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【第六回】CSVの展開分野と代表的事例(ベン&ジェリーズ社)

今回は米国の高級オーガニック・アイスクリーム・メーカー、ベン&ジェリーズ社のCSVをご紹介します。1978年米国バーモント州でベン・コーエンとジェリー・グリーンフィールド氏の2人によって創業された同社は、高級アイスクリームとフローズン・ヨーグルト、シャーベットを製造販売する世界的なアイスクリームのブランド企業です。日本でも表参道ヒルズや、舞浜のイクスピアリ内など、現時点では4店舗を出店しています。

同社は1988年より社会的ミッションへのコミットメントを社内に啓蒙。環境問題やアメリカ酪農業への貢献に一貫して注力してきました。5月のShared Value Leadership サミット2014でもCEOが基調講演者の一人として同社のCSV活動についてプレゼンテーションを行いました。

同社ではCSVの考え方が事業ミッションの中に取り入れてられています。すなわち、

  1. 原材料を購入する生産コミュニティ、
  2. 社員が暮らし働いている従業員コミュニティ、
  3. 自社商品を販売している世界中の消費者のコミュニティ

という3つの地域社会をつなげて共存共栄させ、公平・公正な社会・経済・環境の発展に資するというものです。英語で「Linked Prosperity」(繁栄の連結)と呼ばれています。

この3つのLinked Prosperityの元に「社会的正義」「公正なグローバル経済」「環境活動」「持続可能な食糧供給システム」から成る4つのコアバリューが定義され、日々の事業活動における意思決定が行われています。では具体的な活動内容を挙げてみましょう。

製品によるミッション具現化:

同社のアイスクリームの原料は、全て遺伝子組み換えが行われていないオーガニック農産物が使用されています。またバニラから、砂糖、バナナ、コーヒー、ココアなど様々な現在料がフェアトレード認定を受けた生産者から調達されており、不当な搾取や低賃金労働におる原料生産を排除する方針が取られています。これにより各種現在料の生産農家に適正な利益の還元を担保し、農業を持続的に営むことが出来るよう配慮されているのです。

またベン&ジェリーズの「チョコレート・ファッジ・ブラウニー」に使用されているブラウニー(チョコレートケーキの部分)は全てニューヨークのクレイストン・ベーカリー社から調達されています。このクレイストン・ベーカリーは、ニューヨーク・ヨンカーズ市の低所得者からの従業員を雇用し、職業訓練のみならず、利益の一部がニューヨークの低所得世帯の育児、住宅や医療サービスにあてがわれるグレイストン基金にも拠出されます。

酪農農家の保護と指導:

さらに同社はアイスクリームの原料の牛乳を生産する酪農家に対しても、Caring Dairy(ケアリング・デアリー)という仕組みの下、多方面での支援を行っています。
1.土壌、2.土壌管理、3.土壌の栄養分、4.牧場の財政管理、5.人財管理、6.害虫対策、7.生物多様性、8.動物の飼育法、9.エネルギー、10.水資源、11.地域経済への影響、12.測定学、という酪農業に関連する様々な周辺分野において必要な知識とノウハウを提供することで、米国の酪農家が安心して生業を継続できるよう全方位での共創活動が展開されています。

日本では、地方の過疎化と少子高齢化により、酪農家のみならず農林水産業従業者の高齢化と後継者不足が問題化してきていますが、同社の酪農家支援は大きな参考となるでしょう。

社会環境アセスメント報告と年次KPIトラッキング:

以上のような本業分野でのCSV活動の進捗が、同社ではKPI(重要業績評価指標)として数値化され、年次報告書上で公表されています。Quality of Results (QoR) フレームワークと呼ばれるCSV活動成果を測定し指標化する試みが2010年から開始され、2012年から2013年にかけて大きくスコアの伸長が見られます。主に上記Caring Dairy活動の進捗度合い、フェアトレード認定現在料の取扱量の増加が報告されています。これらのKPIがボトムライン(利益)に加え、トップマネジメントの報酬査定にも取り入れられているとのことです。(http://www.benjerry.com/about-us/sear-reports/2013-sear-report)

CSVによる新しいマーケティング/ブランディング:

最後にニューヨークShared Value Leadership サミット2014での同社CEO Jostein Solheim氏の講演内容を引用させていただきます。同氏によると、今後ベン&ジェリーズ社は長期的視点に立って、パーパス・ドリブンなマーケティングを展開してゆくそうです。すなわち、社会的ミッションの達成、社会との共創活動から生まれるユニークな製品経験を通じて、ユニークな企業文化の形成することで同社のブランドを強化する。そうした活動に取り組む姿勢と成果が支持されることで、同社のアイスクリームの味と共に値段(=社会的価値)が裏付けされ同社のプレミアム・ブランドのポジションが形成されてゆくのです。ベン&ジェリーズのロイヤル・カスタマーとは、この企業ミッションに賛同する人のことを意味します。

Solheim氏曰く、これがCSV時代の新しいブランディグのアプローチであり、ブランド名を連呼するだけのマス広告キャンペーンは一切行わないとのことでした。「私のボーナスは、ベン&ジェリーズの売上に加えて、どれだけソーシャル・インパクトを創出したかによって支払われる。」事業ミッション・ステートメントにCSVの概念を取り入れ、現在料生産、調達、製品、地域還元までを一気通巻で実践しようとする好事例の一つと言えるでしょう。


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■コラム執筆者
株式会社エンゲージメント・ファースト
グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト
統計士・データ解析士
渡辺 弘

watanabe

株式会社エンゲージメント・ファースト Facebookページ
https://www.facebook.com/engagement1st

共創マーケティングの企画・立案のお問い合わせ
https://www.members.co.jp/contact/app/input.php?ct=service

カテゴリ: Creating Shared Value(CSV)
2014年09月24日

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