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【第八回】ネスプレッソのコーヒー農家支援(CSVコラム)

Q.ネスプレッソのリーダーとして、なぜ共創価値が御社の優先事項の1つなのでしょうか。

A.
価値(CSV)は我社の事業にとってサステナブルな未来を築き、コーヒーの品質と味というブランドプロミスを担保するために欠かせないものです。共に働く農家の未来を守り、持続可能な農業を営むことができるようにすることなのです。そのお陰で、我々はお客様にブランドの約束を届けることができるのです。農家に対して価値と持続可能性を創り出さずに、我々自身がサステナブルであり続けることは不可能です。そしてCSVはお客様に価値をもたらすことでもあります。農家と密に協業することで、高品質なコーヒーをサステナブルに供給し、特上のコーヒー体験をお客様にお届けする、長くコーヒーを供給し続けることのできる持続可能な企業であり続けられるのです。共創価値を創り出すには、その手法を本業のビジネスモデルと結びつける必要があります。故に、我社ではCSVの考えを組織全体に根付かせています。

我々は自社のサステナビリティ・アプローチを、単に社会への弊害を最小化するだけでなく、それ以上のことを達成できるよう常に改良し続けています。現在、広範囲にわたって実行している農林業プランや、高品質のコーヒー生産を復活させる南スーダンでのプロジェクトなど、共創パートナーと共に開発してきた革新的なサステナビリティ・プログラムは、我々が共創価値を創り出し、自社バリューチェーン内の全ステイクホルダーに好影響をもたらし続けるという意思表明なのです。2020年のサステナビリティ・コミットメントの中で、最高の品質で最もサステナブルなコーヒーを世界中に供給し続けるという野心的な目標を設定しました。

Q.御社の業界で目下発生している社会的な課題は何ですか。それら課題にCSVソリューションでどのように取り組めるのでしょうか。

A.
社会経済状況と厳しい気候変動により、最高品質のコーヒーを供給する体制に対してと、より広義には、コーヒー農家コミュニティにおける福利厚生に対するリスクが増大しています。農家は生産性の低下とコーヒー豆価格の変動、為替レートの上下動、就業不能時や災害時の損害保険の欠如、退職準備金や不作保険の欠如といった問題に晒されています。

コーヒー農家は高齢化問題にも直面しています。若い世代はコーヒー農業を敬遠し、都会へ出て他の職業についてしまいがちです。コーヒー企業としての我社にとって、農家に十分な価値を創出し、コーヒー農業が魅力的な職業で有り続けることは極めて重要なことです。将来、十分にコーヒーを育てる農家が在ってはじめて、ネスプレッソ グラン・クリュ(Grand Cru)の需要に応え続けられるのです。

Q.御社の組織はシェアードバリューのために、例えばどのような改革をされていますか。

A.
AAAサステナブル・クオリティ・プログラムの一環として、ただ今申し上げたような幾つかの課題に取り組んできました。その一つの焦点が、革新的なソリューションで農家福利厚生の向上に道を見出すことです。故に、昨年試験的にカルダスとコロンビアにおいて、AAAプログラムに加入しているコーヒー農家の退職基金を設立しました。コロンビア政府労働省、アグアダス・コーヒ生産者協同組合、コーヒー生産者エキスポカフェ、フェアトレード・インターナショナルとの官民共同による画期的な協業の一環です。ガテマラでは農家に利益の出る農業を担保し、家業の発展と金融スキル習得のためのトレーニングも実施しました。

AAAプログラムは、NGOパートナーのレインフォレスト・アライアンスと協力しながら革新的な手法とツールで農家と農産物消費者に共有価値を創り出そうとする試みの一例です。この契約農家からの直接調達というユニークなモデルは、品質とサステナビリティ、生産性原理に沿いながら、より良い品質のコーヒーとより良い生産環境、より良い社会状態、そして農家により高い農業収入をもたらしています。

