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Social Good な企業とその取り組み #5:パタゴニア

今回、本コラムでは、アウトドア・ウェアの製造販売を世界で展開し、サステナブル経営の代名詞とも言われるパタゴニア社のSOCIAL GOODな取り組みを紹介したいと思います。

パタゴニア社が掲げるミッション・ステートメントは、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」
2016年のブラックフライデーで、世界中の売上全てを寄付する取り組みを行っていますが、その推進意義やレスポンシブルな企業姿勢等についてインタビューを実施しました。

パタゴニアOneForThePlanet

(パタゴニア ブログより)

●ブラックフライデー全額寄付の取り組みに関して教えて下さい。
もともと当社では、選挙に行きましょうという活動をしてきましたが、アメリカの大統領選挙は大きな節目となりました。また、パタゴニアがこれまで助成金という形で、草の根的な環境関連団体を応援してきました。環境のための動く議員に投票しましょうという活動をしており、大統領選に向けても活動してきました。
今回の大統領選の結果は、環境に対して良い決断を下す大統領が選ばれなかったということで、具体的な行動として、次は何が出来るかということを模索していた時に、ブラックフライデーがあって。過去ブラックフライデーに対しては、消費について考える日、メッセージを発信する日としていました。2011年のブラックフライデーの日に発信した「Don’t Buy This Jacket」が話題になったりします。良く考えて、本当に必要であれば買って下さい、むやみに買わないで下さいということがメッセージに込められています。
大統領選の結果を受けて、今年のブラックフライデーを検討していた時に、スタッフの一人が、メッセージだけではなくて、具体的に店舗でも出来る取り組みとして、売上の全てを環境団体へ寄付をするのはどうかといった提案があって。それがマネジメント層にも了承されて実施に至りました。検討から決定まで、ほんの数週間で決まりました。

●商品が一番売れる日にその売上を全額寄付をすることはビジネス面からするとかなりの決断となりますね。
以前は、米国ではブラックフライデーに全ての店舗を閉めて、あえて、その日は売上を上げないという取り組みもしてきました。今回も全店舗閉めようかという議論もありましたが、メッセージは発信できても、実際の行動には繋がらない。今回の大統領選の外部環境を考えると売上を全部寄付する方が、現状に対しては良いだろうという判断でした。

●購入するという消費者のファンの行動も促すことになります。
行動に移すことが具体的に出来たことは、お客様も参加しやすかったのではないかと考えています。決断までもスピードは速かったです。

●日本ではどの様な反応でしたか?
日本でもすぐにやらないといけないということで、Webサイトや、Facebookページ、Eメールニュース等で告知をしました。大きな反響があって、それをきかっけに店舗に来られた方もいらっしゃいました。こうした取り組みに感謝しますといったメッセージも頂きました。

●こうした取り組みは一般的に、費用対効果が問われますよね。
このような取り組みに費用対効果といった言葉は一切使いません。パタゴニアのミッション(最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する)にある通り、ビジネスは手段であって、目的は、環境危機に警鐘を鳴らし、解決することなので、環境問題を使ってビジネスを成功させようとは考えていません。
環境・社会部門という部署ですが、CSRとは違います。売上が上がった時にやるものではなくて、会社全体としてソーシャルインパクトを出せるようにするにはどうしたら良いかを考え、いかにビジネスを手段として環境問題を解決するかを考える部署です。売上が上がるか上がらないかというよりも、どれだけ社会的なインパクトがあるかといった事がポイントとなります。そうすれば売上もついてくると考えます。社会的なインパクトと売上はビジネスの両輪なのです。

●マーケティング部署としても、環境問題の解決を目的とすると、売上が全てでは無いですよね。
いかにこうした活動を皆さんに知って頂いて、意思を表示して頂くか。ただ盛り上げるために広告を載せるといったことはしません。

