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CSVは利益につながるか? カンヌを受賞した、アメリカ大手外食チェーンによる社会貢献型プロモーション事例

今回のコラムでは、「カンヌライオンズ2014」CYBER部門・PR部門でグランプリをダブル受賞したアニメーション動画&モバイルゲームアプリ「The Scarecrow(カカシ)」(Chipotle Mexican Grill)のキャンペーン詳細と、その成功のポイントについてご紹介します。

キャンペーン概要

キャンペーン実施の背景

遺伝子組み換え作物や加工食品、ジャンクフードへの依存などが社会問題化する中、”Food With Integrity(誠実な食品を)”というビジョンを掲げるChipotle(メキシカン・フードチェーン)は、人々に食の安全を見直す機会を提供する必要があると考えていました。Chipotleは社会課題を解決し、“Cultivate a Better World”というブランドメッセージを効果的に伝えるため、アニメーション動画とゲームを組み合わせたキャンペーンを展開しました。

主な実施内容(アプローチ)

人々に食の安全を考えるきっかけを効果的に提供するため、人々が楽しみながらChipotleの問題提起や取り組みに触れることが出来るようにエンターテイメント性の強いコンテンツを検討。子供やその親に積極的に参加してもらえるよう、彼らが「親しみやすい」アニメーション動画と「長時間楽しむことのできる」無料ゲームアプリの2つを制作・配信しました。

Youtubeにてアニメーション動画“The Scarecrow” を公開(2013/09/12)

アニメーション主題歌のiTunes配信(2013/09/12)

グラミー賞受賞アーティストであるFiona Appleによるカバー曲“Pure Imagination”(映画「夢のチョコレート工場(1971)」劇中歌)を採用し、動画公開と同時にiTunesで配信リリースを実施(※配信時価格:$0.6)。キャンペーン参加意欲やChipotleへのロイヤリティを高めるため、収益がChipotleの活動(農業・食育サポート等)に活用される「寄付つき楽曲」として販売しました。この施策の背景には、楽曲購入を通じて誰でもChipotleの社会活動に参加し、課題解決に貢献出来るよう仕掛けたことが伺えます。

iTunesにてゲームアプリを配信(for iPad, iPhone, and iPod Touch)(2013/09/12)

キャンペーンの成果

Youtube再生回数

企業の宣伝であることを感じさせない点でソーシャルで話題となり、公開わずか2週間で650万回を突破。ソーシャルメディア分析ツールのForSightデータによると、公開後10日間(2013/09/12~22)の”The Scarecrow関連投稿のうち、98%がpositiveな内容で語られており、ソーシャルで好意的な口コミが一気に伝播したことがわかります。

iTunesゲームアプリ ダウンロード数

リリース4日で25万ダウンロードを突破し、米国で累計100万以上のユーザーを獲得。アプリの評価レートは平均4.0を記録し、プロモーションゲームでは異例の数字を記録しています。

キャンペーン成功のポイント

1.提起した社会問題に対するアクション(=キャンペーン参加方法)の明確性

Chipotleは、この施策で食の問題を解決する行動を消費者に啓蒙し、多くの参加者を獲得しています。その成功の鍵は、提起された問題に対して消費者が取るべき行動が明確であったことです。つまり、それは

  • ゲームを無料ダウンロードし
  • 寄付付きiTunes楽曲を購入し
  • Chipotleで安全な食事を楽しむ

というアクションです。このように、社会の関心度が高い問題を提起し、その後取るべき行動をわかりやすく伝えたことで、キャンペーンの認知・参加が広まったと考えられます。
事実、ChipotleのコミュニケーションディレクターChris Arnoldが「人々が自分の食べる食品がどこからきているのか、どのように生産されているかを考える機会を得れば得るほど、人々は高品質の食品を追い求めることがわかってきている。つまり、人々はChipotleを選択してくれるようになるのだ。」と述べている通り、社会問題提示とキャンペーン成果の因果関係が伺えます。

2.宣伝色を排したコンテンツ

プロモーションであることを感じさせず、娯楽として楽しめるコンテンツを提供したことで、多くの消費者に受け入れられたと考えられます。
実際、Chris Arnoldは「人々が受け入れやすいエンターテイメントを利用して人々に複雑な問題(食の安全性の問題)を考えてもらうようにした、というのがコアアイデア。これは、現在Chipotleが数年に渡り大切にしているマーケティング戦略の考え方の1つだ。」と語っています。米国メディア関係者やソーシャルエンゲージメント設計者など専門家もtwitterで絶賛しており、人々の共感を得るコンテンツがソーシャルでの拡散要因となっていることが伺えます。

3.バイラル効果

感情的なレスポンスを引き出す動画にしたことで、ソーシャルでの拡散とエンゲージメント獲得に成功しています。これに関しブランディング&マーケティングプランナーDavid Vinjamuriは、「Chipotleは、自社のブランドメッセージや取り組みの支持者だけでなく、反対する人々からも感情的反応を引き出すことを試みている。伝えようとするストーリーへの批判が多ければ多いほど、共感する人からのブランドエンゲージメントは高まるのだ。」と述べています。
事実、キャンペーンを「偽善だ」「誇張しすぎだ」と批判する人も存在し、Youtubeで皮肉なパロディ動画まで投稿されました。しかし、アニメ動画公開後SNSに投稿されたネガティブな声は2%にすぎず、Chipotle購買意向を示す投稿は68%と高い数値を記録しています。「メッセージをコントロール出来ないのはリスクだが、有料広告と比にならぬ信頼を獲得し、エンゲージメントも高まる。」とDavid Vinjamuriが語る通り、ソーシャルで支持者・批判者双方の反応を引き出すことで、ブランドへの強い好意を獲得出来るのです。

まとめ

今回のコラムでは、「カンヌライオンズ2014」でCYBER部門・PR部門のグランプリをダブル受賞したWEBキャンペーン「The Scarecrow」(Chipotle)についてご紹介しました。キャンペーンの背景には3つのポイント(1.提起した社会問題に対するアクション(=キャンペーン参加方法)の明確性、2.宣伝色を排したコンテンツ、3.バイラル効果)があり、多くの参加者とエンゲージメントの獲得に成功しています。

社会問題へのアプローチとプロモーションを直接結びつけ、マーティング成果を出していくには、Chipotleのように中長期的な戦略が必要となるかもしれません。しかし、社会のニーズや問題が複雑化する中、社会の共感を得ながら絆を強めるマーケティング手法は今後重要になってくると考えられます。

顧客ロイヤリティの向上に課題を抱えるブランドのマーケティングご担当者様も、宣伝色を排したコンテンツを通じて人々の共感やアクションを獲得するWEB施策を検討してみてはいかがでしょうか。

【記事参照元】


カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2015年02月16日

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