パートナーと協業することが、共有価値を生み出し社会に好影響をもたらすのに不可欠であると強く信じています。孤軍奮闘していては成果を出すことはできません。

Q.社会とビジネスの繋がりの測定について、何か学ばれたことはありますか。

A.
興味深いことに、シェアードバリュー・アプローチを事業モデルに組み入れると、事業をドライブする革新的なソリューションだけでなく、環境や農業地域の社会価値増大の方法も見つかります。コロンビアでコーヒー生産者地域研究センターが行った調査から、AAAプログラムが農業コミュニティにもたらした好影響が具体的に判明しました。事実、AAAプログラム参加農家では、プログラム非参加の農家に比べて社会的コンディションが22.6%、農環境は52%、経済状況では41%もの改善が見られました。

コーヒー豆

もうひとつ、社会的価値と事業価値が環境価値と一体化した詳しい例をお話したいと思います。コロンビアで、弊社が購入するコーヒーの品質を改善すべく、地元のパートナーとセントラルミル(中央粉砕場)に共同出資をしました。個々の農家がコーヒーチェリー(コーヒーの実)をコーヒー豆へと独自に加工するのではなく、共同施設で加工することでより一定の品質を保ち、豆へのダメージを抑えます。お客様に最高品質のコーヒーをお届けすることに注力したのです。

その結果、コーヒー豆の損耗率が従来の50%近くから0%へと低下しただけでなく、AAAコーヒーの取高が倍増し、農家とその家族の生計も向上、AAAプログラム参加農家の正味収入が17%も増加しました。また収穫期の労働時間も短縮され、一日4時間以上を農場経営に回す余裕が生まれたのです。環境的な観点では、セントラルミルにより水消費量が63%削減され、それまでの粉砕過程から出ていた水質汚染が解消されました。これを称してトリプル・ウィンと呼んでいます。

Q.シェアードバリューを実行する過程で直面された最大のチャレンジは何でしょうか。
それを乗り越えた先にどんな機会を予見されていますか。御社単体ですか、あるいは共創パートナーと共に、でしょうか。

A.
シェアードバリューを実践するには時間とリソースが必要です。自社の事業で毎日コミットしなければなりません。忍耐強く、謙虚であり、調整と改善を続けてゆかねばなりません。それを単独で行うのは不可能です。我々は、農家にAAAプログラムへ参加してもらう際、障害にぶつかりました。それまでは末端の生産者に関わらず、我々が何をしているかを説明してこなかった。プログラムでは、農家を支援、助言し、その運営法を向上させることでコーヒー豆の品質を高め、サステナビリティを維持し、生産性も上げる。その構想を最初に農家に伝えた時に、返ってきた言葉は、「我々は生涯、それをやってきた。自分のしていることはよく理解している。何故やり方を変えなければならないのか。」でした。以来、11年間常に生産現場にあって、弊社が抱える300人以上の農学専門家にコンタクトできるネットワークを整え、サステナブルなコーヒー農業のための実践的な課題解決を提供し、より多くの声に耳を傾け続けることで、60,000世帯の農家をなんとか組織化することができました。コスタリカのある農家が、我々の薦める手法が間違っていて、御自身が20年間続けてこられたやり方のほうがより優れていることを証明するために、わざわざプログラムに参加されました。それから彼は、「間違っていたのは自身の長年のやり方であって、AAAプログラムの薦めた方法が彼の農場経営に役立った、プログラムに参加出来て喜んでいる」と話されました。この言葉が最高の報酬です。

5月12日、13日、ニューヨークで開催される2015 シェアードバリュー・リーダシップ・サミットでのジャン・マルク・デュボアザン氏のベストプラクティス・ディスカッションをお聴き逃しなく!

ジャン・マルク・デュボアザン氏


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■コラム執筆者
株式会社エンゲージメント・ファースト
グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト
統計士・データ解析士
渡辺 弘

watanabe

株式会社エンゲージメント・ファースト Facebookページ
https://www.facebook.com/engagement1st

共創マーケティングの企画・立案のお問い合わせ
https://www.members.co.jp/contact/app/input.php?ct=service

カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2015年05月11日

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