●その結果、売上が上がったり、お客さんの推奨意向が高まったりしますね。
そうしたことがあって、パタゴニアの成長に繋がっています。

●成長を裏付ける数値はありますか?
創業以来、私たちのビジネスが着実に伸びていることがその証だと考えています。売上は投票行動として、指標の一つでしかない。いかにパタゴニアの考え方を支持してくれる人を増やすかというのが目的です。そうした人たちが、必要なときにモノを買ってくれることで、売上に反映されるといったことで、日本でも同様です。

●従業員にとってもそうした考え方は共感性が高いですね。
やはり、ミッションに惹かれて入社する人は多いですね。頻繁に会議の中でもミッションは?ということが出てきますし、ミッションの意味を考え直す機会は非常に多いと思います。
いろいろな人がいますが、パタゴニアの店舗で働くと、こうしたミッションステートメントがお客様への接し方にもあらわれ、必然的に常に考えさせられます。店舗によっては、ミッションに照らし合わせて、自分たちの存在意義を考えるセッションを自発的に行っていたりしますので、社員一人ひとりにミッションは程度の差はあれ浸透していると思います。
環境の勉強をして入社を希望する人も増えていますので、社外への浸透も広がっているかと思います。

●そういう意思をもって入社した人は、多様性の理解、対応力があったり、ビジネスパーソンとしても優秀かと思います。お客さんも当然こうしたことに価値を感じ、共感しているんですよね。
色々なお客さまがいますけれど、最高の製品を作ることが大前提にあるので、あえて環境問題がとか、良い会社だからというだけで商品を買って下さいといったことはパタゴニアは言いません。
やはり、機能性が優れている、長持ちするから結果的に環境にも配慮しているということで、良い製品だから買ってもらうというのが大前提にあります。環境にいいからと言って品質が悪いものであれば本末転倒で、それでは本当のメッセージは届かないと考えています。この製品があるからこそ、その売上を使って、ビジネスは手段としてやりたいことが出来る。アウトドアスポーツが大好きで、製品を使っていて、使いやすいとか、これで山に登れるとかいうのが大前提としてあります。

●きっかけは商品の良さで、そのうちに企業の姿勢も知ることになるんですね。またこうしたプロモーションを知ることによって共感性も高まりますね。
ずっとパタゴニアが好きでずっとパタゴニアを使ってくださる根強いパタゴニアファンは増えている。それは、パタゴニアの製品がすきなだけではなく、パタゴニアの考え方に共感して頂いているからだと思います。

●むしろ、他の気になる商品があれば、パタゴニアさんに意見を言うようになりますね。
実際に、多くのお客さまが製品へのフィードバックをしてくれています。

●マーケティングの目標に売上を上げることもありますか?
ビジネスがうまくいってないと、良いことをやっていてもお客さまもついてこないし、他社に影響を与えようとしても、売上が上がっていなければ、真似したいとも思われないし、売上も伸ばしつつ、私たちがやるべきことも進めていきます。但し、売上を伸ばすために広告やキャンペーンは行っていません。

●売上を上げて行くのに、割引とかキャンペーンをやっている印象は全くないですよね。やはり、お客さまの口コミとか共感からビジネスを拡げているイメージですね。共有価値をどう伝えていくのかといった計画等はあるのですか?
アウトドアやスポーツ・ウェアメーカーのため、専門誌やそうしたコミュニティにアプローチしてきました。良い製品であることを知って頂いた上で、ストーリーを知って頂く、どちらかと言えば、草の根的な活動が多かったです。

●貴社のストーリーを知って頂くきっかけを作るにはどういうやり方で進めていますか?
カタログで伝えることが多いですね。店舗はカタログを立体にしたものと考えています。私たちのビジネスは、カタログでメッセージを発信するところから始まっています。カタログでのストーリーの伝え方と商品・写真とのバランスは試行錯誤しています。メッセージも入れた方が反応は良いし、入れすぎてもいけなし。
創業者がクライミングで、岩に穴をあけて、その登山方法で良いのかといった問題提起のエッセイをカタログに書いたところから、クライマーたちに徐々に支持されてきました。

