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【第七回】CSVの展開分野と代表的事例(コカ・コーラ・ブラジル)

コカ・コーラ・ブラジルが取り組む、ブラジル低所得層の職業訓練による地域コミュニティのCSVについてお伝えします。

コカ・コーラ・ブラジルのCSV

コカ・コーラ社は500以上にも上る製品ポートフォリオを持ち、1日あたり19億個もの飲料を提供している世界最大の飲料メーカーです。2009年ブラジルにおいて、同社はブラジルの低所得層をターゲットにしたマーケティング活動を開始しました。当初の活動は、まず販売網を構築・拡大し、マスマーケティング・キャンペーンを展開するという通常のアプローチによるものでした。しかし、間もなくして、そんな従来型のマーケティング手法がブラジル低所得層開拓には不十分だということが判明。全く新しい市場開拓法が採用されました。それが同社のCSV活動の1つ、「コカ・コーラ・コレティーボ・プログラム」です。

ファベーラ*の社会課題

コレティーボ・プログラムは、低所得層が抱えるさまざまな課題を解決することで、彼らの生活力と購買力=潜在需要そのものを創り出し、コカ・コーラ製品の売上増と、ブランドへの長期的なロイヤルティを形成しようとする試みです。社会的ニーズを掴む為にコカ・コーラ・ブラジルの上層部は、ブラジル低所得層地域に入り、低所得生体と暫く生活を共にしたそうです。そして、「地元小売業の低生産性」、「若年層の高失業率」、「低レベルの公教育」、「経済活動への限定されたアクセス」といった社会課題が認識されました。これらの社会課題はいずれもコカ・コーラ本業のノウハウで解決可能なものだったのです。

*Favela=貧民街(Weblio辞書)

地域経済の底上げ

まず始めに「コレティーボ・リテイル」という8週間の職業訓練プログラムが導入されました。2013年末までに、ブラジル126カ所で約6万人の未就業の若者に対するトレーニングが行われ、高等教育に進めない低所得層の若者が小売店経営の基礎を学びました。同プログラム卒業生の少なくとも3割が卒業6カ月以内に就職し、プログラム対象地域の平均世帯年収を50%押し上げました。未就業の若者の就職を支援し、生計を成り立たせ、地域経済そのものを底上げすることにより、新たな飲料消費需要が創出されたのです。結果、コレティーボ・プログラム開始以降、コカ・コーラ・ブラジルの売上高も年率9.5%以上の高成長を続けています。

CSVプログラムの拡張

コレティーボ・プログラムが軌道に乗った後、コカ・コーラ・ブラジルは同プログラムをさらに拡張し、下記7種類の人材育成プログラムを展開しています。

  1. コレティーボ・フォレスト
    熱帯雨林地帯でのスーパーフルーツ生産ノウハウを提供。サステナビリティと環境に配慮しながら原材料を生産できる農家を増やす。
  2. コレティーボ・ロジスティクス&プロダクション
    流通、製造、在庫管理のためのローカルパートナーを育成。
  3. コレティーボ・アントレプレナーシップ
    コカ・コーラ社のバリューチェーンにつながる小規模事業を起業するベンチャー経営者を育成。
  4. コレティーボ・リテイル
    未就業の若者に対する小売店経営トレーニングを行い、コカ・コーラ小売店ネットワークに就業する人材を育成する。
  5. コレティーボ・イベント・エグゼキューション・エクセレンス
    同社が企画するイベントを運営するスキルを持ったプロデューサーを育成する。2014年のFIFAワールドカップ、2016年のオリンピック等のイベント運営力を強化。
  6. コレティーボ・リサイクリング
    リサイクリング共同組合を組織し、リサイクル施設への投資、技術者育成により効率とサステナビリティを満たすバリューチェーンを完結。同社のバリューチェーンコストの削減も図る。
  7. コレティーボ・アーツ
    リサイクルされた廃棄パッケージを用いた工芸品、アクセサリーなどを作成するデザイナーを育成。地域商業の活性化を促進する。

これら7つのモデル・プログラムにより、コカ・コーラ飲料製品の原材料調達から製造、流通、販売・マーケティング、顧客サービス、製品リサイクルまでのバリューチェーン運営に必要な人材とスキルが育成され、コレティーボ・プログラムはブラジル市場での同社成長力の源泉となっています。市場が抱える社会課題に注目し、その社会課題を解決しながら自社のバリューチェーンを構築し、消費者の購買力そのものを創出する壮大なCSV事業と言えるでしょう。

CSRアプロ-チとCSVアプローチの違い

CSR CSV
動機 企業の社会的責任、地域コミュニティ支援 社会課題解決を支援することで企業の競争力を増大させる
課題選択 地域コミュニティ、またはステイクホルダーのニーズに基づく 自社利益の最大化に不可欠であり、かつクリティカルな社会課題に対応
社会への影響 より多い、または、より良きコト 持続的な課題の解決
事業価値 名声 長期的な利益
コカ・コーラ・ブラジルのケース 「プラト・ポビュラー」による金融支援 「コレティーボ・リテイル」事業によるリーダーシップ

(SVI CASE STUDY // COLETIVO RETAILを元に執筆)

カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2015年02月19日

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