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【二日目】参加レポート「Shared Value Leadership Summit 2014(シェアード・バリュー・リーダーシップ・サミット2014)」

Shared Value Leadership Summit 2014の2日目。
まず主催のFSG(Foundation Strategy Group マネージング・ディレクターのLalitha Vaidyanathan女史から開会の挨拶。

マレーシア出身の彼女がビジネススクールを出た後、いくつかの職を経て現在のFSGに転職したのは「CSRを単なるフィランスロピー(企業の慈善活動)より、もっと効果的なものにしたかったから」だそうです。

彼女のスピーチのみならず、サミット全体を通じてCSRをフィランスロピー、CSVを社会的課題解決に着目した営利事業モデルと位置付ける発言が多くみられました。
これはCSRやフィランスロピーを否定しているのではなく、企業のアニマルスピリットを社会的便益へと向かわせることで、利益至上主義の悪しき面を抑制しつつ、様々な社会的課題の解決を加速させてゆこうという狙いによるものです。サブプライム不況を経たアメリカならではの見方も根底にあるようです。

日本では、現状CSR(企業の社会的責任)のほうが中心的だと思われます。無償の利益還元という姿勢が社会道徳的な美徳と重なって、より良い概念と考えられている側面もあるようです。
しかし、ペルーやエルサルバドル、ブラジルなど中南米からの参加者に日本のCSRの話をすると、そもそも(残念ながら)彼らの国では責任感や美徳などを求めること自体が社会文化的に困難だと言われました。
相対的に政府の力が弱く、組織犯罪の問題も抱える社会においては、フィランスロピー的なCSRよりもCSV概念のほうが、遥かに現実的で受け入れ易いのだそうです。

民間の企業家に資本力と行動力を発揮してもらうことで、社会課題解決の動きがより速くなり、成果も期待できる。
その過程で利益が得られるのであれば、尚素晴らしいではないか。逆に慈善活動は消極的ではないかという質問をされてしまいます。

午前中前半はCSR事例としてBen & Jerry’s社のCEO Jostein Solheim氏の講演があり、農家と地域コミュニティと一体化した事業モデルの説明が行われました。

世界的な気候変動の中、アイスクリームの原料である牛乳を生産する米国の畜産農業を持続可能なものにするため、農家の家計を考え、農業コミュニティの維持に対して社会投資をしているそうです。

コミュニティの維持という目的の下、社会的正義、持続可能な農業、環境問題と経済のグローバル化に対処しながら繁栄の連鎖(Linked Prosperity)を創り出すというビジョンが紹介されました。アイスクリーム事業と思う勿れ。
営利活動の前に、社会的な目的を推進力として事業を組み立ててゆくことが如何に有効で重要であるか、Purpose-dirven Businessという題目が掲げられました。

次いで、マイケル・ポーター教授とCSV論文を共著、FSGの共同創業者でもあるMark Kramer氏がファシリテーターとなり、BlackRock社のマネージング・ディレクターChad Spitler氏、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、サステナビリティ会計基準評議会)CEOのJean Rogers氏、そしてNestle社のCSV Annual Reportの責任者でもあるJanet Voute女史により、「共創価値と投資家の視点」に関するパネルディスカッションが行われました。

社会的課題の解決という目的と、企業株主への利益還元をいかに両立させうるのか、投資家の理解を得るための価値測定指標(Measurement)に関する議論が行われました。
このテーマは大変深いものとなるので、速報は避け、後のコラムに回したいと思います。

そして、いよいよ午前最後のゲスト講演者としてキリン株式会社の磯崎社長が登壇されました。

2011年の震災によりキリンの仙台工場が損壊し、被災地の雇用を進めながら、被災地と一体になって生産体制を再建したことが、新たな市場と事業機会創出につながった。

被災地の農産物の放射能汚染による風評被害を乗り越え、被災地の安全な原材料を使った新製品ブランドの開発ストーリーなどが紹介されました。

そんな共創成功体験を感じていた時、マイケル・ポーター教授の助言もあり、CSRからCSV経営へと全社的に舵を切る意思決定をされたそうです。加えて日本では、自社の利益よりもお客様の利益が第一、次いで商人、そして地域社会の利益を成して三方よしとする近江商人の話もされました。

松下幸之助氏のナショナル創業、ブリジストン石橋家の創業物語も「三方良し」の考えに通じる日本的経営の代表モデルとして英語で紹介されました。
日本人にはCSVという概念が本来馴染みやすい考え方であり、もっと日本から世界に向けて好事例を発信してゆきたいという意思も表明され、同じ日本人として応援しながら拝聴させていただきました。

最後に主催のMark Kramer氏から2日間を通じた総括スピーチにより、1日半の全体会が終了しました。

…These little shifts are incredibly powerful, in this scale impact we can have. Michael talks a lot about bringing the power of capitalism to solve in social problems. I don’t think that’s happened before in history. And I believe that we can achieve more impact on solving world social problems in the coming decades, by using this cross-sector approach, by using this idea of shared value, by focusing in nor- whether for profit, non-profit, governmental, non-governmental, for good, evil, or how you make progress, measurable progress on social problems, in which we all have the stake, that can change the world. That’s why you are here…

このスピーチの中にCSVの本質がよく表現されているように思います。
実績を手に来年もまた参加しようという想いを抱き、午後の分科会へと別れてゆきました。

初日のレポートでも触れましたが、「短期的なROI回収」から「長期的な社会事業価値の形成」へのパラダイム・シフトが起こりつつあります。
米国のリーダーシップの下、企業の価値観や評価指標が変わり始めています。

Mark Kramer氏に言われました。
「大げさなことを言っていると思うか。恥ずかしがるな、そして疑念を抱くな。より良い世界を孫の世代に残す最後のチャンスだ。」
その年次総会に参加できたことに感謝しつつ、帰国の途に着きます。

2014年5月15日(木)早朝 at Manhattan


■参加レポート一覧

■CSVコラム一覧

【第二回】CSV(Creating Shared Value)価値共創の定義と条件

【第三回】CSV(Creating Shared Value)の展開分野とCSV代表的事例(ネスレ社)

■統計・サイト解析コラム一覧

【第二回】統計・サイト解析コラム「デジタル・マーケターが陥るA/Bテストの罠」(2)

■コラム執筆者
株式会社エンゲージメント・ファースト
グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト
統計士・データ解析士
渡辺 弘

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「意義あるよい事(Social Good)」を、企業・顧客・関係者との共創(エンゲージメント・マーケティング)により、マーケティング革新を起こし、社会課題の解決とビジネス目標の達成を実現します。

カテゴリ: Creating Shared Value(CSV), 未分類
2014年05月19日

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