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エスノグラフィーの観察のとき、どんなことを考えていますか?

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UXデザインユニットの川田です。
質的調査の手法としてエスノグラフィという言葉をマーケティング、コミュニケーションのビジネスシーンでも聞くことが多くなってきました。webサイト制作においても、スマートフォンやアプリの登場により、家でPCの前に座って閲覧する以外の利用が当たり前になっています。今後はIoTの文脈の中で、インターネットの活用はさらに多様になっていくと考えられています。現在も、そしてこれからもますます、利用者を深く理解し、共感することから初めていくUXデザインアプローチのプロジェクトにおいて、エスノグラフィによるユーザー観察は重要度を増していきます。

今回私は、※1パロアルト研究所(parc)が提供しているワークショッププログラム、※2エスノグラフィを利用したイノベーション・ワークショップを受講してきました。そのプログラムに参加し、実際にエスノグラフィによるユーザー観察をおこなってきました。プログラムの観察のパートを終え参加者で振り返りをした際、個々人が考えていることがまったく違い、結果得られたデータもかなり違いました。手法としてどう見ていくかについては、さまざまな書籍で紹介されていますが、実施の考え方や視点について知る機会が少ない一方で、重要であると感じました。そこで、今回はそのプログラムにおける観察時に、私がどのようなことを考えていたか、どんな観察を行っていったか共有してみたいと思います。なお今回の私の考え方や実施方法が正解というわけではなく、あくまで私はこうしているという一例であり、正解ということではありません。視点については、経験を積んで行く中でそれぞれに正解を見つけていくものとしてみていただければと思います。

今回のテーマはある施設の観察で、「来場者にとって最高の体験を提供するため何ができるかのヒントを見つける」というものです。私にとっては、普段はなかなかない「施設」というリアルな接点に対してのテーマですが、体験設計という意味では、日ごろのUXデザインと同じとも考えられるので、実務へのフィードバックもわかりやすいです。では実際にどんなことを考えながら観察をしていったのかをご紹介します。

1.何を求められているかを考える
今回のテーマが「最高の体験を提供するために」なので、よりその施設を楽しむための「良いところ」を探そうと考えました。逆の考え方は課題を探す、つまり「悪いところ」を探す
観察です。観察にいくと「悪いところ」にすぐに目がいきます。それはそれでとても大事な視点で、もしこれまでに指摘されたことがない「悪いところ」が見つかれば、良い改善につながります。しかし今回は時間が限られる中で、「今より良い」ではなく「最高の」体験を提供したいということなので、悪いところを探すよりも「良いところ」の発見につながる見方をしていこうと考えました。

2.まずは施設全体を歩き回ってみる
今回のテーマの対象となる場所が施設と広かったので、まず会場全体を見ることにしました。地図はもっていましたが、どこにどんなものがあるのかを肌で感じ、人の集まり方とそこでは何をしているのかを観察していきました。大きく、多数の人が集まる人気スポットのような場所と、集まっている人は少ないもの滞在時間の長い場所、人数も少なく滞在時間も短いものの、必ず誰かがいる場所がありそうだなと考えていました。またあわせて平日の昼間の時間でしたが、どのような客層が多いのかといったところも見ていました。この時点では、なんとなく漠然と「そんな感じがする」程度の感覚で、決め付けないことを意識していました。

3.入り口に戻ってスポットごとに立ち止まってみる
一度入り口に戻って、ひとつひとつのエリアを少し時間をかけてみていきました。ここでやっていたことがいくつかあります。いくつかご紹介します。

・ひとつの場所にスマートフォンで写真を撮りながらとどまっていたカップルの会話を聞いた
・そのカップルが写真を撮る以外にどんな行動をしているかを見る
・そのカップルが立ち去ったあと、どんな写真を撮っていたかを同じ場所にたって、スマートフォンで写真を撮ってみる

文字で書くと気持ち悪いですね。。後付ですが、人に注目して、広い視点、中距離の視点、近距離の視点、その人の視点の4つで、行動と会話をみていっています。

4.目立たないようにする
エスノグラフィの観察は観察者がいることで他の方が意識をしてしまって、普段どおりの行動をしてくれなくなってしまうことを避けなければいけません。普段どおりでない行動になってしまった場合、せっかくとったそのデータは使えないものになってしまいます。そこで観察者はできるだけ環境に溶け込む努力をしなければいけません。観察者は、人を見る、メモをとる、写真に撮るといった一般の方とは明らかに違う動きをするので、普通にすると目立ちます。そこで私が実際にしていた行動の例です。

・メモはメインの導線からずれた死角で短時間でする
・写真は他の写真を撮っている人たちと同じ向きで
・近距離での観察は凝視は避けて、周辺視でする

これもだいぶ気持ち悪いですね。基本的には見せていただいているので、対象者にも施設にも迷惑をかけることがあってはいけません。

5.メモは他の人に伝えることを目指すが、他の人が読める必要はない
記録はメモと写真でとっていました。今回は場所により環境が違うので、「どこで」「誰が」「どんなことをしていたか」「どんな会話をしていたか」を書いていきました。情報量が文字で書くには多いので、下手でも絵で書いていました。自分にだけ読めれば良いといわれますが、後日あらためてみると、だいぶ忘れていて、ちゃんと思い出すことができないような内容です。ですので「その日中に」自分だけが読み取れれば良いというメモであったと思います。メモの内容もその場で行われていた事実だけを書いて、その日のうちにまとめます。下の画像は実際のメモの一部です。なんのことやらわかりませんね。

エスノグラフィーの観察

6.記録は質よりも量
今回写真は非常に撮りやすい環境でしたので、40分で200枚くらい写真を撮っていました。
自分自身が思い出せる、また短時間で多くの情報を得られることもそうですが、次の分析のステップでチームメンバーに共有するとき、いきいきとした実感を持ってもらうためにも多くの写真を撮ることはとても重要です。このあと分析をするにあたって「最高の体験」を提供するヒントを見つけるためにもインプットは多いほうが良いと考えました。

いかがでしたでしょうか。

冒頭でも書きましたが、私個人の考えていたことで、これが正しいわけでは決してありません。良い観察であったかどうかは、次のステップの「分析」をしたときに良い示唆につながる事実が拾えていたのであれば、良い観察であったということになります。むずかしく感じるかもしれませんが、アンケート等のこれまでの調査では見つけられなかった、新たな施策につながる、これまでとは違ったユーザーの姿を見る機会になると思います。

エスノグラフィを使って質的データの分析からサービス設計や、アプリ設計をしたいという方がいらっしゃいましたらUXデザインユニットまでご相談ください。


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カテゴリ: UXデザイン
2017年03月02日

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