加えて、環境への意識を高める普及啓発のコンテンツを積極的に発信しています。

 

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SAEGUSA GREEN PROJECT
http://www.sayegusa-green.com/

 

三枝社長:環境問題とか男女平等、差別等、様々な解決すべき社会課題がありますが、こうしたことを解決するのは大人の責任だと思うんです。次世代の子ども達に良い社会を残すのは大人の責務あり役割だと思っているので、そうしたコンテンツを発信しています。
会社のあり方もそうした考えに基づいていないといけない。持続可能性のある社会にしていくためには、社会課題を少しずつでも解決していくことは当たり前の事です。

 

●こうした資本主義社会の中で、こうした事を当たり前の事として言える経営者はなかなかいません。

三枝社長:たびたび、周りからもそう言われますが、持続可能な社会を残す努力を続けること、これだけは誰に何と言われようが、信念を通したいし、こうした姿勢を失わないようにしたいと思っています。

 

●そうした考えは代々受け継がれてきた事なんですか?

三枝社長:先代達も違った形で似たようなことを考えていたかもしれませんが、「サステナブル」というキーワードを打ち出したのは私が社長になってからです。時代の流れを考えた上で、そうしたキーワードに取り組む考えに至りました。そうしたことを常に考えながら仕事をしていきたいと思っています。

 

●お米の話に戻りますが、小滝米はワインボトルに入れたり、おしゃれにパッケージにすることによって付加価値をつけています。

三枝社長:私たちのもともとの目的は、小滝が経済的に豊かになることですので、当然そうした効果を狙っています。
私たちは、小滝のお米を、その美味しさと希少性に見合った、本来あるべき正当な価格で買取り、他の地域とブレンドすることなく、100%小滝米として販売しています。これまでの取引ではこのような買取方法、販売方法は出来ませんでしたから。

 

 

●本来あるべき正当な価格とはどういう事ですか?

澁江室長:例えば、小滝の側を流れる千曲川を超えればすぐに、コシヒカリで有名な南魚沼があります。小滝でも魚沼産に負けないくらい美味しいコシヒカリがとれますが、お米が育つ環境や条件がほとんど同じなのに、産地名やブランド名が異なるだけで、お米の買取価格がぐんと低かったりするそうなんです。小滝米のおいしさを正当に評価した結果が、私たちが直接買取る価格に反映しています。

 

●米販売のビジネスとしてパートナーになったことで、小滝ではどの様な変化がありましたか?

三枝社長:小滝の人達はこれまで、自分達が作ったお米がどう販売され、どう消費されたのかが全く知りませんでした。しかし、私達が関わることによって、販売者や消費者の生の声を小滝の人達へフィードバックできるようになった、つまり、生産者からするとお客様が見られる様になりました。
ブランディングを進める中で、公的な機関のギフトの賞や雑誌のアワードを頂いたり、地方創生商品の認定を受けたりしていますが、そうした事は農家の方々のやりがいにも繋がっています。支援を始めて3年経ちますが、色々な変化が生まれていると思います。集落の若者はほとんどが地元の役所に勤めていたり、他の仕事に就いていたりしますが、小滝で生まれた人達が「小滝に帰ってきたい」、「小滝でお米を作りたい」と言ってくれる環境を創ることが私達の目標の一つです。

 

●地域の農家の方々の就労人口も増えるといいですね。

三枝社長:最近では、農家の方ではありませんが、30代前半の夫婦が小滝に移住し、お子さんも生まれました。「移住の決心がついたのは、小滝の人達の人柄やみんなが温かく迎えてくれたこともあるが、サヱグサという会社が集落を盛り立てようとがんばってくれていることもひとつの要因です」と言われたのは、涙が出る程うれしい出来事でした。

 

●今後の小滝エリアがどう変わっていくのかますます楽しみです。

三枝社長:小滝エリアを私は最近、里山ワンダーランドと呼んでいます。自然そのものに価値があり、小滝の人達は、外部の人も積極的に受入れようとする、積極的に接点を持ちたいという想いがあります。今後も田植えや稲刈り体験の延長線上に、色々なプログラムが様々なフィールドから生まれることでしょう。
それには、お米で経済的にも自立していくことがとても重要です。今の取組みは何とか成立しつつあるので、わくわくしながら次の計画を立てているところです。

 

●こうした取組みを進めていくことで、社員の反応は如何ですか?

三枝社長:全てが共有できているわけではありませんが、様々な取組みを少しずつ具現化することによって、グリーンプロジェクトを本格的にスタートした5年前に比べると社員の理解も深まったかと思います。
会議や研修で、CSRとは?といったことを社員に押し付けてもなかなか難しい。
稲刈り体験やキャンプに参加したお客様がお店に来られた時に、とても楽しかったというコメントを言ってくださるわけです。そうした時にはじめてこうした活動と本業が繋がっていくわけですが、長期戦で考えてます。

 

●CSVに積極的に取り組む企業は、社員のモチベーションや帰属意識の向上にも繋がると言われています。

三枝社長:最近の社員の採用面接ではそれをすごく感じることが出来ます。採用面接の場では、グリーンプロジェクトの質問がとても多くて関心の高さも感じます。

 

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●私達の調査でも若い世代は社会課題の関心が高いという結果が出ています。

三枝社長:こうした事に高い関心を持つ若い世代が新しいものを創っていくという期待もあります。私達はソーシャルな活動だけをアピールするつもりはありませんが、結果としてそうした効果も出ています。

澁江室長:これらの活動をいかに現場の仕事とマッチさせていくことが大切です。社員一人ひとり、普段の仕事が忙しい中で、こうした活動をいかに自分事化し、お客様を自然に巻き込む事ができるかが重要であると考えています。
また、私自身モノを選ぶ時、その商品を提供しているのがどんな会社なのかはとても気になります。
サヱグサの服を着ていた子ども達が大人になった時、「あの活動をしていたサヱグサの服を、親は選んで着せてくれていたんだ」ということに気付いて、誇りを感じていただけるような活動をしていきたいと思っています。10年、20年先の話になりますが、今の子ども達が親世代になった時に、サヱグサという会社の理念に共感するから自分の子にはサヱグサの服を着せたいといった、会社の姿勢からもサヱグサのファンになっていただけたらと思います。

稲刈りなどのイベントの参加者は、子ども服の顧客様がほとんどなので、お店のスタッフも同行したりもします。親子で参加されてとても喜んで頂き、リピートでご参加されたり、お友達をご紹介いただいたり。そしてそのお友達がお店にも足を運んでくださる。これらはもちろん社員のモチベーション向上につながって、良い循環になっています。

 

●最後にその他の活動や計画等、今後の展望をお聞かせ下さい。

三枝社長:サステナブルな取組みを会社全体で常に進めていきたいと思っています。子ども服のブランドでありながら、お米のブランドも持ち、不動産業もやっていますが、全ての新たな企画はサステナブルを軸に進めています。
2016年夏には本社ビルの電力を、銀座の中でいち早く再生可能エネルギーに切り替えました。今、再生可能エネルギーの使用率は70%くらいですが、いずれは100%にしたい。そうしたことも企業姿勢としてきちんと進めていきたい。また、子ども達へ自然体験の場を提供し続けること、店頭イベントやさまざまな媒体を通じて、お客様にもさまざまな気づきを提供していきたいと考えています。

 

●本日はお時間をインタビューの機会を頂きましてありがとうございました。

みなさま:ありがとうございました。

 

 

■コラム執筆・インタビュアー
エンゲージメント・ファースト 萩谷 衞厚


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カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2017年11月21日

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