●ソーシャルメディアがない時代から、コミュニティで口コミで拡がっていったんですね。ビジネスと環境とが一体化しているということですね。お客様を対象にした調査等は実施していますか?
お客様の考えを知るために実施をしています。長年のファンは環境問題にも関心が高いという結果が出ています。また、新しいお客さまはむしろ、製品が好き、かっこいいからといったところから入って頂くことが多いですね。

●入り口は「商品」。でも使い続けて、貴社のメディアにも触れることにより、LTVが高まるということですね。

使っているうちに、環境に配慮していること、フェアトレードのことを理解し、かつ使いやすい、心地良いというのがわかる、入り口は広く、長く使って頂くことにより、パタゴニアを良く知って頂くことが重要です。パタゴニアを知って、環境問題を知る、興味を持って頂くこともあります。
最近は、入社動機にアウトドア好きだけではなく、社会に役立っている会社で働きたいという若者が増えています。

●Bコープの認証を取得されていることも教えて下さい。
日本独自というよりは、グローバルで認証を取得しています。Bコープの評価基準指標はとても参考になります。自発的に考えて取り組むことが、理想的だと考えています。日本人は基準があるとチェックしたくなる、それだけやっていれば良いとなるが、基準は継続的にアップグレードされるもので、チェックだけでは時代遅れになりますので、本当に良い企業とは何かの本質を考えることが大事なのではないかと思います。

●パタゴニアのミッションステートメントは、顧客や社員等、関係者全員のミッションであり、まさに共有価値になっていますね。
また、商品は責任をもって修理をすることを掲げていますね。ずっと使い続けましょう、修理もしますといったことは、売上の伸びに影響しません?

売上は伸びています。ブラックフライデーもグローバルで、2億円程度を想定していましたが、実際は、約11億円の売上がありました。応援してくれた人の声も想定以上でした。商品を買うならその日にしようと思って店舗に来られたお客様が多かったです。当日のレシートには、売上の100%が寄付されますといったメッセージがいれられました。

●寄付の団体はどの様にして選定していますか?
寄付先を募集し、審査をして決めています。随時申請を受け付けています。興味のある方は、ぜひパタゴニアのウェブサイトから申請してください。

●最後に改めて今回のブラックフライデーの取り組みを振返って、メッセージをお願いします。

パタゴニアの創業者や経営層には、強い環境への危機意識があります。私たちの売上の100%を寄付することも、彼にとってみれば、危機にさらされている環境のことを考えれば、当たり前のことなのだと思います。今は、新しい取り組みとして、パタゴニア・プロビジョンズという食品ビジネスもスタートしています。環境再生型農業という環境を回復させていけるような農業の普及を目指して食品ビジネスをやろうというものです。食品市場は、アウトドアよりもはるかに大きな市場です。私たちは、今後、その食品ビジネスのあり方を変えていきたいと考えています。

お話をお伺いした方々:
パタゴニア 日本支社
環境・社会部門 ディレクター 佐藤 潤一 様
環境・社会部門 助成金プログラム・オフィサー 加藤 秀俊 様
マーケティング 松原 聖恵 様

伝説的なクライマーでパタゴニアの創業者でもあり、環境活動家であるイヴォン・シュイナード氏のDNAが今も脈々と受け継がれるパタゴニア。その企業姿勢を知ることで提供される商品もより魅力的に映り、愛着が湧いてしまうから不思議です。
そのパタゴニアの高クオリティの商品はもちろん、存在意義や提供価値が理解されることによって、パタゴニアと顧客との間に、強固なエンゲージメントが結ばれると言ってよいでしょう。今後の食品ビジネスにも大いに期待しましょう。

このたびはインタビューに協力頂きまして、ありがとうございました。

■コラム執筆者

エンゲージメント・ファースト
萩谷 衞厚

カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2017年04月21日

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