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【第五回】統計・サイト解析コラムデジタル・マーケターの為の「統計データ読み取り」

7/19付の日経電子版(有料会員限定)に『「社会貢献で商品選ぶ」 比、消費者の79%』という記事が掲載されていました。

「社会貢献で商品選ぶ」 比、消費者の79%

「高くてもCSRに配慮した企業の製品を買うと答えた人の割合はフィリピンが79%と最多で、日本(33%)の2.4倍だった。」とあり、残念に思い記事を詳しく追いかけてみました。

日経の記事で参照元とされているニールセンの英文レポートは「企業の社会的責任(CSR)についてのグローバル調査」。
英語では「Nielsen Global Corporate Social Responsibility Report – June 2014」からダウンロードすることができます。

このレポートを読む限り、上記のようなCSR配慮企業の製品を買うと回答した国別比較は記載されておりません。
下記のように地域別で同回答率の2014年数値と2011対比が図表になっていました。

アジア太平洋
64%(対2011比+9%)
ラテンアメリカ
63%(同+13)
中東・アフリカ
63%(同+10)
北米
42%(同+ 7)
欧州
40%(同+ 8)

日経記事のフィリピンが79%で、日本が33%ってどこから来た数字なのかと更に検索してみたところ、ニールセンから2013年にも「Nielsen Global Corporate Social Responsibility Report」が公表されていました。以下URLからダウンロード可能です。

このレポートには、国別に「高くてもCSRに配慮した企業の製品を買うと答えた人」の割合が記載されており、トップはインドの75%。フィリピンは2位で71%、日本はずっと下位51番目で31%。

この2013年Q1の数字に上記アジア太平洋の増分を掛け合わせるとフィリピンが約77%で、日本が約34%。ほぼ7/19日経電子版の数字に近くなりました。
ニールセンのレポートが前回は国別で今回が地域別だったので、日経の記者さんが大体の比率から試算して記事を書いたのか、あるいは2014年の国別数値がきちんと発表されていて単に私の検索不足なのか。いずれにしても、そんな急激には変化しないだろうから日本人の意識がフィリピンより遥かに低く、60カ国中下位10位圏内にいることは納得できました。改めて残念に思った次第です。

日経の7/19記事を読んだ時、(失礼ながら)フィリピンは昨年の巨大台風による災害で一時的に社会貢献意識が高まっていて、日本同様時間が経てば低下してくるのだろうと思いました。しかしニールセンのレポートでは2011年も68%で2位、2013年はQ1の数字だから巨大台風発生以前。ということは以前から国民のCSR企業選別意識が日本よりも高いということですね。日本は2011年25%からだいぶ伸びてはいるものの、まだ3人に1人の割合。

東北大震災でCSR意識が高まったとか、日本は本来「三方良し」の道徳観があると言われながら、実際の消費者の社会貢献購買意識はずいぶんと低いままなのですね。このままでは言行不一致で、熱しやすく冷めやすい国民性と言われてしまうではないですか。

そこでもう一度熟考。贔屓目に見て日本を擁護するならば、ニールセンの調査は全てインターネット調査であり、国別インターネット普及率が必ず巻末に掲載されています。つまり、日本よりもインターネット普及率の低い国の数値は意識の高い高学歴層や富裕層、海外留学層という社会的イノベーター層に偏っている可能性が考えられます。日本のインターネット普及率はニールセンの2014レポートによると80%。フィリピンは32%でインドは11%ですから、そもそも調査回答者の層が異なっており、CSR企業選別意識が日本より高くても当然と指摘されても仕方ありませんよね。

日本のほうがインターネット調査であっても、より国民一般に近い意見を反映しており、インド、フィリピンは1割~3割の意見。無論、ネットでリーチできる限りの範囲において性別・年齢などのデモグラフィクスは各国の世相を適切に反映できるように割り付けられているはずです。ニールセンのレポートにもそう但し書きしてあります。
このように調査レポートの数字は、回答者層や調査の手法を踏まえた上で慎重に解釈してゆかねばなりません。統計コラム的には、「CSR配慮企業の製品購入意向率」の国別クロス集計解釈法ということになります。まさに前回統計コラムで解説したように分子と分母の組合せを考慮した上で、さらに調査結果=統計サンプルの母集団代表性をきちんと考えてみたわけです。

CSVコラム的にはCSR購買意識を題材に取り上げましたが、そもそもShared ValueをCreateするためには消費者や社会においてその意識が高くなければ、企業の試みも達成されません。CSRはCSVの前提条件です。今回の国際比較データはインターネットを利用する各国の知識層比較において、日本の「CSR配慮企業の製品購入意向率」はアジア太平洋平均の半分程度であり、まだまだこれからということになります。もう1つデータから読み取れることは、北半球の先進工業国の意識が相対的に低く、南半球の経済成長国の意識が高いという傾向です。それは頭では食糧問題や環境問題の深刻さを理解しながらも習慣的に物質文明というメタボから抜けきれない先進国と、もともと物質文明に浸食されていない新興成長国の新しい価値観における先進性・優位性とも読み取れます。そしてニューヨークShared Value Leadership サミット2014のレポートでも書いたとおり、アメリカと欧州の大企業が急激に新しい競争軸へと舵を取り始めているのです。日本だけが出遅れてしまうのでしょうか。

さて、このコラムをCSVコラムに掲載すべきか統計コラムにすべきか悩んだところで、内容的には両者の融合版ということで兼用にしてもいいのかなと思いました。
CSV事業とデータ事業を追いかける弊社としては、CSVとデータの融合は必須であり、我々の期すべきところということでご理解ください。たまにはこういう書きなぐりのコラムもありですね。


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■コラム執筆者
株式会社エンゲージメント・ファースト
グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト
統計士・データ解析士
渡辺 弘

watanabe

株式会社エンゲージメント・ファースト Facebookページ
https://www.facebook.com/engagement1st

共創マーケティングの企画・立案のお問い合わせ
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カテゴリ: DMP, Webサイト運用運営
2014年07月30日

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